同定可能性がない場合の開示請求
匿名同士で喧嘩になった場合、同定可能性がないから権利侵害が明白とは言えず開示請求は不可能という意見と、名誉感情の侵害で開示請求が可能という意見があります。
どっちが正しいのか気になります。
それともどっちが正しいというのはなく、弁護士の先生によって色々意見がある難しい問題なのでしょうか?
理屈上は可能ですが、実務上開示を求めることがなかなか難しいということです。
実例はあるようですが、公開された裁判例が存在するかどうかは把握していません。
ぱっと探した限りでは見当たりませんでした。
中澤佑一『インターネットにおける誹誘中傷法的対策マニュアル(第3版)』(中央経済社,2019年9月)73頁
【名誉感情の侵害の成否を検討するにあたっては. 同定可能性を基準に検討するのではなく, 自身が被害者であるという合理的な説明が可能であること(「対象者性」の要件) を別個の要件として求めるべきであると考えます。よって.侮辱行為については,必ずしも「一般読者の普通の注意と読み方を基準」に,誰に対する表現かがわかるというところまで同定可能性は必ずしも必要ではなく,対象者性の要件として「自身が被害者であるという合理的な説明が可能であるか」を検討すべきでしょう。】
関述之・小川直人『インターネット関係仮処分の実務』(金融財政事情研究会,2018年9月)76頁
【名誉感情の侵害を理由として, インターネット上の投稿記事の仮の削除や発信者情報開示を求める仮処分を申し立てることができるか。
【参照条文】民法709条710条, 723条プロバイダ責任制限法4条1項
名誉感情が侵害された場合についても, インターネット関係仮処分の申立てをすることは可能である。ただし,投稿記事により名誉感情が侵害されたというだけでは足りず,侵害の程度が社会通念上許容される限度を超える必要があるので, その点を検討しておく必要がある。なお,法人に関して事実を摘示しない投稿記事による人格権の侵害を認めるかどうかについては,今後,議論を要するものと考えられる。】
なお、同定可能性がない場合でも名誉感情侵害を認めたものとして、福岡地判令1年9月26日判例時報2444号44頁があります。週刊誌記事の事例です。名誉毀損は否定されています。
わざわざありがとうございます。
弁護士の先生によって意見が違うので気になってましたが納得できました。
本当にありがとうございました。