不同意性交等の被害届対応、示談と不起訴意見書の優先度は?
不同意性交等の被害届を提出された件について、
【① 事件の発生時期】
本件は、令和7年9月に発生した出来事です。
【② Aさんとの関係】
私は世話人、Aさんは利用者という関係でした。
私は、世話人と利用者という立場であるため、Aさんと性的な関係を持つことはできないと考えていました。
【③ ホテルへ行った経緯】
Aさんからホテルへ誘われました。
当時、Aさんから私生活について必要以上に干渉されることがあり、私が拒否したり否定したりすると、Aさんが怒ることもありました。
そのため私は、
「誘いを強く断ったらAさんが激昂するのではないか」
「会社に事実と異なる報告をされ、仕事を失うのではないか」
という不安や心理的な圧迫感があり、強く断り切れないままホテルへ同行しました。
【④ ホテル内での状況】
ホテル内では、Aさんとは一定の距離を保っていました。
Aさんの彼氏についての相談や雑談などをしており、私はAさんに対して、世話人と利用者という立場であるため性行為はできないと伝えました。
また、私は以前からEDの症状があり、そのことを示す診断書も提出済みです。
その後、Aさんは怒った様子になり、話さなくなったうえ、「帰って」と言いました。
当時、私は夜勤明けで疲労もあり、その後、早朝にホテルを出て、自転車で帰宅しました。
なお、私はホテル内で性的行為をしていないと認識しています。
【⑤ 令和7年12月のLINEについて】
AさんからLINEが届き、
・「お前みたいなのは早く会社辞めろ」
・「仕事休みすぎ」
など、退職を求める内容や仕事に関する非難のメッセージが送られてきました。
このLINEのやり取りについても、資料として提出済みです。
【⑥ 令和8年8月以降の状況】
令和8年8月、警察からAさんが私に対して「不同意性交等」の被害届を提出したとの連絡を受けました。
その後、警察署で事情聴取を受け、私はホテル内で性的行為をしていないことを説明しました。
現在、以下の資料を警察に提出済みです。
・EDに関する診断書
・当時が夜勤明けであったことを示す資料
・AさんとのLINEのやり取り
以上が現在までの経緯です。
今後の対応について、Aさんとの示談を早期に進めることと、不起訴を求める意見書を提出することのどちらを優先すべきか、また、両方の対応を検討すべきかについて、ご相談させていただきたいと考えております。
私としては、事実と異なる内容での被害届であると考えており、できる限り不起訴となるよう適切に対応したいと考えております。
現時点では、示談を急ぐよりも、まず「性的行為自体がなかった」というご本人の主張に沿って、嫌疑不十分による不起訴を求めるための証拠整理と意見書の提出を優先するのがよいと考えます。
特に、ホテルに同行した経緯、ホテル内で性行為を拒絶した際の具体的なやり取り、退室までの状況、被害届提出までの経過、令和7年12月のLINEなどを時系列で整理し、ご本人の説明が客観的事情と整合していることを示していくことが重要です。
EDの診断書についても、ご本人の説明を補強する一事情にはなりますが、それだけで性的行為が不可能であったことを直接証明するものではありませんので、他の事情と併せて主張する必要があります。
他方、示談については、否認事件だから絶対にできないというものではありません。ただし、犯罪事実を認めていないにもかかわらず安易に謝罪や金銭の支払いを申し入れると、ご本人の主張との整合性が問題となる可能性があります。
したがって、まずは弁護士において証拠関係を確認し、不起訴意見書の準備を進めた上で、捜査の進行状況や相手方の供述内容等を踏まえて、示談を打診するかどうかを慎重に判断するのが適切でしょう。
ご自身が性交渉を行っていないという認識であれば,示談という選択肢は基本的には取られない方が良いかと思われます。示談は犯罪行為があった前提で和解をすることを意味しますので,ご自身の認識と乖離した場所で着地することとなってしまいます。
性交渉を行っていないということであれば,不起訴を求めて証拠の整理提出,意見書の提出等を行い,不起訴処分の獲得に向けて動く方が良いでしょう。
事件が発生したのは昨年9月で、今年8月に被害届が提出されたと説明を受け、その後、警察で事情聴取を受けました。
警察の事情聴取の際、任意でDNA、指紋、顔写真を採取・撮影され、警察官と同行で自宅の写真も撮られました。
ホテルの部屋の詳しい状況については分からないと言われ、DNAや指紋などの客観的な証拠が見つかったという説明もありませんでした。
DNAや指紋などの物的証拠が確認されなかった場合、不起訴になる可能性は高くなるのでしょうか。
