飲食店賃料2倍増額の請求、法的に対応すべき方法は?

23年間、飲食店を経営している個人事業主です。去年の8月にオーナーが変わり(それまでにも何回かオーナーが変わっています。)借りているテナントの家賃の増額のお願いがきました。近隣相場と比較して著しく借りている物件が安いというのが主な理由です。
現賃料から2倍の額を要求してきました。
正直、多少の増額なら(最大で10%)こちらも受け入れる姿勢はあるのですが、相手は2倍の額からの減額は考えていないようです。何度かメールでやり取りをしましたが、結局話しは平行線のままに終わりました。
その間、私の方からは2倍の額の大幅な賃料増額には応じられないという事だけは伝えています。
そうしましたら、家賃増額請求の内容証明が送られてきました。
こちらとしても2倍の額の賃料増額はどう考えても常識的ではないと思っています。
この場合、これからどのように対応していけばよろしいのでしょうか?

賃料2倍の増額請求ということですと、かなり大きな話であると思います。色々な対応方法があると思いますので、一度お近くの法律事務所にて相談されてみることをお勧め致します。

現賃料からいきなり2倍に増額は確かに高いと思います。
これまで継続して賃貸借契約が続いていたのであれば、増額幅には一定の限度があると考えられています。
増額については、まずは合意しなければ一方的に増額とはなりません。
賃貸人があくまでも増額したいと思えば、裁判所に申立てが必要です。
それも前提にしながら交渉をするなどの対応を考えるべきと思われます。
弁護士への相談をお勧めします。

まず、2倍の家賃を今すぐ支払う必要はないと思います。
借地借家法32条により、話し合いで合意していない以上、「あなたが相当と認める額(=従来の家賃)」を払い続ければ、法的に滞納にはならず、相手は一方的に契約解除できないので、立ち退く必要もありません。

今後の具体的対応
①従来の家賃を支払い続ける
これまで通りの金額を、期日通りに振り込み続けてください。
②受取拒否をされたら「供託(きょうたく)」
オーナーが「増額分がないなら受け取らない」と返金してきたり、口座を解約したりした場合は、速やかに法務局で「供託」を行ってください。
③文書で「相当額(現行賃料)」を支払う旨を回答する。内容証明などで「増額には合理的理由がないため拒否する。

今後の流れと注意点
①調停
話し合いがつかない場合、裁判所での解決となりますが、近隣相場や建物の老朽化等が考慮されます。いきなり2倍の請求がそのまま認められることは、まずないように思います。
②調停が合意に至らず訴訟
利息のリスク
裁判で「増額が正当」と判決が出た場合、遡って差額分に「年1割」の利息を付けて支払う必要があります。

助言
オーナーチェンジにつき、嫌がらせで追い出すための戦略のようにも思います。
最寄りの弁護士に直接相談した方が良い事案です。

借地借家法第32条1項の要件を充足する場合には、賃貸人からの賃料増額請求も認められますが、いきなりの増額請求が借地借家法第32条1項の要件をみたすのか疑義があるところです(仮に増額の要件をみたす場合にも、継続賃料の場合、2倍もの増額がいきなり認められるとは思われず、裁判所で争うことは十分可能だと思われます)。
 賃料の増額について当事者間の協議が整わない場合には、借地借家法第32条2項本文に基づき、現状の賃料を支払っておく対応をしておくことが考えられます(「建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。」)。
 借りているテナント物件の賃貸借契約書がお手もとにあるかと思いますので、その契約書(更新時の契約書がある場合には、その契約書も)を持参の上、より詳しくは、お住まいの地域の弁護士に直接相談なさってみてください。

【参考】借地借家法
(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 (略)

今回の家賃増額請求については、現時点で直ちに要求どおりの金額を支払う義務はありません。賃料の増減は借地借家法32条に基づき、周辺相場の変動や経済事情、固定資産税の増減、従前の賃料が不相当になったかどうか等を総合的に考慮して判断されます。仮に近隣相場より低いと評価される場合でも、長年営業を継続している借主に対し、一方的に賃料を2倍にするような急激な増額がそのまま認められることは、実務上考えにくいです。

内容証明が届いた場合でも、重要なのは、増額には同意しない意思を明確に示すこと(ただし協議には応じる姿勢を示すこと)、従来どおり現行賃料を支払い続け、滞納をしないことです。これにより、立場を不利にせず交渉や法的手続に進むことができます。

仮に、今後、相手方が調停や訴訟を提起した場合でも、裁判所は適正賃料を客観的に算定します。23年間にわたる営業実績や、急激な賃料増額が事業継続に与える影響は、借主側に有利な事情として考慮されるものと考えられます。