近所のマッサージ店で転倒し、介護状態となった高齢(82)母親に店舗責任は無いと言ってきた件

本年の2月21日に施術を受けて支払いをしようとした際に82歳の母親はマッサージ店舗の方から座って支払い準備をするように言われ、着座しようとした際に転倒して大腿部骨折して人工股関節を着ける3ヶ月入院の大怪我を負いました。
翌日に家族として、私(次男)と弟(三男)で話し合いに行った所、店舗保険(日本リラクゼーション業協会)にて対処するので安心して下さい。と言われたのでお願いして、引き上げました。
その後、担当からの返答は保険は使えない、自分の所は全く悪く無いので何の対応も出来ない。と言ってきたので6月には弁護士を立ててこの半年あまりでかかっている入院、看護、介護費用として百万以上がかかっていると伝えた所、三万位ならば見舞金で出しても良いと先日言ってきたので、再度入院の事実を伝えたのですがそうすると入院の明細を見せれば見舞金として十万円を出すと言ってきました。
単純に保険で対応すれば良いことと思うのですが、ここまでお詫びの一言も無い状況で高齢ながら仕事をしていた母親は入院から要介護となっています。
相談している弁護士は自分の知り合いの大手障害保険会社に聞いた所、このケースは対応は難しいと言われたとの事で今は十万円の見舞金で話がまとまるように進められておりますが、正直な所納得出来ません。
違約金として膨大な請求をしようとは思わないですが、使った百数十万円等は支払って貰えないものでしょうか。
そして、おそらく謝れば自社の非を認めて賠償対応しないといけないのでマッサージ店は一切お詫びの言葉も無いようですが、店舗内で起こった事で全く責任が無いというのは正しいのでしょうか?
店舗保険の資料には、例えば通院途中店舗に来る時や帰る時に何かあれば対応をします。といった内容のチラシを見せられました。
であれば、店舗内で起こった事故の対応が出来ないのはどういった事なのか?と疑問を感じます。店舗にもその店舗保険にも不審を感じます。
何か対応する方法はありませんでしょうか。

事案は異なりますが、転倒事故に関する裁判所の考え方を理解するのに参考となる、対照的な結論となった2つの判決を紹介します。
 店内の転倒事故だから店側に必ず責任を認めるというわけではなく、店側に安全配慮義務違反や過失があると言える必要があります。

【東京地裁令和3年7月28日判決】
 客がスーパー店内に設置されたサニーレタスの特売コーナー前に垂れていた水に足を滑らせ転倒し負傷したとして、スーパー側に損害賠償を求めた事案。
 「サニーレタスは水で戻してから販売する必要があることが認められるところ、被告においては、その陳列場所周辺の床が、サニーレタスに付いた水が垂れることによって一定の範囲で濡れることとなる可能性を認識していたと認められる一方、被告がその危険性を考慮して一定時間の間隔で清掃等の転倒防止のための対応を採っていた形跡がうかがわれないことからすると、上記の態様で発生した本件事故について、被告は、信義則上の安全管理義務に違反したものというべきである。」
 → 客にも過失が20%あると認定して過失相殺の上、スーパー側の不法行為責任として約2100万円の損害賠償責任を認める。

【東京高裁令和3年8月4日判決】
 客がスーパーのレジ付近通路の床に落ちていたカボチャの天ぷらを踏んで転倒し負傷したとして、スーパー側に損害賠償を求めた事案。
 「前記認定の本件店舗におけるかぼちゃの天ぷら等の惣菜の販売方法からすれば、惣菜売場においても、青果物売場と同様に落下物が比較的に多くなる可能性はあるが、これは飽くまでも売場付近での話であり、レジ付近の通路とは区別して考える必要がある。」「これまで他の店舗も含めレジ付近で落下物による転倒事故が発生したことはなかったことが認められる。」「他方、レジ前通路を通行する利用客からは同通路は見通しがよく、同通路上に商品等の落下物があったとしても目に付きやすく、店舗内が混み合っている時間帯でも足下の落下物を回避することは特に困難なことではないと認められる。」「控訴人において、顧客に対する安全配慮義務として、あらかじめレジ前通路付近において落下物による転倒事故が生じる危険性を想定して、従業員においてレジ前通路の状況を目視により確認させたり、従業員を巡回させたりするなどの安全確認のための特段の措置を講じるべき法的義務があったとは認められない。」

なお、ご相談者さん側の加入している保険の内容•特約は確認されていらっしゃいますでしょうか。
 もし、確認未了であれば、自動車の任意保険、傷害保険、ご自宅の火災保険等に、①人身傷害保険(自分側が加入している保険から治療費等の支払が受けられることがあります)、②弁護士費用特約が付いており、今回の件に適用があるかを確認してみて下さい(今回のような日常生活上の事故にも適用がある場合があります。加入したつもりがなくても、確認してみたら付いていたということがよくあります)。