養育費の時効について

調停離婚をしました。
養育費が支払われなくなって3ヶ月になります。ネットで見ると養育費の時効は調停していると10年とありましたが間違いないですか?

調停において調停調書として養育費を取り決めているのであれば、10年間の時効となります。民法174条の2が条文根拠となります。

ありがとうございます
もし子供が養育費を受け取る歳が過ぎても時効内の養育費は請求もしくは差押えなど可能なんでしょうか?

弁護士さんに早い段階で養育費請求の依頼をした場合、こちらが費用倒れになりそうで、ある程度不払い貯まってからの方が良いのでしょうか?

①養育費もらう権利本体(基本権)と②権利本体から発生する毎月の養育費(支分権)は、法律上は別物として異なる消滅時効が適用されます。

①養育費もらう権利本体(基本権)
→ 10年の消滅時効ン(民法168条1項1号)

②権利本体から発生する毎月の養育費(支分権)
→ 5年の消滅時効(民法166条1項1号)

あなたのケースでは、
•離婚調停成立後に支払われていない3ヶ月分の養育費については、②権利本体から発生する毎月の養育費(支分権)にあたり、発生する各月の養育費それぞれについて、5年の消滅時効に順次かかることになります。
•このまま毎月の養育費の支払いが一切受けられずに10年が経ってしまうと、①養育費もらう権利本体(基本権)も消滅してしまうのでご注意下さい。

※なお、調停が成立しているので、民法169条1項(確定判決等による時効期間の変更)の適用により、10年の消滅時効に変わっているのではないか?
→ 同条項が適用されるのは、判決•調停等の確定時に既に弁済期の到来していた債権のみであり、調停成立後に弁済期の到来する養育費については適用がないものと考えられているため、あなたのケースでは適用がないでしょう。
 
 養育費の時効はやや複雑な条文適用があるため、ご注意下さい。5年間放置しないことがポイントです。

【参考】
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 略
3 略

(定期金債権の消滅時効)
第百六十八条 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。
2 略

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

>もし子供が養育費を受け取る歳が過ぎても時効内の養育費は請求もしくは差押えなど可能なんでしょうか?
→ 可能です。

>弁護士さんに早い段階で養育費請求の依頼をした場合、こちらが費用倒れになりそうで、ある程度不払い貯まってからの方が良いのでしょうか?
→ 元配偶者が会社にお勤めであり、給与をもらっている場合には、会社に対する給与債権を差し押さえることができます。養育費の強制執行の場合、既に不払いのある部分のみならず、将来期限を迎える分についても差押えが可能です。
 そのため、元配偶者の就労状況や財産状況も踏まえ、差押えの時期を検討なさるべきでしょう。

 なお、養育費の回収手段の1つに、裁判所による履行勧告という制度があります。

(メリット)
裁判所から勧告が行く
履行勧告の申出に回数制限なし
履行勧告の手続に特段の費用はかからない
(制度の限界)
ただし、履行勧告の手続きでは、義務者が裁判所からの履行勧告に応じない場合には、支払を強制することまではできません。
そのため、勧告に応じない場合には、強制執行の手続きを検討する必要が出て来ます。

 未払いが始まってから余り期間が経っていない場合等には効き目があるケースも裁判所で離婚調停を折角なさこの制度を活用されてみてもよろしいかと思います。
 
【参考】裁判所サイト「履行勧告手続等」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_05/index.html

清水先生、とても丁寧にありがとうございます

元夫は自営で飲食店をしているので給与の差押えが出来ません…
履行勧告も2回しました…

最後に話した時に貯金はないと言ってました。別居中に自営をしだしたので経営状況は分からないので本当に貯金がないのかもしれません。

養育費回収を謳ってる法律事務所にお願いしてみようかなとも思いますが、自営はお金関係が難しいと離婚時に相談した弁護士から教えてもらいました。

それでも弁護士さんに依頼し、元夫の少ない預金を強制執行などしてこちらの態度を示すと何かしら効果があるのなら依頼したいと考えておりますが、弁護士さんからしたら自営で貯金ないかもしれないとなると受けてもらいにくいですか?

申し訳ありません。旧民法の条文の記載をしてしまっておりました。正しくは169条となります。

調停後に発生する養育費については清水先生のおっしゃる通り新たに生じた債権であるため、5年の消滅時効となります。

調停後に生じた養育費につき、新たに裁判等で判決等をもらった場合はそれらにつき10年の時効となります。

回収の可能性が低い時に弁護士が受けるかどうかについては、弁護士によりますが、養育費の回収が出来なかった場合に弁護士費用分が赤字となってしまうため、慎重にご検討された方が良いでしょう。

時効消滅を防ぐために再度裁判手続きを取ると言う形も可能ではあります。

また、裁判所の財産開示手続きを経た上で売掛債権等があればそれらを差し押さえすると言うことも選択肢として考えられるでしょう。

泉先生、わかりやすい説明ありがとうございます
時効消滅を防ぐための裁判手続きとはどの様なものがありますか?

養育費の調停ですか?

回収可能性、その手段を取る際にかかる費用等の観点からご依頼者にマイナスとなるような場合(ご依頼者が費用持ち出しとなってしまう等)には、見通しや費用対効果の観点等をご説明差し上げ、再考を促すこと等もあるかと思います。

元夫が自営で飲食店を経営しているとのことですが、会社(法人)として経営、個人事業主として経営のいずれでしょうか。それによっても対応は異なって来ます。
 お店の会計方法(現金、クレジットカード、電子マネー等)、売上げ等の管理口座、主要取引先、お店の物品•動産等の情報によっては、強制執行の対象となり得るものがあるかもしれません。
 元夫の自宅(持ち家か賃貸か)、元夫の両親等が相続対象となる財産を有しているか等によっても、長い目線でみれば、強制執行の対象となる財産が出てくるかもしれません。
 悩ましいところはあるかと存じますが、一度、お住まいの地域等の弁護士に直接相談なさってみてもよろしいかもしれません(その際、法テラスの民事法律扶助等のご負担の緩和となる制度の利用もご検討下さい)。