離婚協議途中からの相手方との弁護士対応と財産分与の進め方について
【質問】相手方に弁護士がついた後の離婚協議の進め方について
夫とは離婚に合意し、離婚届は双方が記入済みです。届書は私が保管し、不受理申出も提出済みです。現在は同居中ですが、10月半ばに転居する予定です。財産分与・養育費などの条件が決まった後、公正証書を作成する予定であることは夫に伝えています。婚姻費用は合意書を交わし、支払いが始まっています。
現在は、双方が財産分与に関する資料を提出し、養育費について協議している途中です。夫からは収支一覧、口座資料、将来の退職金の支給予定額に関する資料が提出されました。私も収入・家計負担の一覧と、財産分与に関する希望・確認事項を提出しています。
夫の収入は私の約3倍ですが、過去約5年間、家族の生活費の多くを私が負担してきました。子どもたちや同居する夫の親の世話も、主に私が担ってきました。一方、夫の収支一覧と銀行口座の残高・推移は合わず、収入と申告された支出との差額について、使途や移動先を確認できていません。
そこで、全口座の存在と財産分与の基準日時点の残高、年間支出の根拠資料などを求めました。その質問への回答がないまま、夫から「弁護士に委任したので、弁護士から連絡が来る」とLINEがありました。現時点では弁護士からの連絡はなく、このまま協議になるのか、調停になるのかも分かりません。費用負担を考え、私は弁護士に依頼せず進めるつもりでした。
夫は以前、通帳残高について「使い過ぎた」旨をLINEで述べています。私は、まず収支の差額や現金引出しの使途を確認し、その後、把握している月々のパチンコへの出入りと浪費について夫に示すつもりでした。しかし、使途の確認に対する回答がないまま弁護士がついたため、まだそこまで進められていません。使い込みと考えている金額を明らかにし、過去約5年間の生活費負担も踏まえて、解決金を求めることを考えています。LINEや資料は保存しています。
お聞きしたいことは次の5点です。
1. 相手方弁護士から連絡が来たら、まず何を確認し、未回答の質問や資料提出の求めをどのような順序で伝えるとよいでしょうか。
2. 使途の確認が済んでいない現段階で、パチンコへの出入りなどの資料を相手方弁護士に示すべきでしょうか。それとも、先に収支や現金引出しについて回答を求める進め方がよいでしょうか。
3. 夫から退職金の支給予定額に関する資料は提出されています。現時点で夫の口座に現金が残っていない場合、退職金を財産分与の中でどう扱い、支払方法を協議できるでしょうか。
4. 収入差がある中で、私が長年負担してきた家族の生活費や、子ども・夫の親の世話は、財産分与や解決金の協議でどのように主張・整理できるでしょうか。
5. 相手方に弁護士がついていても、本人だけで協議を続けられるでしょうか。弁護士への依頼や調停を検討する目安も知りたいです。
夫との離婚協議を着実に進めてこられていることに敬意を表します。
1について;夫が依頼する弁護士としては、別居を基準時としその時点で現実に存在する財産の額をもって夫婦共有財産を算定するという、通常家庭裁判所が用いる方法で財産分与を進めようとする可能性があります。この方法を採ると過去の浪費や家計負担のアンバランスは慰謝料の当否で判断されるだけになってしまいます。これまでの夫婦での話し合いの経緯を弁護士にも説明した上で、返答及び資料を求めることになります。
2について;浪費の裏付けについては早期に提示するほうが良いです。先に回答を求めても弁護士から断られる可能性があります。
3について;手元不如意の場合には分割によって支払う形しか取れないこともあります。
4について;上記1で触れたとおり、家庭裁判所の財産分与に関する通常の考え方とは異なります。法的にいえば離婚原因ないし慰謝料発生原因の有無内容として整理されることになります。
5について;夫の弁護士がこれまでの夫婦間で話し合われてきた進め方を踏襲するか否かによって異なりますが、家庭裁判所の通常のやり方を提案してきた場合にはあなたも代理人弁護士を選任したほうが対応しやすいです。
長文にお目通しいただき、丁寧なご回答をありがとうございます。私の事情について追加で伺います。
【1.基準日と出金】
現在も同居中ですが、離婚合意後も給与口座から大きな出金が続いています。婚姻費用は合意・支払済みですが、子どもの特別費用は夫が折半、私は年収に応じた負担を求め、未合意です。
①離婚合意日を経済的協力関係の終了時点と主張するには、どの事実・資料が重要ですか。
②別居日が基準日となった場合、それまでの大きな出金はどう検討されますか。
【2.収支・浪費資料】
夫の年間収支表は支出の根拠が示されず、計算上は相当額が残るのに口座残高と合いません。提出した通帳写しも約5か月分のみです。根拠と差額の行き先を質問しましたが未回答です。貯蓄があると思っていましたが、アプリで給与口座を確認すると想定した残高はなく、確認した各月のATM現金引出し額は月給額を超えていました。夫は私がアプリを見られることを認識していないようです。他口座を含む財産全体は未確認です。協議前の約3か月、共有車の行動記録と写真で、休日に月約10日パチンコ店に長時間滞在したことも確認しました。使用額は不明です。私は出金の使途を確認してからこれを示し、終盤で解決金を求める予定でした。
