家主(ビル建て替え)都合によるクリニック立ち退きに関して
当方医院(テナント形態)を経営しています。家主は地方準大手の証券会社の関連会社です。15年ほどクリニックをビルで開業していましたが、この度ビルの建て替えにより、立ち退きを依頼されています。ビル自体は新耐震基準を満たしており、老朽化ではなく、高層化及び規模を大きくする家主都合です。テナント は満室ですが、他は事務所なので、今後の交渉により退去するかもしれませんが、私の場合、移転費用だけで4000万ほどを見積もっています。先方からは、5000万円を提示されていますが、医療法人では無く個人事業主形態ですので、およそ所得の半分を税金で支払う必要があります。現状の提示額だと、5000万円の半分の2500万円の保証となり、移転費用だけで4000万かかるのでマイナスで困っております。年商は1億円程度なのですが、要求金額はいくらぐらいが妥当なのでしょうか?補償額は様々でしょうが、移転費用で4000万円かかり、近隣も街中で、近隣に医院もあり、移転できる場所が色々と制約があるため中々見つからないのが現状です。色々試算すると、1億円程度(移転費用4000万円+補償6000万円)が手元に残るように考えており、2億円ぐらいかと思っているのですが、それが過度なのかが判断しかねています。移転により休業期間や、看護士など雇用が難しい専門職の離職のリスクが高いので、それを加味しています。どうか色々アドバイスを頂けると有り難いです。金額等条件が折り合わない場合は、立ち退きしなくてはいけないのでしょうか?それも合わせて宜しくお願い致します。
立地や規模等の事情により,1億円を超える場合もありますが,細かい事実関係がどのようなものであったのかにもよりますので,個別に弁護士に相談されることをお勧めいたします。
ただ,立ち退きに関して,賃貸人の都合で立ち退きを求める場合,賃借人と合意ができなければ無理やり追い出すことは基本的にできませんので,交渉に関してはある程度強気に交渉することは可能かと思われます。
1 まず、借家人の保護の観点から制定された借地借家法という法律が存在し、大家(賃貸人)側が賃貸借契約の解約や更新拒絶をしようとしても、当然に認められるわけではなく、解約や更新拒絶に「正当の事由」が存在する必要があります。
ビル自体は新耐震基準を満たしており、老朽化ではなく、高層化及び規模を大きくする家主都合という事情からすると、大家(賃貸人)側の立ち退きの要求に「正当の事由」があるのか大きな疑義があるところです。
そして、この正当の事由が認められるか否かの判断要素の一つとして、いわるゆ立退料の申出•支払という財産上の給付が挙げられます。
あなたとしては、正当事由がないこを前提に、移転の条件として、立退料の増額を交渉していくことが考えられます。
2 立退料は一律に決まっておらず、ご事案によって変わって来ます。
ただ、立退料の算定の際、考慮すべき事項としては、例えば、以下のようなものがあります。
•新店舗•事務所と現店舗•事務所の家賃の差額
•新店舗•事務所を借りる際の諸費用(礼金、仲介手数料など)
•新店舗•事務所の内装費用
•引越費用
•新店舗•事務所の広告・宣伝費用
•移転に生じる減収の補償
等
これらの事項を積み上げて計算して行くと、ご事案によっては1億円単位の金額になることもあります(ただ、ご事案によってはこれを下回るケースもありますので、ご事案毎に精査が必要です)。
そのため、これらの項目について、どのくらい費用がかかりそうか、見積りを集めたりしてみて、概算を立ててみてもよろしいかと存じます。
金額も大きいご事案ですので、弁護士に直接相談•依頼なされてもよろしいケースかと存じます。
【参考】借地借家法
第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。