業務上横領についての質問

業務上横領について質問です。

個人事業主でネイルサロンを営んでおります。
業務委託で4人のネイリストに店舗で施術を委託していますが、
そのうちの1人が、
店でメインで使用している予約システム以外の個人的なルート(LINEやスマホの予約システムアプリ)を使用して予約を取り、
その予約が入ったことを店に報告せずに(またはモデルとして宣伝用に依頼して施術したため無料、もしくは安価で施術すると虚偽の報告し)店舗で施術をし(店で仕入れている商材を使用して)、
現金で支払いを受けた上で(クレジットカードが使用出来ないと客に嘘を伝え)、その代金を全て(または一部を)を懐に入れてしまっていることが発覚しました。
まだ本人にはそのことを問い詰めていないのですが、
これは業務上横領にあたりますでしょうか?また罪に問われる場合はどのような罪になりますでしょうか?

業務委託に際しては業務委託契約書を結んでおります。
業務委託契約書には、以下の記載があります。

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第3条(注意義務)
①乙は善良なる注意をもって委託業務を遂行するものとする。
②乙は委託業務を遂行するにあたり、甲と緊密に連絡を取り、甲に対し適宜業務連絡及び報告をしなければならない。

第8条(設備使用及び情報提供)
①甲及び乙は、委託業務遂行上必要な情報を相互間に提供するものとする。
②乙は、甲の店舗・設備を善良なる注意をもって使用し、清潔に保ち備品の整理をし、本契約に基づく委託業務の遂行以外の目的に使用しないものとする。

第13条(損害賠償)
本契約履行に関し、乙の故意または過失により甲が損害を被った場合は、乙は甲に対し直接且つ現実に被った通常損害のみならず、当事者が予見しまたは予見する事のできた特別損害についても損害賠償責任を負う。

第16条(解約・解除)
①甲及び乙は本契約期間中であっても、60日前の予告期間をもって本契約を解約することができる。但し甲及び乙は、本項に基づく解約をする場合、相手方に対しその事業に損害が生じない配慮をするものとする。
②甲は乙が次の各号のひとつに該当する時は、何ら催告を要することなく直ちに本契約を解除する事ができる。
・本契約の各条項に違反したとき。
・仮差押・差押、または仮処分を受け、若しくは振出しまたは裏書した手形・小切手等が不渡り等になったとき。
・競売・破産手続開始・民事再生手続開始・会社更生手続開始、または特別清算開始の申立てを受け、若しくはその申立てをした時。
・事業の全部または重要な部分に譲渡決議をしたとき。
・監督官庁より事業停止等の命令を受け、または事業に必要な許認可の取消処分を受けたとき。
・ヤミ金融または違法金利にて貸付を行う者と取引したとき。
・その他前各号に準じる事由が生じ、信用状態が著しく悪化したと認められるとき。
③前項による解除をされた場合、当然に第16条を適用するものとし、別途損害が生じた場合は甲の乙に対する損害賠償請求を妨げない。
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ご回答よろしくお願いします。

ありがとうございます。

個人ルートか、店舗の宣伝での集客かで、ケースが異なるとのことですが、その集客に使っていたアプリ上では、店舗の情報(場所や連絡先、メニューも店のものと同様)を全て表示し、店舗名のアカウントで集客していました。そのアプリを使って集客していることは店は容認し、施術毎にかかる決済手数料は店が支払っています。また前述の通り商材も施術場所は店のものになります。いかがでしょうか?

個人のルートでの集客ということですと、店舗の顧客ではないという扱いになる可能性はあるかと思います。その場合は業務上横領にはならないでしょう。一方、店舗の宣伝として集客している場合は店舗の顧客という扱いになり、その顧客から集金したお金は店舗の収益となりますから、それを着手していれば業務上横領となる可能性があります。こちらはケースによりますのでより詳細にご相談いただいた方がよいでしょう。

業務委託契約書を拝見する限りは、3条1項の善管注意義務違反、8条2項の目的外利用禁止違反となり16条2項の1つ目又は最後の項目の契約解除事由が発生します。

着服したお金は、顧客がどちらの顧客なのかによりますが、店舗の顧客といえれば損害賠償請求も可能です。

方針としては業務委託契約解約+刑事告訴を前提に損害賠償請求を行うのが良いと考えます。

業務上横領罪の成立については、既に回答されているように、当該ネイリストが集客した顧客が、店舗の顧客といえるかなどの事情によって結論が分かれる事案であると考えます。

業務上横領罪が成立しない場合であっても、背任罪(刑法247条)が成立する可能性はあると考えますが、店舗の顧客といえるかといった点も同様に問題になると思われますので、詳細につきご相談されるのが良いかと思います。

参考:

(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する

佐山先生、成井先生、ご回答ありがとうございます。

個人ルートか、店舗の宣伝での集客かで、ケースが異なるとのことですが、その集客に使っていたアプリ上では、店舗の情報(場所や連絡先、メニューも店のものと同様)を全て表示し、店舗名のアカウントで集客していました。そのアプリを使って集客していること自体は店側として当初より容認し、施術毎にかかる決済手数料は店が支払っています。また前述の通り使用されている商材も店舗で購入したもので、施術場所も店舗での施術になります。いかがでしょうか?

アプリの使用を容認していたということですが、どういうルールで許していたのでしょうか。売上がお店に入る約束になっていて本人には歩合がつくような形であったなら業務上横領といえる可能性がありますが、本人の手取りになるとしたら、顧客奪取として損害賠償を求められる可能性はありますが、罪に問うのは難しいでしょう。

佐山先生、ご回答ありがとうございます。

該当のアプリの使用に際しても、メインの予約システムと同様に売上は店舗に入り、歩合にて計算された金額を月まとめで施術者に支払う約束になっていました。
その上で、本来であればアプリでの集客についてもメインの予約システムに各々が登録し、予約状況を報告共有する約束で運営しているのですが、アプリから予約が入っていることを隠蔽されて、黙ってこっそり施術し、また顧客には電子端末が壊れていると嘘をついてすべて現金のみでの支払いをさせて、そのままポケットに入れていたという状況です。

お返事がおそくなり畏れ入ります。そうなると、業務上横領の線は少し可能性が高まるかと思います。
告訴や被害届が通るかどうかは、被害金額を含めどこまで証明ができるかに掛かっていますので、一度直接面談等で資料を交えながらご相談されることをおすすめします。