プログラミングスクール開業時の法的リスクについて

プログラミングスクールの起業を検討しており、スクール内の科目の中に「開発案件への参加イベント」を講義に入れたいと考えております。その際に労働基準法を含め、法律に抵触するか懸念しております。

<具体例>
起業するプログラミングスクールの会社名をA社とします。
一方で、ユーザー企業B社のシステム開発案件をA社が準委任契約として受注します。
プログラミングスクールA社の生徒Bを開発に参加させ、講師が指導しながらシステム開発案件の手伝いをした場合、
法律に抵触するリスク、コンプライアンス違反に抵触する可能性はございますでしょうか。

委託者であるユーザー企業B社との関係、プログラミングスクールの生徒との関係でそれぞれ検討点がありそうです。
 しっかりとした対策を講じておくのであれば、お住まいの地域等の弁護士に直接相談の上、スクールの開業前から契約書等の準備を進めていくことをご検討下さい。

(委託であるユーザー企業B社との関係)
例えば、
•プログラミングスクールの生徒が開発案件に関わることを事前に把握•承諾しているか
•準委任契約で要求される受託者の善管注意義務を果たせるか
•開発に関わった生徒がユーザー企業B社との間でプログラミングスクールA社が負っている秘密保持義務に違反しないようにする対策を講じる

(プログラミングスクールの生徒との関係)
例えば、
•プログラミングスクールと生徒との間の契約関係•内容の整備(プログラミング講座の受講のみならず、開発案件の手伝いる等の対外的な関係も生ずるため)
•ユーザー企業B社の開発案件を手伝った期間•時間が労務の提供や受託業務の遂行として扱われれないか(これらの対価としての給与•報酬の発生の有無等)
•生徒のミス等により発生した損害の責任の所在(プログラミングスクールが責任を負う範囲、生徒が責任を負うことがあるのか否か等)
•開発案件に関わった生徒がユーザー企業の秘密を漏洩しないような対策を講じる

なお、インターネットを通じたプログラミング教育の提供が、特定商取引法上の「特定継続的役務」のうち、「電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又 は技術の教授」(いわゆるパソコン教室)に該当するか否かについて、消費者庁及び経済産業省の検討の結果、「パソコンの操作に関する知識や技術の教授と一体不可分とならない限り、『特定継続的役務』に該当しない」ことが明らかにされています。

【参考】インターネットを通じたプログラミング教育の提供が明確化されます~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~(経済産業省サイト)
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/141225_press.pdf

まず、仮に、A社がB社に無断で受講生をシステム開発に携わらせたとしたら、秘密情報漏洩リスク等の観点からコンプライアンス上問題視される可能性があります。また、守秘義務違反、禁止された再委託等に当たるとして準委任契約違反ともなり得ます。

次に、A社がカリキュラムの一環として受講生に指導をしつつシステム開発を行わせること自体は、労働に従事させることとは異なるため、通常雇用契約には該当せず労働法令上の問題は発生しないと考えられます。
ただし、スクールとは名ばかりで会社員と同じように受講生を指揮管理して働かせるとすれば、賃金支払義務等の労働法令上の問題及びコンプライアンス上の問題(「受講生を騙してお金を取って働かせた」とメディアから避難されてしまう等)に発展する可能性があります。

なお、新規ビジネス開始前の法的問題点の整理は非常に重要なため、直接弁護士に相談することをおすすめします。

清水様
お詳しい説明ありがとうございました。本サービスにおける契約及び法的リスクについて、理解することが出来ました。受注側、指導する生徒側でのそれぞれの側面でいくつかの検討点が存在する為に、やはり事業を開始する際は弁護士に直接、相談を行いたいと思います。

菊池様
雇用契約、労働法令、コンプライアンスについてお詳しいご回答ありがとうございました。内容を見て実現可能ではあるものの、法的リスクに対応する為に充分検討が必要であることが理解できました。事業開始前に一度、弁護士にご相談したいと思います。