③先生の「早期に提示」とは、使途の回答前に出金記録、滞在記録・写真、「使い過ぎた」とのLINEを相手方弁護士へ示す意味ですか。
④夫の申告額と通帳・アプリで確認した取引を分けて一覧にし、質問とともに送ればよいですか。原資料の写しも初回に添付すべきですか。
【3.離婚慰謝料・解決金】
約5年間、収入が少ない私が生活費の多くと子への対応を担いました。夫は仕事に行くように見せかけて休日にパチンコ店へ通い、子にも事実と異なる説明をしていました。3月末から7月に確認し離婚を決意しました。相談のない車の買替えも認めています。一方私は生活費が足りず自分の収入ボーナス分を当てていたため貯蓄はほぼありませんでした。
⑤一連の事情から裁判所に慰謝料が認められる可能性はありますか。不足する事実・証拠は何ですか。
⑥生活費負担と現金引出しを、財産分与・慰謝料・協議上の解決金にどう整理すればよいですか。
【4.行動記録】
⑦共有車の行動記録と写真を提示する前に、取得方法や証拠として注意する点はありますか。
1:相手方弁護士から連絡があれば、まず、今後は離婚条件全般について弁護士を窓口として協議するのかを確認するとよいでしょう。そのうえで、これまで未回答となっている事項を整理し、①全口座の開示、②財産分与の基準日時点の残高、③収支一覧と口座の動きが一致しない部分の説明、④多額の現金引出しの使途等について、項目ごとに回答を求めるのがよいと思います。
2:パチンコへの出入り等の資料を、現段階ですべて提示する必要まではないと思います。まずは、収入と支出の差額、預金残高の減少、現金引出し等について説明を求め、その回答が不十分又は客観的資料と整合しない場合に、パチンコ等の資料を示して具体的に確認していく方法が考えられます。もっとも、浪費があったからといって、その金額が当然に財産分与額へ加算されるわけではありません。いわゆる使い込みを主張する場合には、金額、時期、使途等を具体的に整理することが重要です。
3:将来の退職金も、婚姻期間中の勤務に対応する部分については、財産分与で考慮されることがあります。現在の預貯金が少なくても、協議により、退職金相当額を含めた財産分与額を定め、分割払いや退職金受領時の支払いとすることは可能です。将来払いとする場合には、支払時期や金額を明確にしておく必要があります。
4:ご自身が長年多くの生活費を負担してきたことや、家事・育児、夫の親の世話を主に担ってきたことは、婚姻生活における負担状況として主張してよい事情です。ただし、既に生活費として支出した金額の差額を当然に返してもらえるわけではなく、これらの事情だけで2分の1を超える財産分与や解決金が当然に認められるわけでもありません。したがって、生活費負担、家事・育児等への貢献、夫側の資産減少の問題は分けて整理したうえで、全体として解決内容を検討するのがよいでしょう。
5:相手方に弁護士が就いていても、ご本人だけで協議を続けることは可能です。もっとも、今回は、使途不明金、退職金、資料開示など複数の問題がありますので、実際に依頼するかどうかは別として、少なくとも一度、資料を持参して弁護士に相談することをお勧めいたします。また、任意の協議で資料開示や説明が進まない場合には、離婚調停を利用し、その中で財産分与や養育費等をまとめて協議することも検討してよいでしょう。
①について 同居継続中で事実上であれ、また、生活費の一部分であれ、経済的一体性は一定程度存在しているのが通常ですので、離婚合意日をもって基準時とすることの難易度は極めて高いと思います。
②について 大きな出金のうち合理性を欠くものについて、夫婦共有財産への戻入処理を求めていく場合もあります。ただ、実務上はあまり認められることは多くないです。
③について そのとおりです。そもそも夫の弁護士からは、「回答しない」という応答が来ることが予測されます。このため夫婦間で直接話し合われてきた文脈を弁護士にも早期に伝え、当該文脈に沿った解決を求め、その合理的根拠を示していく方向性をお勧めしました。
④について 原資料は弁護士から要求された後で構いません。
⑤について 主たる離婚原因が夫にあるとして慰謝料が認められる可能性はあると思います。証拠を現認しなければ過不足の判断はできませんが、夫の浪費と家計へのしわよせとの間の因果関係部分の裏付けがどの程度できているかがポイントと感じます。
⑥について 先の回答にお書きしたとおり、家庭裁判所実務では財産分与との関連はなく、慰謝料発生の有無程度(⑤参照)で判断されるに留まります。その前の協議段階では夫側に譲歩を迫る武器として機能することになります。
⑦について 夫の了解なく取得した証拠と思われますが、お二人で共有していた車両に取り付けたGPS記録であれば証拠として用いることに支障はありません。
