不貞慰謝料の示談書について

既婚者との交際が発覚し、配偶者側から慰謝料請求を受けています。
内容証明には、離婚の有無、不貞回数、具体的な証拠内容等の記載はありませんでした。
相手方は弁護士を依頼しており、慰謝料請求を受けたため100万から80万まで減額交渉を行ったところ、一定額での解決を前提とした合意書案が提示されました。
不貞の事実自体は争っていませんが、合意書の内容について確認したい点があります。

【質問①】
示談書や合意書を作成する際、将来的な紛争や訴訟を見据えて、一方当事者に有利となるような条項や解釈の余地を残すことは実務上あるのでしょうか。
また、一般的に注意すべき条項があれば教えてください。

【質問②】
合意書に「共同不法行為者に対する求償権を放棄する」旨の条項があります。
私は、共同不法行為者との内部的な負担関係は別問題であると考えており、求償権放棄には応じたくありません。

そのため、
「求償権放棄条項を削除する、又は当事者間の内部的な法律関係を妨げない内容へ修正する」という提案を考えています。
このような修正依頼は法的に不自然でしょうか。
また、一般的に相手方が応じる可能性はあるのでしょうか。

【質問③】
合意書には、相手方配偶者および共同不法行為者との接触を禁止する条項があります。
将来的に法的権利の行使や防御のために必要な場合を想定し、
「法的権利の行使又は防御のために必要な場合を除く」
という例外規定の追加を求めたいと考えています。
この場合、将来的な求償請求や通知等は接触禁止条項違反にはならないと考えてよいのでしょうか。

【質問④】
示談金の支払期限が定められています。
現在、合意書の修正交渉を検討していますが、交渉継続中に支払期限が到来した場合、一般的にはどのような扱いになるのでしょうか。

よろしくお願いいたします。

ご質問に回答いたします。

質問1
提案された合意書の内容によりますので、一般的な注意すべき条項についての回答は難しいです。
少なくとも、清算条項が記載されているかはご確認いただくといいですが。
相手方はできる限り自身の希望にそうような合意書案を作成することになりますので(法的な問題がないことを前提としますが)、
不安な内容があれば、精査した上で応じるかどうかをご判断いただくといいですね。

質問2
不自然ではありません。
求償権を放棄しない前提であれば、100万円程度、
放棄する前提であれば50万円から80万円程度が慰謝料としての相場観かと思います。
(求償権放棄を求めているということは、先方は離婚していない前提での交渉と思われますので、
上記は、相手が離婚しない場合の相場です。)
相手が応じるかは相手次第ではありますが、求償権放棄の有無と慰謝料額は連動することは、相手弁護士も当然理解しているでしょうから、
ご自身も、連動させて交渉されるといいと思います。

質問3
ご記載のとおり考えていいと思いますが、
不安であれば、より具体的に、
「求償権に基づく請求のための接触」等と明記してもいいかと思います。
なお、求償権に基づく請求を改めて行うよりも、
求償権放棄を前提として、慰謝料額を減額する方が、手間と時間はかかりませんので、その点を含めて、合意内容を精査されるといいでしょう。
(もちろん、不貞相手との関係性やお気持ちを優先して求償権を放棄しないという判断もあり得ます。)

質問4
記載されている支払期限は、すぐに合意できた場合を想定したものですので、
最終的には、合意の時期によって修正することになります。
そのことだけ覚えておいていただければ、
とりあえずの支払期限程度にお考えになれば問題ないですよ。

ご質問に対する回答は以上ですが、可能であれば、ご依頼になるかは別にして、お近くの弁護士に直接相談されて、今後の対応についてアドバイスを求めることをおすすめいたします。
ご参考にしていただけますと幸いです。

質問①:示談書・合意書は、後日の紛争を防ぐために作成するものですが、実際には、提示する側に有利な条項が含まれていることはあります。不貞慰謝料の合意書では、特に、清算条項、口外禁止条項、接触禁止条項、違約金条項、求償権放棄条項、期限の利益喪失条項などに注意が必要です。

質問②:求償権放棄については、不貞慰謝料の示談で比較的よく問題になります。共同不法行為者である既婚者本人との内部的な負担関係は、配偶者に対する慰謝料支払とは別の問題です。そのため、求償権を放棄したくないのであれば、削除や修正を求めること自体は不自然ではありません。もっとも、請求者側としては、自分の配偶者に対して後日求償請求がされることを避けたい、又は紛争を完全に終わらせたいという理由から、求償権放棄を求めることが多いです。そのため、相手方が応じるかどうかは、示談金額、離婚の有無、相手方夫婦の関係、早期解決の必要性などによります。求償権を留保するのであれば、相手方が示談金額の増額を求めてくる可能性もあります。

質問③:接触禁止条項については、広すぎる文言になっていると、将来、求償請求や法的手続に必要な通知を行う場合にも問題になるおそれがあります。そのため、「法的権利の行使又は防御のために必要な場合を除く」といった例外を設けることを求めること自体は、不自然ではありません。ただし、そのような例外を入れたとしても、どのような連絡でも許されるわけではありません。求償請求や法的手続に必要な連絡をする場合でも、弁護士を通じる、書面で必要最小限にする、私的・感情的な連絡をしない、といった配慮が必要です。例外規定を入れる場合は、後日解釈に争いが生じないよう、できるだけ明確な文言にしておくべきです。

質問④:支払期限については、合意成立前であれば、合意書案に記載された支払期限が当然に法的効力を持つわけではありません。もっとも、交渉中に相手方が指定した期限を徒過すると、相手方が「示談に応じる意思がない」と判断し、訴訟提起等に進む可能性はあります。したがって、修正交渉をする場合には、単に支払わずに期限を過ぎるのではなく、「合意書の内容確認・修正協議中であるため、支払期限についても合意書確定後の日付に調整してほしい」などと明確に伝えておくことが望ましいです。