不貞慰謝料訴訟での和解選択と性交渉認定の可能性は?

現在、不貞慰謝料請求訴訟の被告です。
相手方の配偶者とは別居前に好意を持ち合っており、キスをしたことは認めていますが、性交渉については一貫して否認しています。

相手方からはLINE等のやり取りや複数の間接証拠が提出されていますが、性交渉そのものを直接示す証拠はありません。

また、相手方夫婦については別居以前から夫婦関係が悪化していた事情がありますが、裁判所からは現段階では婚姻歴の長さから婚姻関係の破綻を認めることには慎重な心証を示されています。一方、事実関係については尋問をしなければ判断できないとの趣旨の話もされています。

現在、裁判所から80万程度の金額で和解案が提示されています。

代理人からは、尋問によって金額が下がる可能性もある一方、判決やその後の控訴まで含めると結果の予測は難しいとの説明を受けています。

私としては性交渉を否認しているため判決まで争うことも考えていますが、尋問による精神的負担や、現在の和解案より高額な判決になるリスクも考えて迷っています。

一般論・実務経験の範囲で結構ですので、
①直接証拠がなく、キスや親密なやり取り、その他の間接証拠がある場合、性交渉まで認定されることはどの程度あるのでしょうか。
②性交渉が認定されなかった場合でも慰謝料が認められることはありますか。
③このようなケースで、一定額で和解するか尋問・判決まで進むかを判断する際、どの点を重視すべきでしょうか。

和解に応じるべきか、それとも判決まで争うべきか、非常に悩ましい状況にあることとお察しいたします。

まず、不貞慰謝料の裁判では、性交渉そのものを撮影した写真などの直接的な証拠がなくても、LINE等のやり取り、二人で会っていた状況、身体的な接触その他の事情を総合して、性交渉の有無が判断されることがあります。
そのため、「直接証拠がないから性交渉は認定されない」とは必ずしも言い切れません。一方で、どの程度の証拠があれば認定されるかは事案によって異なりますので、実際のLINEの内容やこれまで提出された証拠を確認する必要があります。

また、仮に性交渉までは認定されなかったとしても、交際の態様によっては、それだけで慰謝料請求が認められる場合もあります。もっとも、その場合に不法行為が成立するか、慰謝料がいくらになるかについても、婚姻関係の状況や交際の内容などによって大きく変わります。

今回、裁判所から80万円程度の和解案が示されているのであれば、判決まで進んだ場合の金額との比較だけでなく、証拠関係や、今後の本人尋問の内容、性交渉について裁判所がどのような心証を持っているのか、婚姻関係が当時どのような状態だったのかなども踏まえて判断する必要があります。

①:性交渉を直接撮影した写真等がなくても、複数の間接証拠を総合して性交渉があったと認定されることはあり得ます。例えば、宿泊・深夜の滞在、旅行、性的な内容を含むLINE、行動履歴、当事者の説明の不自然さや変遷などが組み合わされて認定されることがあります。
②:性交渉が認定されなくても、慰謝料が認められる可能性はあります。 キス、抱擁その他の性的接触や親密な交際が、婚姻共同生活の平穏を侵害する程度に至っている場合には、不法行為と評価した裁判例もあります。
③:重要なのは、原告が提出している間接証拠を裁判官がどのように評価する可能性があるかです。尋問では、LINE等の客観的証拠と供述が整合するか、説明に不自然な点がないかなどが見られますので、「性交渉はなかった」という供述をどこまで信用してもらえるかを代理人と具体的に検討する必要があります。

また、婚姻関係の破綻していたか否かについても重要だと思われます。最高裁令和8年6月5日判決では、実際に婚姻関係が破綻していた場合だけでなく、第三者が「既に破綻している」と信じ、そのように信じたことに相当な理由があれば、不貞慰謝料について過失が否定される余地があることが示されています。 ただし、単に配偶者から「夫婦仲が悪い」と聞いていただけで足りるとは限らず、客観的な事情が必要だと考えられます。

現在80万円程度の和解案が出ていることは、必ずしも裁判所が最終的に80万円の判決をするという意味ではありません。ただ、裁判所自身が「尋問をしなければ事実認定できない」としているのであれば、現状では双方に一定のリスクがあると見ている可能性があります。和解するか判決まで争うかは、性交渉を推認させる間接証拠がどの程度強いか、尋問で一貫した説明ができるか、婚姻関係の破綻又は破綻していると信じた相当の理由をどこまで立証できるか、80万円を支払って紛争を終わらせる利益と、請求棄却又は減額を目指す利益、逆に判決で80万円を超える金額になるリスクや控訴まで続く負担などを比較して判断することになるでしょう。