重要な経歴の詐称とは具体的に何ですか。
現在、地位確認で係争中ですが、原告である元従業員は、「法人における決算業務を行うことができ、3年以上の経理経験がある、簿記資格2級を持った方」という条件にて求人募集を行い、履歴書・経歴書において元従業員は「税理士事務所で約3年、企業における経理業務約7年(2社にて)で過去5社(経理以外で2社)にて勤務をしてきた」旨、アピールし、採用された。しかし、業務を行わせると能力がなかったものの、他に経理を行えるものがおらず、ズルズル年数が
経っていった。(約5年)そののち、決算までの経理の出来る者を新たに雇った結果、経理帳簿が誤りだらけで、税務上あるいは対外的に(特に金融機関)様々な問題がおこる可能性が発覚した。そのため、元従業員の経歴をあらためて調査したところ「税理士事務所での勤務期間が約1年半、企業における経理経験が1年数カ月程度」(但し、本当に経理を行っていたかは定かではない)しか行っておらず、また勤務時期や勤務期間については履歴書と大きく乖離し、実際短期間で退職した企業で履歴書の記載がないものが6社もあった。このような状況であっても裁判所は解雇の要件として弱いと認識しているようです。道徳論としては、嘘ばかりの履歴書・経歴書で入社した者を、会社としては専門職として採用し、金銭的なものや会社の信用にかかわる立場である職責を任すことはできなく、他の部署においても使えないと判断して普通解雇したが、法律としては重要な経歴詐称とは具体的に何でしょうか。ご教授ください。
一般には,重要な経歴詐称とは「使用者が真実を知っていたならば当該労働者を採用しなかったであろう場合」(東京高判昭56.11.25)をいうとされています。貴社のケースは,それなりに税理士事務所での職務経験があったらしいので,この要件に当てはまるか微妙なので裁判所は解雇の要件として弱いと見ているのでしょう。
職務経験を偽ったケースとしては,例えば東京地判平16.12.17グラバス事件では,「JAVA言語のプログラミング能力がほとんどなかったにもかかわらず,本件経歴書にはJAVA言語のプログラミング能力があるかのような記載をし,採用時の面接においても同趣旨の説明をしてJAVA言語のプログラマーとして採用された」原告について「重要な経歴を偽り採用された」として解雇を有効としています。
結局は,元従業員氏の経理能力が「ほとんどなかった」レベルなのか「あったが有能とはいえない・十分な能力とはいえない」レベルだったのかで判断が分かれそうです。
ありがとうございます。私自身税理士事務所に勤めておりましたが、まず、1,2年で法人税法、消費税法の基礎を理解し、企業会計原則に基づいて決算まで帳簿を締めることができるように事務処理が出来るようになるのは、難しいと思います。裁判所においても、どうも簿記の資格を持っていれば、決算が出来るという思考があり、簡単な作業との思いこみがあるのではと感じます。経理は、仕訳の一つ一つが、税法に基づく法律行為でもあります。よって様々な経験と税法、会計原則の理解なくして、決算は出来ないということを理解して貰わなければ、難しいかなと感じました。ご教授、ありがとうございました。