退職後の競業避止誓約書に関して前職より入社取り消しを求められています

【状況】
2か月ほど前に前職を退職しました。退職手続きの際に競業避止誓約書への署名を求められており、条項に「退職後2年間、同種の企業へ就職すること又は同種の事業を始めない」旨の記載があります。代償措置は一切なく、制限の地域的範囲および「同種の企業」の定義も誓約書上に明示されていません。
その後、外資系企業より内定を受け、近々入社を予定しています。当該企業には面接段階で競業避止規定の存在を開示しており、その上でオファーレターを受領しています。
入社直前に前職上長より「誓約内容に反する可能性が高く深刻な事案である。入社を取りやめるよう強く求める。従わない場合は法的手続きに発展する可能性がある」旨のメールが届きました。
【補足事実】
①前職在職中(退職の約1年前)に海外の同僚が同入社予定企業の海外拠点へ転職した実績があり、前職より同様の法的指摘がなされた事実は確認されていません。
②入社予定先での業務は既存顧客2〜10社のアカウント深耕であり、前職での新規顧客開拓とは性質が異なります。
【ご相談点】
①誓約書第6条(退職後2年・同種企業禁止・代償措置なし・地域無制限・定義不明確)は有効と判断される可能性はあるでしょうか。憲法第22条の職業選択の自由との関係もふまえてご見解をいただけますと幸いです。
②先方から早急にメールの返信を求められており、返信を書く際に法的リスクや修正すべき点があればご指摘ください。

退職後の競業避止義務は、誓約書に署名していても常に有効になるわけではありません。
有効性は、会社側に保護すべき正当な利益があるか、従業員の地位・職務内容、制限期間、地域的範囲、禁止される業務・職種の範囲、代償措置の有無などを総合考慮して判断されます。ご記載の限りでは、「退職後2年間」「同種企業への就職禁止」「代償措置なし」「地域制限なし」「同種企業の定義も不明確」という内容ですので、かなり広範な制限に見え、有効性には相当程度争う余地があると思います。特に、一般従業員について、転職先での職務内容を問わず同種企業への就職を一律に禁止するような条項であれば、職業選択の自由を不当に制限するものとして問題になり得ます。もっとも、実際の判断は、前職での地位、営業秘密・重要顧客情報・価格情報等へのアクセスの有無、転職先でそれらを利用する危険性、前職と転職先の競合性、転職先での具体的業務内容によって変わります。入社予定先での業務が前職と異なることや、前職の顧客を奪取する内容ではないことは、有利な事情になり得ます。
返信については、感情的に反論したり「誓約書は無効」と断定したりするよりも、まずは、前職側がどの条項に基づき、どの点を競業避止義務違反と考えているのか、具体的な理由を確認する内容にとどめるのが無難です。また、前職の営業秘密・顧客情報等を持ち出しておらず、今後も使用する意思がないこと、転職先にも競業避止規定の存在を開示していること、入社後の職務内容が前職と異なることなどを、必要に応じて冷静に伝えることが考えられます。一方で、入社を取りやめることを約束したり、前職側の主張を認めるような表現は避けるべきででしょう。

ご返信ありがとうございます。ご助言いただいた方針を踏まえ、返信メールを以下の内容で作成しました。①予定通り入社する意思を明示、②営業秘密・顧客情報等を持ち出しておらず今後も使用しない旨、③入社先に競業避止規定の存在を面接時に開示済みでオファーを受領している旨、④入社先での職務が既存顧客のアカウント深耕であり前職の新規顧客開拓とは異なる旨、⑤在職中に同企業へ転職した前例があるにもかかわらず前職から同様の指摘がなかった旨、⑥その他誓約書条項内の機密保持義務は遵守している旨、を記載しています。また、末尾に相手方へ具体的な違反根拠の提示を求める一文を加えました。この文面の方向性はご助言の趣旨に沿っているでしょうか。
なお、追加でお伝えしたい事実があります。入社予定先はデータベース事業を営む企業であり、業容の分類としては前職と同種と見なされる可能性があります。また、顧客層については同業界という共通点から60〜70%程度の重なりがあると見込まれます。一方で、具体的に提供するデータの種類および社内の利用部門が異なることもあり、共通顧客から「補完的なデータベース」と評された経験もあります。これらを踏まえ、誓約書の有効性評価および返信メールの方針に追加変更すべき点があればご指摘いただけますでしょうか。

公開掲示板上の限られた事情のみで、返信文面の適否や法的リスクについて確実な判断をすることはできません。実際の誓約書、前職での立場・業務内容、アクセスしていた情報、転職先での職務内容、競合関係等を確認しなければ、責任をもった判断は難しいことをご理解いただければと思います。

その前提で申し上げると、ご記載の返信方針自体は、大きく不自然ではないと思います。営業秘密・顧客情報等を持ち出しておらず、今後も使用しないこと、転職先での職務が前職と異なること、前職側に具体的な違反根拠の提示を求めることは、基本的な方向性として考えられます。もっとも、入社予定先が前職と同種事業と見られる可能性があり、顧客層にも重なりがある点は、前職側から競業性を主張される材料になり得ます。一方で、提供するデータの種類や利用部門が異なり、補完的サービスといえる事情があれば、違反を否定する方向の事情にもなり得ます。

返信する場合は、前職側の主張を認める表現や、不要に詳細な顧客情報・業務情報を開示する表現は避けた方がよいと思います。入社を予定どおり進めるか、どのような返信をするかは個別判断ですので、誓約書や前職側メール等を持参し、費用がかかるとしても、入社前に最寄りの法律事務所・弁護士会などに個別相談された方がよいかもしれません。

当方回答は以上となりますが、参考になれば幸いです。