リベンジポルノの公表目的提供罪の構成条件についての疑問

リベンジポルノの公表目的提供罪について疑問があります。
公表目的提供罪というのは「この動画を拡散してくれ」というような文言とともにリベンジポルノを特定の個人に提供した時に成立するのでしょうか。それともそのような直接的なやりとりがなくとも成立するのでしょうか。
例えば、成人向け動画を個人間で交換した際にリベンジポルノ動画が含まれており、その後、交換相手がリベンジポルノ動画を不特定多数に公開した場合、渡してしまった側は公開されることを意図していなくても公表目的提供罪に問われるのですか?
また交換相手が成人向け動画を不特定多数に配布している人間と知っていた場合は、本人が「この動画を配るよ」といった公言をしていなくても、自らが渡す動画も配布されかねないのに渡したということで公表目的提供罪が成立するのでしょうか。
(個人間というのは1対1であり、リベンジポルノを送ったのはその相手1人だけと仮定してください)
公表目的提供罪についての情報がネット上でなかなか見つからず、個人的にどのような場合でこれが成立するのか疑問になったので、少しまとまりのない文章かもしれませんが、お答えいただければ幸いです。

結論をかいつまんでお話すると、やりとりがなくても目的があれば、公表目的提供罪が成立します。
ちなみに、相談者の方のいうようなやりとりがあると、より重い私事性的画像記録(物)公表罪の共同正犯として処罰されることがあります。
また、被提供者が成人向け動画を不特定多数に配布している人間と知っていた場合には、公表目的提供罪はもちろん、私事性的画像記録(物)公表罪の共同正犯か間接正犯が成立し得ます。

余談ですが、リベンジポルノ防止法は、議員立法であり、研究者からの解説書が少ないなどの理由で、資料に乏しく、一般の方に分かりにくい状況になっています。

佐藤弁護士、回答ありがとうございます。
ちなみにリベンジポルノといえば一般的には元交際相手の性的な画像を復習目的で流通させることを思い浮かべますが、ネット上に既に流通していた赤の他人の動画を復讐目的無しで、単に性的なものとして(アダルトビデオのような扱いで)提供していても成立するのですか?
YouTubeにて他の弁護士の方が構成要件として復讐目的であることが必要で、全く他人の画像・動画はリベンジポルノ法違反にはならないということをおっしゃっているのを見かけました。確かに報道されているものも知人女性や元交際相手の動画や画像を公表して逮捕されているケースが多いように感じます。
佐藤弁護士はどのようにお考えでしょうか。

もう一点あるのですが、公表目的提供罪の「公表させる目的」という文面を見ると、やはり意図的に公表させるように仕向けるような動きがないと成立しないのではないかと私は考えているのですが、実際のところは「目的」という点は重視されていないのでしょうか。

リベンジポルノ罪というのは俗称で、法律名にもリベンジという限定はありません。
 法文の通りで、復讐目的は不要です。盗撮画像の公開にも適用されています。

私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

文献
水越壮夫「『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』について」月刊警察 第33巻3号
捜査研究768号私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
警察公論2015年03号私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
よくわかるリベンジポルノ防止法

誤解されやすいのですが、リベンジポルノ防止法は復讐目的でなされた行為のみ罰するわけではありません。復讐目的がなくても成立し得ます。すでに流通している他人の動画を、性的なものとして提供していても、他の要件を満たせば公表目的提供罪は成立し得ます。

それから、公表目的提供罪では目的は重視されます。ただ公表させるような動きなどが必須なわけではないです。一般の目的犯の目的と意味は同じで、内心的傾向を意味します。
ご興味があれば、「目的犯」をキーワードにいろいろ調べてみて下さい。