遺留分請求において、被相続人の債務支払いを行った場合、その支払額を遺留分に加算可能か?
遺留分請求で、被相続人の債務を支払った場合、取得した相手方に対して支払った分を遺留分に加算することは可能でしょうか?
相手方は法定相続人ではなく、第三者とします。
分割債務については、相続人の相続分に応じて負担割合も決まっているため、一人が全て負担した場合には、それにより負担を免れている相続人に対して支払いを求めることも可能かと思われます。
最高裁判例によりますと、全財産を相続すると遺言で指定された相続人がいる場合、特段の事情のない限り、相続人間においては、相続債務についても全財産を相続する当該相続人が承継することになります。
ご相談の遺言が、仮に、非相続人・第三者に全財産を遺贈する内容(包括遺贈)である場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ので、上記の最高裁を参照してよいものと考えられます(ただし、上記平成21年最高裁判決と平成8年最高裁判決との関係については諸説あり得ると思われます。)
平成21年最高裁判決を参照すると、相続債務を非相続人・第三者が負担する場合、債権者に対してはその効力がない(対抗できない)ので、債権者から各相続人に対し、法定相続分に従った相続債務の請求がなされる可能性があります。
債権者の請求に応じた相続人が、支払った債務の額を遺留分の額に加算できるかどうかに関し、平成21年最高裁判決は、「遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ、これに応じた場合も、履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず、相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまる」としています。
したがって、ご相談者様が、債権者からの請求に応じて相続債務を支払ったとしても、遺留分侵害額の計算には加算できないものの、包括受遺者に対し、支払った債務の額を求償できるという結論になると考えられます。
ご丁寧にありがとうございます!