離婚調停 2パターン用意する

妻から夫へのDVで、夫は家を出て、警察→別居状態。
DV5年間/頻度2か月に1度/流血なしキズなしアザなし/被害届なし。

警察での聴取の際、今回のDVのみ認める。
今回以前のDVは聴取自体されず。
今回以前のDVは、証拠がないと予想。

弁護士先生に事情は全てお話して、2パターンの事前準備をし、調停での相手の出方や流れを見て、パターンを変えることは可能ですか?

①今回のDV立証/今回以前のDV立証せずの場合(離婚回避or離婚パターンへ)
今回はDVを認めるが、今回以前のDVは証拠不十分では?と返す
②今回のDV立証/今回以前のDV立証の場合(離婚パターンへ)
素直に認め、離婚条件の話へ

第一に離婚を回避したいというのがあって、無理そうであるなら、夫の心証を悪くせず、なるべく良い離婚条件を。

夫の心証がポイントで、離婚を回避不可能な場合、証拠不十分を指摘しようとした事を、少しも悟られたくないのですが。
離婚を回避不可能な場合、「今回以前にDVは行っていません」と言うのを全く避けたいのですが。

今回以前のDVの、証拠不十分を指摘できそうな場合、強く主張して、離婚回避をしたいのですが。

今回以前のDVの、証拠不十分を指摘できそうな場合で、実行して、それでも離婚確定したら、それは受け止めます。
夫の心証を、悪くした上での離婚確定になりますが、受け止めます。

相手方の出方を見極めつつ、自分側の対応を変えて行くという柔軟な戦術をとることはあり得るところかと思います。
 もっとも、夫側の出方や心証のみならず、離婚の方法(離婚に至るまでに要する手続きの流れや要する時間等)や法定の離婚事由まで充足する状況か等の大局についても意識しておくべきかと思われます。

 離婚の方法には、主に、①協議離婚(当事者間の合意に基づく離婚届の提出で成立)、②調停離婚(家庭裁判所の調停という手続によって成立)、③裁判離婚(裁判手続によって成立)という方法があります。
 夫婦間で合意が成立しない場合、①協議離婚は成立せず、離婚を希望する側は、②家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります(調停前置主義と言って、裁判の前に調停を先行させる必要があります)。
そして、離婚調停が不成立となった場合には、③離婚訴訟を提起し、法定の離婚事由を立証する必要があります。
 
 また、色々ありながらも5年間は同居を続けてきた経緯があり、別居に至ったのが比較的最近のような場合、裁判実務からすれば、法定の離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に直ちには該当しない可能性があります。

 このように、相手が離婚を望んでいるとしても、あなたの方で離婚しない意向を有している場合、複数の手続きを要し、各手続きには相応の時間を要すること等に鑑みれば、直ちに離婚を実現できる状況ではないように思われます。

 いずれにしても、ご心配なようであれば、お住まいの地域等の弁護士に直接相談する等して適切なアドバイスを受けられるとよろしいかと思います。

【参考】民法
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

清水 卓先生。
分かりやすいお言葉で、ありがとうございました。