遠隔監視装置が長期間稼働しない太陽光発電所の損害賠償について
中古の産業用太陽光発電所を販売会社から購入しました。購入後、旧監視システムの停止後に新しい遠隔監視装置へ切り替えるとの説明を受けましたが、正常に稼働しない状態が長期間続いています。
販売会社と保守会社に繰り返し復旧を求めていますが、復旧時期は示されず、両社の説明も食い違っています。その間に売電額が大幅に低下しました。監視装置が稼働していれば、異常の早期発見と損失拡大の防止ができたと考えています。
また、保守会社からPCSの通信不良に関する修理費用を私が負担するよう求められた経緯があります。しかし、そもそも販売会社が遠隔監視装置を正常に使用できる状態にしていなかったために必要となった対応であり、購入者が負担すべきものなのか疑問です。
販売会社は「発電所の引渡しは完了している」「現在メンテナンス契約を締結していない」と主張しています。一方、保守会社との契約・支払記録や、監視装置の切替えが完了していないことを示すメールは保存しています。
次の点を相談したいです。
1. 販売会社に監視装置の復旧費用および売電損失を請求できる可能性
2. 長期間の未対応を債務不履行や契約不適合として追及できる可能性
3. 保守会社との「FIT期間満了まで解約できない」とされる契約を解除できる可能性
4. 弁護士による通知・交渉・訴訟を依頼する場合の見通しと費用
契約書、請求書・領収書、関係者とのメール、売電実績などは保存しています。太陽光発電設備、事業者間契約、損害賠償に詳しい弁護士へ相談したいと考えています。
ご相談内容を見る限り、まず販売会社との関係では「契約不適合責任」が問題になります。これは、民法改正前に「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものです。
簡単にいうと、「買った物が、契約で約束されていた状態になっていない」という問題です。
したがって、最も重要なのは、「監視装置が壊れているか」だけではなく、そもそも売買契約上、販売会社が「正常に遠隔監視できる状態の発電所を引き渡す」と約束していたのか、という点です。
例えば、契約書、販売資料、メール等に「旧監視システム停止後、新しい遠隔監視装置へ切り替える」と記載されており、それを前提として購入したのであれば、「正常に遠隔監視できること」まで契約内容になっていたと主張できる可能性があります。
そうであれば、販売会社に対して、まず正常に使用できる状態にするよう「履行の追完」、つまり修理・復旧を求めることが考えられます。さらに、要件を満たせば代金減額、損害賠償、場合によっては解除も問題になります。
販売会社が「発電所の引渡しは終わっている」「現在はメンテナンス契約がない」と主張しているとのことですが、これは問題を分けて考える必要があります。
メンテナンス契約は、正常な状態で引き渡された設備が、その後故障した場合に誰が保守するのかという問題です。
これに対して今回の主張は、「そもそも販売会社が約束した監視装置への切替えが完成せず、最初から正常に監視できる状態で引き渡されていない」というものです。
そうであれば、「現在メンテナンス契約がない」というだけで販売会社の契約不適合責任が当然になくなるわけではありません。
なお、契約不適合責任には通知期間等の問題もありますので、いつ不具合を知り、いつ販売会社へ通知したのかも重要です。保存されているメールは、この点でも重要な証拠になります。
次に、「監視装置が動かなかったため売電収入が減った」という部分は、損害賠償の問題です。
法律上、本来契約どおりに履行されていれば得られたはずの利益を失った場合、その損失を「逸失利益」として請求できることがあります。
ただし、「監視装置が動かなかった」「売電額が下がった」という二つの事実だけでは、直ちに売電額の減少分全額を請求できるわけではありません。
ここでは因果関係の立証が非常に重要です。
具体的には、①いつ発電設備に異常が発生したのか、②監視装置が正常ならいつ異常を発見できたのか、③発見後どの程度で修理できたのか、④正常に発電していればどの程度の売電収入が得られたのか、という順番で考えます。過去の発電実績、同時期の日照条件、PCSのエラー記録などから、「監視できていればこれだけの損失を防げた」と具体化していくことになります。
