同乗者にも救護義務や報告義務が発生するか?

質問させて頂きます。
車に同乗者として乗っていて轢き逃げを起こした場合の救護義務や報告義務が発生するのは、
業務上や職務上として同乗していた場合ですが
例えばですが運転者は会社の先輩で現場仕事が終わり帰りに同乗者していて、轢き逃げを起こした場合は同乗者にも、救護義務や報告義務が
発生しますか?実際に同乗者に救護義務や報告義務が発生した場合は罪に問われる確率はありますか?

道路交通法第72条1項では、「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と定められています。
 同項の「その他の乗務員」とは、職務•業務のために同乗している人を言うものと解されています(例:バスガイド、長距離バスの交代運転手、タクシー助手等)。そのため、乗客としての乗車や知人の車に単に同乗したに過ぎない場合には、「その他の乗務員」には当たらないと解されます。
 ご質問のケース(運転者は会社の先輩で現場仕事が終わり帰りに同乗者していた場合)でも、同乗者は職務•業務のために同乗していたとは言えず、「その他の乗務員」に該当しない、すなわち、道交法第72条1項の救護義務•報告義務の適用はされないと解される可能性があります。
 ただし、同乗者には、道交法第73条の妨害禁止義務が課されており、車両等の運転者等が第72条1項の救護や報告をするのを妨げてはならないことには、留意が必要です。なお、この妨害禁止義務に違反した場合、道交法上の罰則が定められています。
 

【参考】道路交通法
(妨害の禁止)
第七十三条 交通事故があつた場合において、当該交通事故に係る車両等の運転者等以外の者で当該車両等に乗車しているものがあるときは、その者は、当該車両等の運転者等が第七十二条第一項前段に規定する措置を講じ、又は同項後段に規定する報告をするのを妨げてはならない。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一〜九 (略)
十 第七十一条(運転者の遵守事項)第一号、第四号から第五号まで、第五号の三、第五号の四若しくは第六号、第七十一条の二(自動車等の運転者の遵守事項)、第七十三条(妨害の禁止)(第七十五条の二十三(特定自動運行において交通事故があつた場合の措置)第六項において読み替えて準用する場合を含む。)、第七十六条(禁止行為)第四項又は第九十五条(免許証の携帯及び提示義務)第二項(第百七条の三(国際運転免許証等の携帯及び提示義務)後段において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

清水先生回答して頂きありがとうございます。
ご質問の内容から同乗者は罪に問われる可能性は低いという解釈でよろしいですか?

ご質問の例(運転者は会社の先輩で現場仕事が終わり帰りに同乗者していて、轢き逃げを起こした場合)では、具体的な事情•状況が明らかではないため、判断がつきかねますが、轢き逃げという言葉を使われていることからすると、人身事故が発生し負傷者が出ているのに救護していない状況が想定されます。
 そのような状況では、同乗者も人身事故の発生•負傷者の発生に気付いている又は容易に気づき得る場合も多く、運転者と事故の発生や負傷者の救護等に関し会話等のやりとりをしていることもそれなりにあるかと思われます。その際、運転者の救護義務や報告義務の履行を妨げる言動があった等として、同乗者も立件されたり、捜査の対象とされたり(取調べを受ける等)、処罰されたりするケースもあります。
 仮に、運転者が人身事故を起こしたにもかかわらず、報告義務も救護義務も果たしていない状況ならば、運転者を促し運転者から警察に事故の報告をしてもらう、それでも運転者が報告をしないようなら、これまでの状況も踏まえて同乗者から警察に報告するということも検討すべきかもしれません。