会社貸与のパソコンの中身を被貸与者に通知せず確認することは可能でしょうか

懲戒解雇の処分も下せる状況の社員がいます。まだ本人には勧告はしていません。

その社員に会社からパソコンを貸与しています。
リスクマネジメントの観点から、被貸与者が不在の状況で
そのパソコンを直接確認せよと上席から指示がおりています。
(自分は役職もついていない、何の権限もない平社員です。)

就業規則に「電子メール等の私的利用禁止」の旨は記載しておりますが、
「電子メール等の監視・調査」については明記してありません。

上記のような状況で、会社貸与のパソコンの中身を
被貸与者に通知せず確認することは可能でしょうか。

プライバシー侵害にあたってしまいますか?
ご教示いただきたく存じます。
宜しくお願いいたします。

会社が従業員に貸与したパソコンの中身を
被貸与者に通知せずに確認することの可否
を検討するにあたっては、就業規則等の整備状況や参考となる裁判例の確認が有益と言えます。

 まず、就業規則等において、電子メール等の監視・調査について明確に定め、そのことを従業員に事前に周知していたような場合には、会社側は、労働者の同意を得ることなく、電子メール等を監視・調査することが可能と思われます。
 これに対し、上記のような就業規則等の整備がなされていない場合には、参考裁判例等を踏まえながら、個々のケースに応じ、個別的に判断をして行くことになります。

【参考裁判例】 
就業規則の整備がなされていなかった事案において、「このような情況のもとで、従業員が社内ネットワークシステムを用いて電子メールを私的に使用する場合に期待し得るプライバシーの保護の範囲は、通常の電話装置における場合よりも相当程度低減されることを甘受すべきであり、職務上従業員の電子メールの私的使用を監視するような責任ある立場にない者が監視した場合、あるいは、責任ある立場にある者でも、これを監視する職務上の合理的必要性が全くないのに専ら個人的な好奇心等から監視した場合あるいは社内の管理部署その他の社内の第三者に対して監視の事実を秘匿したまま個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合など、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となると解するのが相当である。」と判示している裁判例があります。(東京地判平成13年12月3日労判826号76頁)

この参考裁判例からは、例えば、以下のような留意点が読み取れます。
•職務上従業員の電子メールの私的使用を監視するような責任ある立場の者が調査を実施する
•監視する職務上の合理的必要性があること
•社会通念上相当な範囲を逸脱した監視とないよう調査方法•態様に留意すること

なお、あなたの会社では、「電子メール等の監視・調査」については就業規則に明記していないとのことですので、調査を受ける相手方から事前にそのような調査の可能性があることを知らされていなかった等の反論の余地を残す可能性があるため、参考裁判例も踏まえた慎重な対応をしておくことが望ましいでしょう。

清水先生
詳細でわかりやすいご回答、また裁判例まであげていただき
誠にありがとうございます。アドバイスを元に慎重に対応していたきたいと思います。

本当に助かりました。重ね重ねお礼申し上げます。