同性婚における民法上の婚姻関係成立と有効性についてお聞きしたい」という質問
同性愛者のAとYは、終生添い遂げる決意をし、念のため、「本婚姻中にいずれか一方が死亡したときは、その遺産は全て、他方に贈与する」旨の特約条項を付し、書面をもって、両者署名の上、実印にて捺印し、婚姻契約を交わした。その後、二人はY所有の同居宅の地方自治体への婚姻届提出を試みたが、当該自治体では受理されなかったので、対策を検討して後日改めて婚姻届提出を試みることとし、その日は帰宅した。数日後、Aはその対策を相談しようとB弁護士事務所に向かったが、その途中で交通事故に遭って死亡した。
この契約の特約条項の「本婚姻中〜」とは、
民法上で婚姻届が提出できていない以上、婚姻関係は成立してるのでしょうか。
また、AとYの婚姻契約は有効と言え、死因遺贈はできるのでしょうか。
判例や書籍などもありましたらお聞きしたいです。
同性婚の当事者間における一方のパートナーが亡くなった際に他方のパートナーへ財産を取得させる方法の一つとして、死因贈与は活用されているところです。
ご投稿に記載されている契約の特約条項ですが、そもそも、その契約の本文中に「本婚姻中」の意味•定義付けがなされている場合には、その意味•定義に基づいて解釈されるものと思われます(例えば、AとYの終生添い遂げる決意に基づくパートナーシップ関係のことを本婚姻中と定義付けしていたりする可能性があります)。そのため、何をもって「本婚姻」と定義•意味付けているのか、AとYが締結している契約書の内容全体を確認してみる必要があるでしょう。
仮に、しっかりとした意味•定義付けが契約書でなされていない場合でも、AとYがこのような契約を締結した趣旨は、現行の法体系では同性婚の当事者間の相続が認められていないために、その代替手段として死因贈与の方法を選択し、死亡時に自己の財産を生存しているパートナーに承継させようとしたものと解されることから、本婚姻中の意味は、AとYの終生添い遂げる決意に基づくパートナーシップ関係の継続中などと解することも可能と思われます。
同性婚の社会的な認知が進む社会状況下、このように、同性婚のパートナー当事者間における契約締結の動機や趣旨を踏まえ、可及的に契約を有効になるよう解釈することは認められるべきでしょう。
このような解釈等から、ご投稿のようなAとYの間の特約は有効となり、死因贈与が認められる余地はあるかと思います。
なお、これからご投稿のような契約を締結されるのであれば、同性婚やそれに伴う財産承継の問題に取り組んでいるお住まいの地域等の弁護士に直接相談した上で、契約書を作成しておかれるのが無難かと思われます。
なお、ご投稿では、死因遺贈という用語が使用されていますが、死因贈与契約と遺贈が混ざってしまっている可能性があるため、正確な用語の意味を確認しておいて下さい。
パートナー間の贈与契約としてなされており、贈与者が亡くなることによって効力が発生する贈与のことを死因贈与契約といいます。他方、遺贈とは、パートナーの一方が遺言によって特定の誰かに財産を引き継がせることを言い、パートナーの一方による単独行為
として行われます。