詳細なご回答をいただき、ありがとうございました。
最後にひとつ、自宅と関連するローンの扱いについて伺います。
夫の提出した財産一覧では、住宅・太陽光・外壁工事のローンが「マイナス財産」に記載されています。土地は義母名義、建物は夫名義です。夫は「母親と、この家で生活して行こうと思っています」「私名義のローンは、そのまま引継ぎます」とLINEで述べています。私は転居予定で、自宅の取得は希望していません。
夫が今後ローンを返済することと、財産分与の計算でローンをどう扱うかは別の問題だと考えています。夫は、ローンを預貯金や退職金見込額などのプラス財産から差し引く意向なのか、明らかにしていません。
裁判所の判断となった場合、夫が取得し住み続ける建物の価値を夫側のプラス財産に計上したうえで、住宅・太陽光・外壁工事の各ローンはどう扱われますか。建物の価値を超えるローン残額まで、夫の預貯金や退職金見込額から差し引かれ、私への分与額が減る可能性はありますか。私は、その超過分を他の財産と相殺しない形を希望しています。どのような事実や資料をもとに主張すればよいでしょうか。
なお、夫の資料には、建物単体の売却査定が得られなかったとして、固定資産税の評価額が記載されています。建物の価値をどのように確認・評価すればよいかも教えてください。
ご理解のとおり、夫が今後ローンを支払っていくことと、そのローンを財産分与上どのように扱うかは別の問題です。もっとも、住宅がオーバーローンの場合、超過部分を当然に夫だけの負担として扱うわけではありません。
最近の裁判例では、住宅の評価額を上回る住宅ローンがあり、他に預貯金や退職金等がある場合、原則としてこれらを通算して財産分与額を算定する考え方が示されています。したがって、建物の時価が1000万円、関連ローンが1500万円であれば、500万円の超過部分が他のプラス財産から差し引かれる可能性はあります。
他方、その計算では当事者間の公平を害する場合、異なる処理をする余地もあります。今回、夫が自宅に住み続け、ローンを返済して最終的に建物を取得する一方、貴方は転居して取得を希望していないとのことですので、オーバーローン部分まで他の財産と全面的に通算するのは公平ではない、と主張することは考えられます。ただし、当然に認められるとは限りません。
各種ローンについては、住宅ローン、太陽光ローン、外壁工事ローンは一括ではなく、それぞれ借入目的、残高、建物価値との関係を確認した方がよいでしょう。建物については、固定資産税評価額がそのまま財産分与上の時価になるわけではなく、基本的には現在の時価を検討します。今回は土地が義母名義ですので、通常の土地建物一体の査定とは異なります。
まずは、土地・建物の登記事項証明書、各ローン契約書・残高証明書、固定資産評価証明書等を確認したうえで、夫側に、①建物の評価根拠、②各ローンの内容・残高、③それらを財産分与上どのように計算する考えなのかを具体的に確認するのがよいのではないかと思います。
度々の追加となり恐縮ですが、こちらを最後の質問として、慰謝料・解決金に関わる事情についてご相談させてください。
2021年4月頃、夫との口論で「大体お前、いくら稼いでるんだ!」と言われました。私は収入を理由に見下されたと感じました。(婚姻直後から家庭内でも私の役割を軽く扱われ、家事や育児への感謝を言葉にされたことはありません。)この口論をきっかけに夫婦関係が悪化し、家庭への協力も以前より得られなくなりました。
その頃から夫が夫の口座を管理するようになりましたが、私との収入格差を認識しながら、私に生活費を渡さなくなりました。夫は住宅ローン等を直接支払っていた一方、私が負担する食費や日用品費などの不足分は、私の収入やボーナスで補い続けていました。後に、夫がパチンコ店へ繰り返し通っていたことも分かりました。
また、子供2人が長年不登校だった際、学校からの呼び出しには私が仕事を休んで対応し、夫からは相談や話し合いへの協力を得られませんでした。下の子の高校入学金5万円の支払いをお願いした際には、夫が子に「落ちたら返せ」と言ったこともあります。
夫を見ると動悸がするようになり、その後約5年間、同じ家にいながら別々に生活してきました。メンタルクリニックを受診し、服薬治療も受けています。主治医からは、必要であれば診断書を作成できると言われています。こうした状況が続き、このままでは私と子どもの生活を維持することが難しいと考え、離婚を決意しました。
これまでお伝えした浪費の問題に加え、生活費負担の経緯、夫の言動、長期間の家事・育児への非協力、私の症状や治療歴を併せて考えた場合、
①裁判で離婚に伴う慰謝料が認められる可能性はありますか。
②協議で解決金を求める理由としては、どのように整理できますか。
また、夫の行為と精神的苦痛・離婚との関係を説明するために必要な資料や、診断書について確認しておくべき点を教えていただけますと幸いです。
重ねての質問となり恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。