憲法の保障する請願権を実際に行使するには、具体的にはどのような手続きを踏めばよいのですか?
日本国憲法第16条では、
「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」
と国民に対して請願権を保障していますね。
しかし実際に、この請願権を行使するには、具体的にはどのような手続きを踏めばよいのですか?
請願の事項を所管する官公署の窓口に出向いて請願を行いたい旨を申し出れば、所定の請願書の様式を交付してもらえるのですか?
どこに何を請願するのかで手続きが違います。
一般の官公署については請願法が定め、国会の各議院に対する定めは国会法や衆議院規則・参議院規則、地方議会に対する請願は地方自治法124条・125条が定めています。
請願を行おうとする官公署にまず問いあわせるのが比較的スムースかと思います。
ありがとうございます。
ちなみに、特定の公務員について、「この職員はこのような不祥事を起こしたので懲戒処分を課してほしい。」と請願することも、憲法の保障する請願権のうちに含まれると思われますか?
含まれるでしょう。ただ、憲法16条によって国又は地方公共団体に義務付けられるのは請願を受理するところまでですので、憲法16条の規定が意味を持つ状況はかなり限定的です。
ご返信ありがとうございます。
続いて質問なのですが、請願法に基づいて行った請願が、内閣総理大臣や大臣の専権事項に属する事項だった場合には、その請願内容は、内閣総理大臣本人や大臣本人の目に直接行き届くようになるのですか?
また、天皇に対して行った請願は、天皇本人の目に直接行き届くようになるのですか?
請願法第五条では、「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。」と定められているので、そのような請願は被請願者本人の目に直接行き届くようにしないと「これを受理し誠実に処理」しているとはいえないと思いましたから。
>続いて質問なのですが、請願法に基づいて行った請願が、内閣総理大臣や大臣の専権事項に属する事項だった場合には、その請願内容は、内閣総理大臣本人や大臣本人の目に直接行き届くようになるのですか?
>また、天皇に対して行った請願は、天皇本人の目に直接行き届くようになるのですか?
そんなことはないでしょうね。別に内閣総理大臣や天皇が直接見る義務が定められているわけでもないので。直接見なければ誠実じゃないとも言えないでしょう。
事実上も、義務付けられているとすると国会や内閣、天皇になされるすべての陳情が請願の名の元に行われれば内閣総理大臣や天皇陛下は全ての請願をチェックするだけで過労死しかねないですし。
ただ、具体的になされた請願について、どのように対応すべきかは悩ましい問題であり、この問題についてたびたび国会で質疑応答がなされているようです。
ありがとうございます。分かりました。
最後の質問なのですが、
憲法や請願法の保障する請願権というのは、裁判所に対する請願も含まれているのですか?
例えば、ときどき世間では、特定の刑事裁判について減刑や厳罰を求める嘆願書などが提出されることがありますが、そのような嘆願を請願権の行使という形で行うことは可能なのでしょうか?
請願権の行使という形で行ったほうが、法律上、請願を受けた側には「受理し誠実に処理」しなければならない義務が発生する分、効果的かと思いましたので。
>憲法や請願法の保障する請願権というのは、裁判所に対する請願も含まれているのですか?
例えば、ときどき世間では、特定の刑事裁判について減刑や厳罰を求める嘆願書などが提出されることがありますが、そのような嘆願を請願権の行使という形で行うことは可能なのでしょうか?
争いがありますが、一応可能であるというのが多数説のようです。
ただそれが多数説であるのは、請願権保証が受理と誠実な対応にとどまり、判決の内容に干渉して司法権の独立を侵害しないからです。
請願権の行使が「効果的」である場面などないでしょうね。
ありがとうございます。
そうですか、分かりました。
ただ裁判所に嘆願書を提出する際には、一応「請願権の行使」という形をとって行ってみても良さそうですね。