勤務中の物損事故について

昨年、親が勤務中に物損事故(親過失100、相手0)を起こしており、勤務している事業所から免責金額10万円を支払うように言われていましたが、親が持病で倒れ入院してしまい、今後の就業が困難になったため、子供である私に物損事故の免責金額の支払いについて事業所から連絡が来ている状態です。

以下、私が事業所とやり取りをして疑問に思った部分となります。

・雇用契約書に免責金額10万円を支払っていただく旨の文章が記載されていると事業所談
…労働基準法違反では?

・親は当事業所に引き抜きされた際、雇用契約書を結んでいないため所持していない
…親は事業所から事故の際に免責金額10万円を支払う話を説明されたことがない。今回の事故で初めて説明された。

・支払い義務の根拠としている雇用契約書のコピーを渡してもらうよう依頼しても頑なに拒否する
…金額を消した物で良いなら渡せますとの事。

・親に支払い能力がない場合は、この10万円を家族に支払って欲しい
…家族に支払い義務はあるのか?

よろしくお願いいたします。

記載の仕方が悪く、申し訳ありません。
雇用契約書のコピーの件は、この事業所の方とお会いした際に見せてもらっており、親の署名などはないフォーマットではありましたが、確かに免責金額10万円を支払う旨の記載はありました。
そのコピーを「金額記載されているのはマズイので…」と言って渡してくれなかった状態です。

まず、お父様とご家族は法的には別の権利義務の主体であるため、お父様の債務について、ご家族には支払義務はありません。
そのため、ご家族としては支払に応じられない旨を伝えてみてはいかがでしょうか。  
次に、お父様の支払義務についてですが、
以下に述べるように、判例等に照らすと、支払義務が全くないとまで言い切れるかは検討を要します。ご家族としての支払をお断りした場合に、お父様に対して訴訟等まで起こしてくるのかを見極めるのが現実的な対応かと思われます。

 雇用契約書の点は、真っ当に締結しているのであれば、あなたたち側に見せられない理由はないように思われます。そのため、事業所側の主張しているような内容の雇用契約書が締結されているのかは疑義があります。
 もっとも、そのような内容の雇用契約書を締結していなかった場合でも、事業所側(使用者)は従業員(被用者)に事故の損害の賠償ないし求償の請求ができる可能性があります。ただし、使用者が被用者に賠償ないし求償請求できる金額は、判例上、信義則上相当と認められる限度とされています。

「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を 被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合に は、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条 件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使 用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信 義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求 をすることができるものと解すべきである。」( 最高裁判所第一小法廷昭和51年7月8日判決)

【参考】裁判例検索サイト
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54209