収入がある妻に生活費を渡さない夫、慰謝料や損害賠償を求めて離婚できますか
結婚して20年以上経ちます。夫がその間、生活費をほとんど入れていません。何度話しても「お金がない」の一点張りで、事態は好転しません。私が育休で給与収入が途絶えた時でさえ生活費を渡そうとせず、結局私の貯金と私の実家からの援助で乗り切りました。
夫は小さな会社を経営しています。夫の説明によると、「小さな会社ゆえ収益が安定せず、役員報酬が少ない、あるいは全く出ないことも多い」「社員に給料を渡すのが最優先だから、家にお金を入れる余裕がない」。私は所詮、大企業で雇用が守られた身です。夫の苦労を耳にするとそれ以上何も言えず、結局ずっと自分の収入だけで生活し、家のローンや子どもの学費も一人で負担し続けています。世間的には会社社長と結婚している大企業の正社員ですので、余裕ある生活をしていると思われがちですが、実態は家計はカツカツ。シングルインカムの専業主婦家庭と何ら変わりません。
そんな中、夫が私に内緒で本人の実家に仕送りをしていることがわかりました。額はまさかの「月15万円」です。これを就職した頃から続けていたようです。計算すると、すでに5000万円余りが夫の実家に流れたことになります。夫婦の共有財産を妻の了解なく5000万円も横流ししてしまうなど、これでは横領と変わりません。
夫は父親がおらず、結婚前は実家(祖母と母)の三人暮らしでした。亡くなった祖父が資産家だったらしく、その遺産で育ててもらい、大学にも行かせてもらいました。ちなみに夫の母親はあまり体が丈夫ではなく、息子ともども亡父の遺産で養ってもらっていました。そのような事情ですので、夫は祖母にはとても恩義を感じています。彼女が元気なうちにありったけの恩返しがしたいと考えたようです。家族の中で男が唯一の男性だったことも関係していそうです。自分が祖母と母親を支えてしっかりしなきゃと、気負っている部分もあります。
夫は、妻がフルタイムで働いているから自分の収入を全部実家に渡しても問題ないと思っていたようです(実際、なんとか暮らせています)。また、夫婦+娘+母+祖母の5人が一つの家族で、夫婦で分担して養っている感覚でいたようです。私は義母と義祖母のことを身内・姻族とは思っていますが、別居で家計も別ですし、そもそも血族ではないため法的には扶養義務がありません。
よもや夫がここまで「夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務」を理解していないとは思わず、結婚前に「考えの擦り合わせ」をしていませんでした。資産家ならともかく、普通のサラリーマンにとって5000万円は人生設計に影響が出るレベルの大金です。そのお金があれば、今頃私は住宅ローンも完済し、子どもももう一人持てたかかもしれません。老後に向けた貯蓄もできたでしょう。
仕送り発覚から夫が信じられなくなりました。そんな大事なことを伏せたまま結婚するなど、あまりに誠意を欠いています。額が額なだけにとてもショックを受けています。義母は夫婦の内情を知らずに仕送りを受けたのかも知れませんが、もはや私の資産を横取りした人間としか見ることが出来ません。こんな人を将来介護したり葬儀費を負担したり一緒のお墓に入るなど、まっぴらです。
生活できる程度の収入がある妻に生活費を渡さないことは、「悪意の遺棄」にあたりますか。また、夫を提訴し、精神的苦痛に対する慰謝料と、経済的損失に対する損害賠償を求めることは可能でしょうか。こちらは離婚も辞さないつもりでおります。
悪意の遺棄にはあたらないでしょう。
あなたが、経済的に困窮していた場合にはあたります。
ただし、夫婦間の信頼を裏切った行為を長期間行ってきたので、
慰謝料請求は可能でしょう。
経済的損失は、財産分与の中で整理することになるでしょう。
「悪意の遺棄」には当たらない可能性がありますが、「婚姻を継続し難い重大な事由」が肯定される可能性はあると思われます。詳しい事情を伺う必要がありますが、離婚慰謝料が認められる余地もあるでしょう。
仕送りの点は、財産分与との関係で、夫婦の共有財産を減少させることや財産隠しを目的としたかどうかが重要で、そういった目的がないと判断されれば、残念ながら共有財産への持戻しは認められないことになります。全額とは言わないまでもそのあたりを慰謝料請求でカバーできるかどうかもポイントだと思います。
一度、弁護士に面談相談等されるとよいと思います。
内藤先生、髙橋先生、ご回答ありがとうございました。「悪意の遺棄」では無理でも、慰謝料請求という道があるのですね。もう少し情報を集めつつ、今後のことを検討してみようと思います。ありがとうございました。