業務上横領の被害者です

私が100%株主の会社の元社長が約3年前に、会社から2億円を横領しました。彼は警察に逮捕され昨年末に起訴され起訴後も勾留されています。被疑事実を否認しているようで当然に会社側に示談の話しもありません。刑事裁判と別に民事で損害賠償請求しようと思っています。民事訴訟をどのようなタイミングで(刑事裁判で現れた裁判資料を元に今すぐにでも提訴すべきとか、刑事裁判の第一審が終わってからの方がいいとか)、どんな準備をしたらいいかなど、アドバイスいただけたらと思います。

業務上横領の刑事・民事事件の取扱経験があります。

被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、不法行為による損害賠償請求権が時効により消滅します。
時効の観点、証拠散逸を防ぐ観点からは、早めに訴訟提起をした方がよいでしょう。

他方で、民事裁判と刑事裁判は別個独立した手続ではあるものの、刑事裁判での経過が民事裁判でも事実上参考となる場合があり得ます。
その意味では、刑事裁判の一審が終わってからの民事訴訟がよい場合もあります。

横領された金銭の流れを示す資料を整理しておくと良いでしょう。弁護士に相談する際にも説明が円滑になると思います。

ご助言ありがとうございます。横領された金銭の流れを示す(会社から直接誰の手元に渡ったのか)の資料は揃っていると思います。ただし、当然のことながらその先の金の行方は不明です。不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について気になります。経緯は以下の通りです。
R4.08 代表取締役・取締役S就任 (私・Xが任命)
R4.12 代表取締役・取締役M就任 (Sはそのまま)← 私・Xは不知
R4.12 Mが2億円横領(おそらくS・Mで山分け)
R5.01 S・M解任・登記、新代表取締役・新取締役として私・X就任 
R5.02 X解任、S・M代表取締役・取締役に返り咲き登記
R5.03 S・M職務執行停止、職務代行者選任仮処分決定 
R6.10 R5.02の登記のもとになった株主総会決議不存在確認訴訟及び
株主確認訴訟にXが勝訴
R7.06 同上控訴審勝訴
現在上告審
会社は取締役のみのシンプルな会社組織です。上記Mが2億円横領で起訴されています。現在の会社の代表者である職務代行者は自身が職務代行者の間、会社の常務外として、損害賠償請求訴訟をしないとの方針です。
なので、Xの私が代表取締役として訴訟追行せねばなりませんが、民事訴訟が上告審に係属しており未だ確定判決に至っておらず、R5.02の登記が抹消にならず、その直前のR5.01におけるXの私が代表取締役の登記が復活しておらず、それで損害賠償請求を起こせないという状況です。
Mが会社から2億円を横領したのが上記R4.12ですから3年と少し経ち、私がその横領を知ったのはR5.1ですからちょうど3年経っています。
このような場合、不法行為の損害賠償請求の消滅時効はどうなりますか?
簡単なお答えで構いません。
お答えいただけたら、そして先生が相談を受けてもよいとお考えいただけたら、有料相談に移らせていただけたらと存じます。

非公開メッセージをお送りします。

民法709条に基づく不法行為構成ですと既に時効にかかるおそれがあるものの、民法703条と704条を理由とする不当利得返還請求権や、雇用契約上の債務不履行責任として追及、役員としての善管注意義務違反の責任追及であれば、横領の事実と横領犯を知った時から5年間(又は横領行為の時点から10年間の短い方)で消滅時効が完成します。
そのため、後者の法律構成をとればひとまず時効の心配は回避できると思います。

【会社代表者としての責任追及の可否】
代行者が会社の常務外として責任追及ができないことから、従前の代表者が責任追及することになります。
しかし、「Xの私が代表取締役として訴訟追行せねばなりませんが、民事訴訟が上告審に係属しており未だ確定判決に至っておらず、R5.02の登記が抹消にならず、その直前のR5.01におけるXの私が代表取締役の登記が復活しておらず、それで損害賠償請求を起こせないという状況」とのことであり、Xの会社代表権に争いがあることから、従前代表者のSとMが代表権があるとされてしまっている状況かと思います。
そしてSMからすれば責任追及するはずがないので、代表者による責任追及は不可能です。

【株主代表訴訟】
会社法847条1項に基づき、株主として、会社に対して責任追及の請求をします。
しかし、上記のとおり、会社は代行者及びSMが SMの責任追及しないと思いますので、3項により、「株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起する」ことになります。
なお、回復することができないおそれのある損害といえれば、5項により「直ちに責任追及等の訴えを提起することができる」ことになります。

法律構成としては、不法行為以外の構成をとりつつ、こちらの方向で対応するのが良いのではないでしょうか。

なお、現状、不法行為が時効にかかっていないのであれば速やかに時効完成を阻止するというのは良いと思います。
また、刑事訴訟の結果や上告になっている民事訴訟の結果を待ってから、動くというのも良いとは思います。

ですが、不法行為構成、不当利得や債務不履行などのそれ以外の構成のどれを選択するにせよ、現段階で時効完成を阻止した方が良いと思います。

なお、会社法364条により、「第三百五十三条に規定する場合には、取締役会は、同条の規定による株主総会の定めがある場合を除き、同条の訴えについて取締役会設置会社を代表する者を定めることができる。」とされています。
そして、会社法353条は「第三百四十九条第四項の規定にかかわらず、株式会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が株式会社に対して訴えを提起する場合には、株主総会は、当該訴えについて株式会社を代表する者を定めることができる。」とされています。

そのため、一人株主であるXが「株主総会」として「当該訴えについて株式会社を代表する者を定めることができる」ので、代表者をXとしても良いですし、あるいは代理人弁護士とすることで、会社法847条1項の株主代表訴訟を会社に請求し、会社は即時、当然にSMの責任追及を認めることができます。