建築工事請負契約の解除について、債務不履行・説明義務違反等に該当する可能性があるかご相談です
建築条件付土地を購入し、同じ事業者と建築工事請負契約を締結しました。その後、以下の事情が重なり、当方から契約解除の意思を伝えました。
事業者側は、「解除を申し出たのは注文者側であり、事業者としては契約を履行可能であったため、注文者都合の解除である」と主張しています。
1.8月31日の建築確認申請スケジュールについて
当方は工程の遅れに懸念を示し、解約の可能性も伝えたことから、8月8日に契約継続可否を判断するための打合せが行われました。
当方はその場で、8月31日までに建築確認申請が可能である具体的根拠を複数回確認しましたが、具体的工程は示されませんでした。
後日メールにて、事業者側から、当時の計画として「8月8日間取り確定、8月9日構造計算依頼、8月24日頃構造計算書受領、8月31日確認申請」と説明されました。
しかし、8月8日に間取りを確定する必要があることも、翌日の構造計算依頼までに何を決定する必要があるのかも事前に説明されていませんでした。8月9日の打合せ資料も8月8日に初めて共有されています。本件は二世帯住宅であり、間取りや構造に関する内容は両親とも協議して判断する必要がありました。
そのため、事業者内部において8月末の建築確認申請が技術的に可能であるという想定は実現可能性が限りなく低い計画であると考えております。事実8/8間取り確定は達成できておりません。
この状態で8/31の建築確認申請が達成できるという事業者側の主張はどれくらい妥当性があるものなのか疑問をいだいております。
さらに、請負契約締結時に、建築確認申請に不要なオプション仕様が及ぼす資金計画への影響を当方が懸念したことに対し、設計士から「確認申請に必要な事項だけでなく、オプション等も検討し、住宅全体の仕様・概算費用を把握した上で確認申請に進めることが可能である」旨の説明を受けています。
一方、現在は「内装・設備・建具等は確認申請後にも検討可能であり、確認申請に必要な事項を確定すれば8月31日に申請可能だった」と説明されています。
当方は、契約時の説明と現在の説明に大きな齟齬があり、この状況で「8月31日の確認申請は履行可能だった」とする主張がどの程度妥当なのか疑問を持っています。
2.設計の前提となる方位について
当方は設計当初から採光の観点で方位を重視し、それを前提に間取りを検討していました。
間取り作成が終盤に差し掛かった頃に現況測量が行われ、それまで図面作成に使用されていた方位と真北との間に約20度の差があることが判明しました。しかし、事業者側からは、当該方位差について採光、建物配置、間取り、建築確認申請等への実質的な影響は生じていないとの説明を受けています。一方、当該方位差について当方への説明・確認・了承が行われた記録については、事業者側でも特定できないとの回答を受けています。
当方は、方位を重要な設計条件としていたにも関わらず、方位差やその影響を説明・確認せず、事業者側のみで影響がないと判断して設計を継続したことが、一般的な設計実務及び契約上どのように評価されるのか疑問を持っています。
3.契約締結前の営業担当者の説明について
土地売買契約時、設計士へのメール・電話相談の回数に制限があるか確認したところ、営業担当者から「制限なく相談してよい」と説明されました。
しかし請負契約後、設計士から「過度な連絡には追加費用が発生する可能性があり、契約にも記載されている」と説明されました。
後日、営業担当者に契約前の説明理由を確認したところ、当該規定を認識していなかった旨に加え、「仮に認識していても、顧客の心象が悪くなるため制限があることは伝えない」旨の発言がありました。
当方にとって設計士との意思疎通は住宅設計・合意形成の重要な手段であり、追加費用を伴う制限を事前に認識していれば、契約締結自体を再考していました。
以上を踏まえ、以下をご教示いただきたいです。
① 当方から最終的に解除意思を表示したことのみをもって「注文者都合の解除」と評価されるのでしょうか。
② 上記事情を一連の契約締結・履行過程として評価した場合、事業者側の債務不履行を理由とする解除として主張する余地はあるでしょうか。
③ 債務不履行解除が難しい場合、説明義務違反、不法行為、消費者契約法上の取消し等による解除・取消し又は損害賠償を検討する余地はあるでしょうか。
現在、事業者側からは注文者都合の解約として清算を求められています。
本件の解除原因を法的にどのように整理し、今後どのように対応することが適切か、ご意見をいただけますと幸いです。
解除を申し出たという事実だけで、当然に注文者都合の解除と判断されるわけではありません。解除に至った経緯や事業者側の対応、契約内容等を総合的に検討する必要があります。
① 注文者都合の解除について
事業者側に契約上の義務違反があり、それが解除を認める程度のものであれば、債務不履行解除を主張する余地があります。他方、解除要件を満たさない場合には、民法641条に基づく注文者の任意解除と評価される可能性があります。
② 債務不履行解除について
8月31日の確認申請が契約上の義務となっていたかが重要です。具体的な工程説明がなく、資料共有も遅れていた点は問題ですが、予定どおり申請できなかったことだけで直ちに債務不履行解除が認められるわけではありません。
また、方位差約20度についても、採光を重視する意向を認識しながら説明を怠ったのであれば、説明義務違反を主張する余地があります。ただし、実際の設計への影響や違反の重大性が問題となります。
③ 消費者契約法による取消し等
特に重要なのは、契約前に「制限なく相談できる」と説明されながら、実際には追加費用が発生する可能性があった点です。この説明が重要事項について事実と異なり、契約締結の判断に影響したのであれば、消費者契約法4条による取消しを検討できます。また、説明義務違反に基づく損害賠償請求も考えられます。
④ 今後の対応
まず、契約書、工程表、メール、打合せ記録等を精査し、事業者に清算金の具体的な根拠と作業実績の開示を求めるべきです。仮に任意解除と判断されても、請求額が当然に全額認められるわけではありません。
現段階では、注文者都合の解除であることを認めず、債務不履行解除や消費者契約法上の取消し等の主張を留保しながら、清算条件について交渉することが適切と考えます。