また、被害者には障害があると聞いていますが、具体的にどのような障害なのかについては、会社や本人から「個人情報に当たるため伝えられない」と言われました。
このような場合、被害者の障害の内容が捜査や処分に影響することはあるのでしょうか。
DNAや指紋などの物的証拠が確認されていない場合、それは不起訴方向の事情の一つにはなりますが、それだけで不起訴の可能性が高いとは断定できません。本件では事件発生から被害届提出まで約11か月が経過しているため、ホテル室内から当時のDNAや指紋を採取すること自体が困難である可能性があります。そのため、被害者の供述内容やその信用性、事件前後のLINE、防犯カメラ、ホテルの利用記録、位置情報、事件直後の相談状況などを総合して判断されます。
また、被害者に障害があることは、不同意性交等罪などの成否に影響する可能性があります。刑法上、心身の障害によって「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」に乗じて性交等をした場合には、犯罪が成立し得ます。ただし、障害があるだけで直ちに同意能力が否定されるわけではありません。障害の種類・程度、当時の状態、本人が通常どの程度意思表示できたのか、被疑者が障害やその状態をどの程度認識していたのか等が重要です。
したがって、本件では物的証拠の有無だけでなく、被害者供述と客観的資料との整合性、障害の具体的内容、当時のやり取り等を確認した上で、不起訴の見通しを検討する必要があります。
北里先生
長文でのご回答、誠にありがとうございます。
一点お伺いしたいのですが、不起訴意見書を提出した場合、提出しない場合と比較して、不起訴となる可能性が高くなるのでしょうか。
また、万が一起訴された場合、弁護士を通じて相手方と示談をすることは可能でしょうか。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
北里弁護士様
何度もメッセージ申し訳ございません。
検察官からの事情聴取がないまま、不起訴で終わったケースについて、これまでにご担当された事例はございますでしょうか?
もしあった場合、どのようなケースでしょうか?
宜しくお願いします
不起訴意見書については、提出したから必ず不起訴になるというものではありませんが、弁護人側から事実関係や有利な事情、証拠関係、処分に関する意見を整理して検察官に伝えることになりますので、何も提出しない場合と比較すれば、不起訴処分に向けてプラスに働く可能性はあると考えています。
特に、否認事件であれば嫌疑が十分でないことを具体的に指摘したり、認めている事件であれば示談の成立、反省、再犯防止策などを整理して伝えることに意味があります。ただし、最終的な処分は検察官が証拠関係等を踏まえて判断するため、不起訴の確率を具体的な数字で申し上げることはできません。
また、仮に起訴された場合でも、弁護士を通じて被害者の方と示談交渉を行うことは可能です。当然、起訴後であっても示談成立は量刑上重要な事情になりますので、状況に応じて進めることになります。
ご質問の「検察官から事情聴取を受けないまま不起訴となったケース」についても、これまで複数経験しております。
例えば、公然わいせつ事件で、本人が一貫して否認しており、被害者との示談を行わないまま不起訴となった事案があります。また、暴行事件では、弁護人を通じて被害者との示談を成立させ、その後、検察官による本人の取調べがないまま不起訴となった事案もあります。
もっとも、事件ごとに証拠関係や被害者の意向、前科前歴等が異なりますので、過去の事例と同じ結果になることを保証できるものではありません。その点はご理解いただければと思います。
長文でのご回答、誠にありがとうございます。
警察の事情聴取の際には、DNAや指紋が検出されたとは言われていませんでした。
今後、検察官から事情聴取を受けることになった場合、その際に初めてDNAや指紋が検出されていることを伝えられる可能性はあるのでしょうか。
事件から約1年が経過しているため、そのような証拠が新たに出てこないことを願っております。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご教示いただけますと幸いです。
警察での事情聴取の際にDNAや指紋について何も言われていなかったとしても、今後、検察官の取調べで初めてそのような証拠について告げられる可能性はあります。
捜査機関には、取調べの段階で保有している証拠をすべて被疑者に開示しなければならないというルールはありません。そのため、警察が既に鑑定結果を把握していてもあえて告げていなかった場合や、その後に鑑定・照合結果が判明する場合も考えられます。