住居侵入罪や不法行為などで慰謝料請求出来ませんか?

私の家の隣りに築40〜50年位の家が建っています。その家の老朽化が進んでいて、たびたび修理が必要なのですが、昔に建てられた家なので、今の家の様に境界線の50cm内側とかに建ってなく、敷地いっぱいに建っている(その家の外壁が境界線)ので、修理の度に私の家の駐車場に入って工事をしなければなりません。
ライフライン等であれば、工事をしなければ、生活が困るのは理解していますし、敷地に入るなと言っているわけでは無いのですが、毎回、無断で工事業者を私の家の駐車場に入れて、工事をするので困っています。
その家の大家に許可なく工事をするのはやめてほしいと言うのですが、なぜかわかってもらえないので、法的手段をとろうと考えています。
駐車場ですので、工事の予定を知っていれば防げる車の事故が起きるかもしれない事や敷地内に知らない人がいるので、怖くて子供が庭で遊べない事など不安や迷惑がかかっています。
住居侵入罪や不法行為などで慰謝料請求などは出来ないでしょうか?

本件では「隣地使用権」が問題になります。
現行民法では以下のように規定されておりますので、質問者様の承諾なしに隣地を使用することは認められておりません。

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第209条
1 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。
  ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
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そのため、質問者様に無断で土地に立ち入る行為は「違法行為」といえるかと存じます。
もっとも、工事のために必要的に立ち入っているという事情を考慮すれば、刑事責任まで追及するのは難しいように思われます。
また、理論的には損害賠償請求を行うことは可能ですが、
仮に裁判を起こして請求が認容されたとしても、
せいぜい10万円から数十万円程度の支払いが命じられる程度に留まってしまうように思われますので、
訴訟を提起するために弁護士に依頼した場合は、弁護士費用の方が高額になってしまうおそれがあり、あまりおすすめはできません。

なお、「隣地使用権」については、令和5年4月1日に改正法が施行されることとなっており、
現行民法が以下のように改正されます。

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第209条
1 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。
  ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
 一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
 二 境界標の調査又は境界に関する測量
 三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
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本件に関わる大きな変更点としては、隣地について隣人の承諾なしに使用することができるようになる点です。
すなわち、令和5年4月1日以降は、隣人は質問者様の承諾なしに隣地を使用することができるようになってしまいます。
他方で、第3項で「あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない」と規定されるため、令和5年4月1日以降、隣人には通知義務が課されることとなります。

以上が法的な説明となります。
本件について弁護士としてアドバイスするのであれば、
損害賠償請求についても費用対効果の面からあまりおすすめはできないので、
まずは、弁護士名義で、隣人に対して隣地の無断使用を止めるよう警告する内容の書面を送付して様子を窺うのが妥当ではないかと存じます。
ご参考ください。

ありがとうございました。
今回の相談の結果を材料に許可なく工事をすることをやめるように話をしてみます。