プロ野球ゲームのもじり名使用、パブリシティ権の影響は?

【状況】

現在、日本のプロ野球史を題材にしたロースター編成・シーズンシミュレーション型のブラウザゲームを開発しています。ゲームはまだ公開していません。将来は無料で公開し、一般的なウェブ広告による収益化を予定しています。

実在選手の本名は使用せず、名前の文字や音を一部変更した「もじり名」を使用する予定です。例えば、「イチロー」を「イロチ」のように変更する方式です。ただし、野球に詳しい方であれば、もじり名、守備位置、能力等から元になった選手を推測できる可能性があります。

ゲーム内では、もじり名、守備位置、独自に算出したOVR、打撃・長打・守備等のS/A/B/C評価を表示します。歴史上の成績は能力値を作る際の参考にしますが、実際の打率、本塁打、防御率、通算記録等は表示しません。

実在選手の写真、顔、略歴、愛称、実際のユニフォームや背番号も使用しません。球団名、ロゴ、チームカラー等についても、実在球団とは異なる架空のものを使用します。広告やSNS上の宣伝でも、実在選手の本名や写真は使用しない予定です。

【質問したいこと】

実名、写真、略歴、実成績等を使用しない場合でも、野球ファンが元の選手を推測できる「もじり名」と独自の能力値をゲーム内で使用することは、実在選手のパブリシティ権を侵害する可能性があるでしょうか?

また、ゲーム内に一般的なウェブ広告を掲載して収益を得ることは、その判断にどの程度影響するでしょうか?

公開前に特に変更または確認しておくべき点がありましたら、可能な範囲でご教示いただけますと幸いです。

質問のケースは、各裁判例やパブリシティ権の法理に照らすと、侵害リスクが完全にゼロとは言い切れないものの、実名・写真・実成績等を使用しないなどの工夫により、リスクを相当程度低減できる設計になっているかと思います。
ただし、「野球ファンであれば元の選手を推測できる」という点は、裁判で争われた場合に「専ら顧客吸引力の利用を目的とする」と判断される余地を残すため、一定の注意が必要です。

また、広告収益の有無は、侵害判断に一定の影響を与える可能性がありますが、決定的要因ではありません。
パブリシティ権侵害の成否は、主に「専ら顧客吸引力の利用を目的とするか」という点で判断されます。広告収益があることは「商業的目的」を強く示す要素ですが、それだけで直ちに侵害となるわけではありません。完全無償・非営利であれば「表現の自由」「創作物」としての側面が強く評価される可能性があります。一方、広告収益がある場合は「商業利用」としての色彩が強まり、リスクが高まる可能性があります。

公開前に変更・確認しておく事項については、公開の場でアドバイスするにも限界があるかと思うので、資料等を持参の上、弁護士に相談されることも一つかと存じます。

「もじり名」を用いれば当然に適法になるわけではありませんが、野球ファンが元の選手を推測できることや、ウェブ広告による収益があることだけで、直ちにパブリシティ権侵害となるわけでもありません。

最高裁は、氏名・肖像等の利用が、商品を差別化するために付されるなど、専ら本人の顧客吸引力を利用する目的といえる場合に、パブリシティ権侵害となり得るとしています。商業的な利用一般を侵害とする基準ではありません。

本件では、次の二段階を分けて考える必要があります。
まず、もじり名、守備位置、能力値、年代設定等の組合せが、特定の選手を示す識別情報として機能しているかです。
次に、その情報がゲーム内容を構成するために利用されているのか、それとも実質的に選手の人気・知名度によってゲームを差別化するために利用されているのかを検討します。元の選手を推測できることは重要な事情ですが、それだけで「専ら顧客吸引力を利用している」との結論にはなりません。

ご相談の設計では、実名、写真、略歴、実成績、背番号、実在球団名等を使用せず、能力値も独自に算出するとのことですから、リスクを低くする方向の事情はあります。また、選手に対応する情報は、ロースター編成やシーズンシミュレーションというゲーム内容を成立させる要素でもあり、著名人の氏名や肖像を単に広告や商品に付す場合と同じ評価になるとは限りません。

他方、各キャラクターが実在選手と実質的に一対一で対応し、「往年の名選手を再現して遊べること」がゲームの中心的な商品価値となっている場合には、選手の顧客吸引力を利用してゲームを差別化していると評価される可能性が残ります。

広告収益の有無は一事情にとどまり、決定的な基準ではありません。無料公開であっても当然に適法となるわけではなく、反対に、広告収益があるだけで侵害になるわけでもありません。ゲーム本体に加え、タイトル、説明文、画面表示、告知方法等を含む利用態様全体が問題になります。

現在の説明だけから侵害の有無を断定することは困難です。ただし、企画の特徴を残しながら、キャラクター設計、表示内容及び告知方法を調整してリスクを下げる余地はあります。具体的な調整方法は各要素の組合せによって異なるため、公開前にキャラクター一覧、実際の画面及び告知案を弁護士に示し、個別に確認されることをお勧めします。