商標侵害で損害賠償請求することは可能でしょうか?可能な場合、請求額はどの程度になりますでしょうか?
私共が運営する施設の屋号(商号所得済)を用いて、競合店がインターネットの検索広告(リスティング広告)の広告文にて当屋号を用いて広告を出稿しておりました。競合店のエリアとは離れていますが業態は同じです。当施設の屋号を用いて検索したユーザーに対して、その競合店があたかも当施設と誤認させる形で広告を表示しております。
施設の売上規模は当施設は月間200万円程度・競合店は施設・スタッフ規模から300万円~400万円と推測されます。
当施設は1年ほど運営しており集客や当施設のブランディングのために広告配信費で230万円・制作費で70万円の300万円ほど投資してきました。
https://ppc-master.jp/labo/2021/03/trademark.html
この記事内にある「・広告文に他社商標を使用する場合は商標権を侵害する可能性がある」に該当します。
「他社商標を検索キーワードとして設定することについては商標権侵害には当たらない」ではありません。
検索ワードとして設定し、広告文に利用されています。
<例示>
当施設をAクリニック・競合施設をBクリニックとします。
内容)
①ユーザーが「Aクリニック」と検索する
②検索の結果として「Bクリニック」の広告が「Aクリニック」として表示される
(リンク先はBクリニックのサイト)
表示)
「Aクリニック」検索結果
Google
(広告表示:上位表示)Aクリニック‐当院は女性を綺麗を応援します
→リンク先はBクリニック
(オーガニック表示)Aクリニック-綺麗な施設でリーズナブルな値段
→リンク先はAクリニック
結論として、相手方の広告に用いられた店名が貴店の登録商標と同一ないし同一とみなせる場合には、商標権侵害に当たると思われます。
商標権侵害があれば、それによって生じた損害(≒相手が商標を用いて得た営業利益等)を請求することもできるでしょう。商標法には損害額を推定する規定もあります。
ただし、最終的に請求できる金額は「商標権侵害と因果関係のある損害」のみとなります。これについてはもう少し詳しくご相談をいただき分析する必要があると考えます。
佐山先生
ご丁寧にご回答いただきましてありがとうございます。請求額(≒相手が商標を用いて得た営業利益等)とした場合に例えば広告が1ヶ月ほど配信されていたとすると先方の1ヶ月売上(ないし利益)の中から商標のロイヤリティとしての分を請求となるのでしょうか?もしその場合、請求額が大きくなく、訴訟費用が上回ってしまうということもありえりのでしょうか?裁判は勝訴して結局赤字にようになることを懸念して弁護士の先生にご相談するかを悩んでおります。もしごご回答いただけますとありがたいです。よろしくお願いします。
まず、前段のご質問についてお答えしますと、いくら請求するのかは、何を請求するかで変わると思います。商標を利用すること自体は認め、その使用分の対価を支払え、という請求をするならば、仰るようにロイヤリティ相当額を請求することになるでしょうし、商標を使われたことで顧客を奪われた、ということになれば、奪われた分の営業利益を請求することになるでしょう(おそらく後者の方が金額が大きくなります)。
請求額が大きくないと訴訟費用が上回ってしまう、という点については、多くの弁護士は弁護士報酬の最低金額を設定していますから、あまりに少額であれば、その可能性もゼロではありません。
弁護士報酬は請求額や裁判で勝ち取った額の何%という基準で定めるのが通常であり、裁判所に払う手数料も請求額を上回ることはありませんから、通常は訴訟費用が請求額を上回るということはないと思います。
とはいえ、いざ裁判をするとなると、短く見積もっても半年~1年はかかりますから、それもコストとお考えいただいた上でペイするかどうかをご検討されると良いと思います。
佐山先生
ご丁寧にご回答いただきましてありがとうございます。期間の件は勘案しておりませんでした。時間コスト含めて検討してみます。この度はありがとうございました。