同定可能性が無い状況での開示請求

開示請求をするには、「現実の自分が言われている」という根拠(つまり同定可能性)が必要と知りました。

すると、
社会的な活動をしていないハンドルネームへの侮辱は、まず侮辱罪にはならず、民事の不法行為での侮辱にはなる。
しかし、そもそも自分が言われているという同定可能性が無いため、開示請求が出来ない。

ということでしょうか?

例えば、LINEのオープンチャットで、現実の人物を特定出来るようなメッセージを送っていない(同定可能性が無い)ハンドルネームへの侮辱です。
これは名誉感情の侵害ではあるものの、言われた方は同定可能性が無いためそもそも開示請求が出来ない ということでしょうか?

それとも、民事の侮辱は同定可能性が要件とならないので、開示請求できるのでしょうか?

民事における侮辱について、同定可能性を要件とした裁判例も存在しますが、大多数の裁判例は、同定可能性が要件とならないとする理解を前提としておりますので、投稿内容が不法行為たる侮辱に該当する場合には、開示請求ができます。
もっとも、LINEのオープンチャットはトークルームの人数等によっては、不特定多数に対する発信とは認められない可能性があり、そもそも開示請求の要件に該当しない場合があります。

ご回答ありがとうございます。

つまり、こういうことでしょうか?↓
普通は開示請求には現実の自分が言われたという根拠(同定可能性)がいる。しかし、民事の侮辱は例外で、同定可能性が無くても開示請求できる。
ということでしょうか?
私も以前は↑このように思っていたのですが、

ネット上で、
名誉感情侵害においても、プロパイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求は、同定可能性が無いと、開示請求の要件の4条1項1号を満たさず、開示請求が認められないという考えを見て、確かにと思ってしまいました。

また、同定可能性の無いハンドルネームへの侮辱で民事責任を負うことになった例は非常に少ないという意見を目にしました。

これは、どちらが正しいのでしょうか?

普通は開示請求には現実の自分が言われたという根拠(同定可能性)がいる。しかし、民事の侮辱は例外で、同定可能性が無くても開示請求できる。
ということでしょうか?
→開示請求でどのような権利侵害を主張するか次第です。たとえば、名誉権侵害を主張するのであれば、同定可能性が必要ですが、名誉感情侵害(侮辱)を主張するのであれば、同定可能性は不要です。侮辱が例外ということではありません。

ネット上で、名誉感情侵害においても、プロパイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求は、同定可能性が無いと、開示請求の要件の4条1項1号を満たさず、開示請求が認められないという考えを見て、確かにと思ってしまいました。
→前回回答したとおり、名誉感情侵害に同定可能性を必要とする考えは、現在の大多数の裁判例に反する考えです。

同定可能性の無いハンドルネームへの侮辱で民事責任を負うことになった例は非常に少ないという意見を目にしました。
→通常、当事者同士の話合い(示談)で解決するケースが圧倒的に多いので、実際に損害賠償請求訴訟に至ったケースが少ないという意味合いかと思われます。ハンドルネームへの侮辱であっても、民事責任を負います。ただし、同定可能性は侮辱の成立要件ではないものの、慰謝料の減額事由にあたると考える裁判官はいます。

多くの質問に答えて頂き、ありがとうございます。

最後にひとつお願いします。

同定可能性の無いハンドルネームへの名誉感情侵害(民事の侮辱)に対して、開示請求できる条件は何でしょうか?

例えば、ハンドルネームを名指しして侮辱された場合、同定可能性が無くても「自分が言われている」ということになり、開示請求できる ということでしょうか?

ご相談いただいた条件は、概ね以下の2点です。
1 当該ハンドルネームが自分のことであること(同じハンドルネームの人物が他にいないことを立証する必要があります。)
2 侮辱が、社会通念上許される限度を超えるものとして、不法行為が成立すること(この判断は、裁判官により多少の差はあります。)

以上を満たすのであれば、「ハンドルネームを名指しして侮辱された場合、同定可能性が無くても「自分が言われている」ということになり、開示請求できる」ということになります。

ありがとうございます。