PCSの通信不良に関する修理費も同様です。販売会社が正常な監視環境を整備しなかったことが原因で追加費用が必要になったのであれば、その費用を損害として請求できる可能性があります。ただし、PCS自体の経年劣化など別の原因であれば話は変わります。
また、保守会社との「FIT期間満了まで解約できない」という条項があるとしても、どのような場合でも絶対に解除できないという意味ではありません。保守会社自身が契約上の重要な義務を履行していないのであれば、債務不履行による解除が問題になります。通常は、まず相当期間を定めて履行を求め、それでも履行されない場合に解除を検討することになります。
ここで注意すべきなのは、販売会社と保守会社の責任を混同しないことです。それぞれ「誰が、誰に対して、何を約束したのか」を契約書から確認する必要があります。
本件では、契約書、販売時の資料、メール、保守契約書、支払記録、監視・エラー記録、売電実績を時系列に並べることが重要です。そのうえで「契約内容→契約違反→発生した損害→因果関係」という順番で整理すると、法律上の問題が非常に見えやすくなります。
弁護士費用は、請求金額や交渉・訴訟のどこまで依頼するか、各弁護士の報酬基準によって異なるため、現時点では具体的な金額を示すことは難しいと思います。
ご相談内容からすると、販売会社及び保守会社に対して法的責任を追及できる可能性はありますが、最終的には売買契約書、保守契約書、購入時の説明内容を確認する必要があります。
まず、販売会社が「旧監視システム停止後、新しい遠隔監視装置に切り替える」と具体的に約束していたにもかかわらず、長期間正常に稼働していないのであれば、発電所本体の引渡しが完了していたとしても、監視装置の切替義務について債務不履行を主張できる可能性があります。契約内容によっては契約不適合責任も問題となります。
復旧費用やPCS通信不良に関する修理費用についても、販売会社側の切替作業の未了や不備が原因で必要となったものであれば、損害として請求できる余地があります。
もっとも、売電損失については、監視装置が稼働していれば異常をいつ発見でき、修理によってどの程度の損失を防げたのかという因果関係の立証が重要です。過去の売電実績、障害発生時期、PCSのエラーログ、修理前後の発電量等を整理しておく必要があります。
保守会社との「FIT期間満了まで解約できない」とする契約については、その条項だけで直ちに無効とはいえません。ただし、保守会社自身に重要な契約違反や長期間の未対応がある場合には、債務不履行を理由とする解除を検討できます。
弁護士へ依頼する場合は、まず契約書やメール、売電資料を精査し、販売会社への復旧・損害賠償請求と、保守会社との契約解除を整理した上で通知・交渉を行うことになります。資料が相当程度保存されているとのことですので、一度まとめて専門の弁護士に確認してもらう価値はある事案だと思います。
鈴木先生
詳しくご回答いただき、ありがとうございます。
本件では、売買契約書の設備仕様に遠隔監視装置の明記はありませんが、和上社との覚書では、同社が設備の引渡義務を負い、売主としての債務履行に不備があった場合には売主と連帯して賠償する旨が定められています。
また、購入後、和上社が新しい遠隔監視装置を設置して正常稼働させることについて、ネイチャー社を介した複数のメールで具体的な説明を受けています。しかし、現在まで正常稼働していません。
先生のご回答を踏まえると、契約不適合だけでなく、この設置・正常稼働義務の債務不履行として整理する余地があると理解しました。大変参考になりました。
鈴木先生
損害と因果関係についても、具体的にご回答いただきありがとうございます。
売電損失を請求するには、単に売電額が低下したというだけでは足りず、異常の発生時期、正常な監視があれば発見できた時期、修理可能時期および正常時の想定売電額を資料で示す必要があることを理解しました。
契約書、監視装置に関するメール、PCSの通信不具合に関する記録、月別売電実績、点検報告書等は保存しています。これらを時系列に整理したうえで、正式な法律相談を検討したいと思います。
差し支えなければ、先生または先生の事務所で、本件について有料相談や受任可能性の検討をお願いすることはできますでしょうか。