内定承諾後の労働条件通知書の間違いについて

【相談の背景】
これから転職先への入社を控えている者です。内定承諾後に労働条件通知書に記載の給料が間違っていたと人事担当から報告がありました。訂正された給料では年収が30万ほど下がってしまいます。まだ報告を受けただけで人事担当と話し合いはしていません。

【質問1】
内定承諾をした段階で契約は成立していると思うので、最初に提示された労働条件通知書に記載されている給料で支払ってもらえるかどうか

【質問2】
まだ入社前のため、人事担当と今回の件について話し合い、一方的に内定取り消しを言い渡された場合それは有効なのかどうか。

よろしくお願いいたします。

既に労働条件が通知され、内定受諾後ということでしたら、労働契約が成立しているように思います。
 労働契約が成立後、労働条件を変更する場合には、会社側と労働者の双方が合意して変更する必要があるというルールがあります(労働契約法8条)。そのため、労働側のあなたが賃金額の変更について合意をしなければ、会社は一方的に賃金の減額をすることはできないはずです。

 ただし、記載間違いという形式ミス故に間違った内容の労働契約が認められるのはおかしいと考え、そのような労働契約は成立していない、錯誤(民法95条)によるものとして取り消す、内定を取り消すなどの主張をしてくる可能性があります。
 会社側の錯誤取消しや内定取消しの主張は裁判実務では容易には認められない傾向がありますが、ケースによってはこれらの主張が認められるリスクもあります。
 そのため、まずは、入社前に内定先の会社とよく話し合って見ることが大切かと思います(一度通知した以上、会社側が通知どおりの賃金額に応じる可能性もあるでしょう)。
 仮に、あなたの主張に耳を貸さず、一方的に内定取消し等をして来た場合には、会社側に留保されている解雇条件をみたさず違法•無効であるものと思われます。

 いずれにしましても、今回の件で会社側とトラブルが生じた場合には、弁護士に直接相談し、あなたにとってベストな選択ができるようなアドバイスを受けてみて下さい。

【参考】労働契約法
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

【参考】民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。