辞める条件として、業務中に廃車になった軽トラックの代金を支払う必要があるのか?

義理の息子が個人事業主の会社で勤めていますが、とてもブラックな会社で辞めて同業種に天職しようとしています。
辞めたいと前から社長に話しているようですが、色々条件をつけて辞めさせてくれないそうです。
条件をひとつずつクリアしてようやく全部の条件をクリアすると、業務中に事故をして廃車にしてまった軽トラックの代金を払えと言われているそうです。
軽トラックの代金は払うべきお金なのでしょうか?

まず、退職については、①合意退職(会社側の承諾を得る必要あり)の他に、②労働者側からの退職の意思表示(会社側の承諾は不要)という方法もあります。
 民法627条1項によれば、会社に対する退職の意思表示から2週間を経過すれば、会社側の意向にかかわらず、会社を退職できることになります(ただし、雇用契約書や就業規則には30日前に退職を申し出ること等の定めがなされている場合があるため、円滑な退職のためには、雇用契約書や就業規則の定めを確認しておくべきでしょう)。

【参考】民法
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

 次に、業務中に事故を起こして廃車にしてしまった軽トラックの代金の支払いについてですが、使用者(会社)は従業員(被用者)に事故の損害の賠償ないし求償の請求ができる可能性があります。ただし、使用者が被用者に賠償ないし求償請求できる金額は、判例上、信義則上相当と認められる限度とされています。

「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条 件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使 用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信 義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求 をすることができるものと解すべきである。」( 最高裁判所第一小法廷昭和51年7月8日判決)

 そのため、仮に損害の支払いが必要な場合だとしても、①賠償は会社を辞める条件ではなく(会社を辞めることと賠償は別の話であり)、②賠償を要するとしても、息子さんが全額支払う必要があるのか疑義があります(そもそも、会社側が過剰請求をしていないかも証拠に基づき精査すべきでしょう)。

 いずれにしても、一度、お住まいの地域の弁護士に直接相談してみてはいかがでしょうか。ご自身での退職が難しい場合には、弁護士に代理人として交渉してもらう方法もあるでしょう。

丁寧な回答ありがとうございました。
一度相談してみたいと思います。