株式会社の損害賠償に対する代表取締役の責任の範囲について

<経緯>
1. 個人事業主のITエンジニアとして、システム開発の業務委託契約をある企業と締結しております。
2. その契約では「甲及び乙は、本契約の履行に関し、自己の責に帰すべき事由により相手方に損害を与えた場合は、相手方に対して直接かつ通常の損害の限度で賠償する責を負うものとします。」となっています。
3. 今は私が個人事業主として契約しているので損害賠償を払うことになった場合、私個人の資産から払うことになるかと思っています。
4. この個人事業を株式会社化して、同様の業務委託契約を締結した場合、損害賠償は会社の資産から払うことになると思っています。

<質問>
5. 上記3. と4. の認識は合っていますでしょうか?
6. もし上記4. の場合かつ、会社の資産では損害賠償を払いきれない場合、会社を倒産させたとしても、代表取締役の私が自分の資産から不足分を支払うことになるのでしょうか?

【質問5について】
原則として、経緯3及び4記載のご理解で正しいと思慮いたします。

なお、4に関しては、会社の担当者として業務にあたった人物個人の過失により、相手方に損害を与えた場合、契約当事者ではないとしても、直接に損害を与えた人物として、個人で損害賠償責任を問われる場合は考えられます。

もっとも、上述した例外に当たるのは、あくまでその人物が個人で権利侵害になるような行為をした場合に限られますので、単純な契約違反などに関しては、あくまで契約当事者である会社の責任にとどまり、担当した個人に責任が生じてくる事態は考えにくいかと思われます。

【質問6について】
会社の種類にもよりますが、株式会社や合同会社であれば、会社の責任はあくまで会社のみが負うことになり、株主などの会社の構成員に責任が生じてくることはありません。

ご質問の事案についても、会社が契約違反などで損害を与えたという事案であれば、あくまで賠償責任を負う者は会社であり、その代表者や株主に責任が生じてくることはありません。

ただし、代表者や株主が会社の債務について、連帯保証契約などをしてしまうと、例外的に個人でも責任を問われる可能性が出てきますので、ご注意ください。