従業員給与過払いの対応について
お伺いしたいことがあります。
現在東京都内にて従業員を10名ほど雇い会社経営をしているのですが、今年1月に昨年12月度の給与として、1名の従業員に対して誤って本来の給与額を大幅に超える金額を振り込んでしまいました。
翌月になってから給与の過払いに気付き、該当従業員の直属の上司を介して振込ミスの旨を謝罪の上返還を求めたのですが、「振り込まれた給与は使ってしまって返金できない」「分割での変換も毎月の支払いがあるので難しい」とのことで、現状この件は据え置きとなっています。
該当従業員は現在学生の身分でありアルバイトとして現在も雇用を続けておりますが、
該当者本人に返還の承諾を得ることが難しい状況ですので、該当者が退社後(調べたところ請求可能期間が10年以内となっていますのでその期間内に)本人名義宛にて本籍のある茨城県の実家へ過払い分給与を請求する旨の内容証明を送ることは法的に問題はありますでしょうか?
何卒ご回答いただけると幸いです。
請求は原則として、支払義務を負っている者に対して行うべきものであり、支払い義務のない者に対して請求を行うことは控えておかれるべきです。
ご質問の方法も、たとえ宛名を本人宛としても、実家宛に送付をする点で、実質的には支払義務のない親に対して請求をするものに等しいため、控えておかれた方が良いものと思われます。
なお、法律上、給料は全額払いをする必要があるため(労働基準法24条1項)、原則としては、会社が労働者に対して債権を持っているとしても、給料から債権分を控除することはできないことになっています。
もっとも、判例上、賃金過払い分については、時期や方法、金額などからみて、労働者の経済生活の安定を脅かす恐れがない場合には、例外的に相殺をすることができるとされています。
具体的には、過払いが生じた時期と相殺を行う時期とが合理的に接着しており、また、あらかじめ労働者に相殺をすることの告知がなされていること、金額が多額でないことなどが必要となります。
こうした例外となるように注意して進める場合であれば、今後の賃金から、過払い分の相殺をしていく余地はあるかと思われます。