裁判で有罪となった公務員について、所属庁が独自審理により「無実なので不処分」との判断を下す事は可能?

公開日時: 更新日時:

時々、公務員の立場にある者が、 何らかの犯罪容疑で起訴されることがありますよね。 例えば、痴漢容疑など。 しかし、本人は裁判にて無実を主張することがあります。 そういう場合、 本人は起訴休職処分となりますが、 本人が無実を主張し続けている限り、 所属庁は、本人に懲戒処分を下すかどうかは、 当該裁判の判決確定まで保留することが多いです。 その後、 当該裁判にて本人の無罪が確定した場合には、 所属庁は判決に従って本人を不処分とします。 しかし、これについて疑問に思ったのですが、 仮に本人が当該裁判にて有罪確定したとしても、 所属庁が、裁判とは別に独自の調査・審理により、 「本人が罪を犯したとは認定できない。」 との結論を出して、 本人に対して 「懲戒処分は下さない。不処分とする。」 との決定を下すことは出来るのですか? つまり、本人の所属庁は、 本人に対する懲戒処分の可否を判断するにあたって 必ず裁判所の事実認定に縛られるのかどうかという話です。 疑問に思ったので、よろしくお願いします。

わかば さん

弁護士からの回答タイムライン

  • 佐藤 充崇
    佐藤 充崇弁護士
    法律上は可能と思いますが、事実上そういうことはほとんどないかと思います。 逆に刑事で無罪判決が出たが、所属庁が独自の判断で懲戒処分を出すことはそこそこ見られます。
    役に立った 1
  • わかば
    わかばさん
    ありがとうございます。 ところで、事実認定の基準は刑事裁判と民事裁判とで異なりますよね。 刑事裁判の場合は「合理的な疑いを挟む余地が無い程度」の証明が必要とされ、 民事裁判の場合は「通常人が疑いを挟まない程度」の証明でよいとされています。 刑事裁判より民事裁判のほうが、事実認定の基準は緩く設定されていますね。 それでは、行政庁が所属職員に対して懲戒処分を下せるかどうかの可否を判断する際は、そのための事実認定の基準としては、上記のどちらが用いられるのでしょうか?
  • 佐藤 充崇
    佐藤 充崇弁護士
    まず、先ほどの回答を一部修正させて下さい。 そもそも国家公務員法・地方公務員法上、欠格事由として「禁固以上の刑の刑に処せられ、その執行が終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」は失職します。執行猶予でもダメとされています。 ですので、有罪判決でも、禁固刑以上だとそもそも失職します。ご留意ください。 誤解を招く回答をして申し訳ありません。 それ以外の場合は、どちらかというと民事裁判に近い運用がなされていると思いますが、一方で多くの懲戒処分には行政庁に行政裁量が認められ、その裁量の逸脱・濫用にならないと違法にならないので、裁判官が行政庁の事実認定に疑問を持っても、それだけでは元の行政処分が取り消されたりはしづらいです。
    役に立った 1
  • わかば
    わかばさん
    ご回答ありがとうございます。 ただ、懲戒免職処分と失職は異なりますよね。 例えば、自動車運転で人身事故を起こして停職処分を受けたが、その後に執行猶予付き禁固刑が確定して失職したという事例を聞いたことがあります。 となると、禁固刑以上の刑が確定し失職したが、懲戒処分としては不処分というパターンもあり得るということになりますよね? 事実認定の基準については理解できました。 ありがとうございます。
  • 佐藤 充崇
    佐藤 充崇弁護士
    >ただ、懲戒免職処分と失職は異なりますよね。 例えば、自動車運転で人身事故を起こして停職処分を受けたが、その後に執行猶予付き禁固刑が確定して失職したという事例を聞いたことがあります。 となると、禁固刑以上の刑が確定し失職したが、懲戒処分としては不処分というパターンもあり得るということになりますよね? というか、刑事事件の場合、不起訴又は略式起訴・罰金で終わることが自明でない限り、刑事の判断が出る前に懲戒処分はしないようにすることも多いです。 起訴されれば多くの場合当然失職になりますので。 ですので、重たい犯罪の場合はご指摘のパターンがむしろ多数と思います。 ご指摘のように自動車事故で人身事故を起こして停職処分を受け、その後に執行猶予付き禁固刑が確定して失職したケースも見られます。これは公務員の人身事故の場合、以下の二つの理由で懲戒処分すべきかどうかの判断を先行させなければならないケースが多いからです。 ①人身事故の場合、刑事処分の見通しが立ちづらい 人身事故の場合、まずいつ起訴不起訴の判断がされるか分かりません。たいていは在宅でなされるからです。また、刑罰についても、前科や被害状況、事故態様によりまちまちで、起訴されても罰金で終わる可能性もないとは言えません。 また、事故後時間が経過してから死亡するケースもあり、検察も被害者が死亡するおそれがあるうちは刑事処分を決めづらいです。 これらの理由で、人身事故の場合、当該公務員の刑事裁判が行われるのか行われないのか、いつ起訴されるのか、どういう判決がされるのか分からないまま長期間経過することが多いです。 その間懲戒処分をしないわけにもいかない場合、先に懲戒処分をするのを迫られることが多いです。 ②地方公務員の交通事故の場合、禁固刑以上だからといって当然失職しない場合がある 地方公務員の交通事故の場合、地方公務員法28条4号で、条例に特別の定めがあれば当然失職しないと定めているのですが、実は特例の条例を定めている都道府県が多いのです。基準も都道府県によりまちまちですが、公務中の交通事故で、過失も重くない場合には、当然失職しないという条例の定め又は運用をしている都道府県があるようです。 そういう都道府県で、特例により当然失職させるべきでないと考えれば、先に懲戒処分の判断をすることになるでしょう。
    役に立った 0
  • わかば
    わかばさん
    なるほど、そういう理由で、 公務員の人身事故の場合は刑事罰が確定する前に懲戒処分を行うパターンが多いのですね。 詳しくありがとうございました。

この投稿は、2022年12月29日時点の情報です。
ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。