業務上横領と給与について
お恥ずかしながら兄が会社のお金約20万円を着服してしまいました。
社長と常務の寛容な対応で返済すると誓約書を書かされただけでクビにならず済んだそうなのですが
働いてお給料で返済していくしか道がないのですが
給与の差し止め、差し押さえ等は行われるんでしょうか?それに兄の給与がないと私の給与だけでは暮らしていけないです。
ネットで色々調べてみたら会社には給与の支払い義務があるので横領した分を差し押さえて徴収したり、給与から天引きしたりが出来ないとあったのですが本当でしょうか?
判例によれば、使用者による一方的な相殺は不法行為を原因としたものでも許されないとされています。
「労働者の賃金は,労働者の生活を支える重要な財源で,日常必要とするものであるから,…使用者が労働者に対して有する債権をもって相殺することも許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは,その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはない。」(最大判昭和36年5月31日)。
しかしながら、判例によれば、使用者が労働者の同意を得て行う相殺については,相殺合意が有効となる一定の例外を認めています。
「労働者の完全な自由意思に基づいたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在することを要件として,全額払いの原則に反しないと解釈しています(最二小判平成2年11月26日)。
→ お兄さんが会社からの相殺に自由意思で同意した場合には、相殺は有効となる可能性があります。
ただし、いきなり給与全額と相殺し、お兄さんないし同居のご家族等が生活に困る事態が生じる場合には、「労働者の賃金は,労働者の生活を支える重要な財源で,日常必要とするものである」と述べた昭和36年判例の趣旨に反する可能性があり、「労働者の完全な自由意思に基づいたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在する」という平成2年判例の例外要件をみたさない可能性があります。
これらの判例を活用する等して、相殺の時期•回数•方法などにつき、会社側とよく話し合ってみることが考えられます。会社側が話しを聞こうとしない場合には、労働基準監督署に相談してみる方法もあるでしょう。
【参考】裁判所サイト
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57713
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52759