貞操権侵害と不貞慰謝料など複雑な関係

夫は、婚姻中にもかかわらず離婚したことにして仲間を信じ込ませて半年前に料理教室の経営者の紹介で女性と出会った。

夫と女性は、5か月ほどの友達期間を経て
3泊4日の旅行へ行き、最終日に男女の関係を持った。その翌日に付き合う約束をした。

翌週には、夫は賃貸マンションを契約して家を出ることを妻に告げたが、妻と話しているうちにすべてを打ち明けてしまい、相手の女性に対して取り返しのつかないことをしたと気付いた。

相手の女性に既婚者であること、もう終わりにしようと夫が女性に電話で伝えたところ、罵倒され切電したが翌日に、紹介した料理教室の経営者が「500万円請求したいと女性が言っている。弁護士は挟まずに解決しよう。」と提案してきた。

①夫は女性に金銭を支払う必要があるか。
その場合の相場はいくらか。
②妻は女性に対して慰謝料を請求できるか。
その場合の相場はいくらか。

(女性は夫に騙された立場だと主張しているが、男女関係になる前に自宅に行ったことはなく、食事などで会う回数も数えるほどだった。)

③女性の友人が複数通っているため、料理教室にも損害を与える可能性があると経営者は主張するが、夫は経営者に慰謝料などを払う義務があるか。

(夫はもう料理教室には行かないことを経営者に伝えている。)

夫婦としてどう解決すべきかおしえてください。よろしくお願いいたします。

①夫は女性に金銭を支払う必要があるか。
その場合の相場はいくらか。

→ 婚姻中であったにもかかわらず、夫が離婚したことにして行動していた事情などからすると、相手女性の貞操権侵害と認定され、慰謝料の支払義務を負う可能性はあります。
 ただし、交友ないし交際期間の短さ、性的関係の回数などの事情、類似事例の裁判例との比較などの観点からすると、相手女性が請求しようとしている500万円は妥当な金額とは言えず、大幅な減額の余地がありそうです。

②妻は女性に対して慰謝料を請求できるか。
その場合の相場はいくらか。

→ 相手女性が夫が既婚状態にあったとは知らず、知らないことに過失もなかったような場合には、妻から相手女性に対する不貞行為の慰謝料請求は認められない傾向があります。
 ただし、(女性は夫に騙された立場だと主張しているが、男女関係になる前に自宅に行ったことはなく、食事などで会う回数も数えるほどだった。)のような事情などから、夫が既婚状態にあると相手女性が気づくことができた(相手女性に過失が認められる)ような場合には、慰謝料請求が認められる余地はあるかもしれません。

③女性の友人が複数通っているため、料理教室にも損害を与える可能性があると経営者は主張するが、夫は経営者に慰謝料などを払う義務があるか。
→ 料理教室側が主張するような損害が本当に生じているのか、仮に何らかの損害が生じたとして今回の問題と法的な因果関係が肯定できるのか、損害額の評価は妥当かなどしっかりと精査•検討すべきでしょう。これらの精査•検討の結果、料理教室側に対する賠償義務を負わないで済む可能性もあるように思います。

>夫婦としてどう解決すべきかおしえてください。

→ 夫に至らない行動があったとしても、必ずしも相手に言われるがままの賠償金を支払わなければならない訳ではありません。法に基づく妥当な賠償責任かを精査•検討するためにも、弁護士に直接相談する(場合によっては代理人として間に入って交渉してもらう)ことも検討してみて下さい。