実在する自動車をモチーフにしたオーダーメイド立体アート販売に関する法的リスクについて

個人で3Dプリンターを使ったアート作品の制作・販売を検討しています。

内容としては、
・お客様の「愛車」を元にした立体アート(ミニカーやレリーフに近いもの)
・完全オーダーメイド、一点物の受注生産
・不特定多数への量産販売は行わない
・ロゴ、エンブレム、車名、メーカー名は使用しない(使用できるならしたい)
・完成した立体物のみを納品し、3Dデータ(STL等)の販売・配布は行わない
・依頼者個人の記念・鑑賞用途を想定

という形を想定しています。

このような条件の場合、
① 実在する自動車の形状を参考にした立体物を制作・販売することが、
意匠権・著作権・不正競争防止法などの観点で
どの程度リスクがあるか
② 実務上、特に注意すべきポイント(避けるべき表現・販売方法)
③ よりリスクを下げるために取るべき運用上の工夫

についてご意見をいただきたいです。

なお、現時点ではメーカー公式ライセンスを取得する予定はなく、
小規模・個人事業としての運営を想定しています。

なお、商品価値として「依頼者の愛車の特徴をある程度反映すること」は重視したいと考えています。
完全な実車再現ではなく、一定の簡略化・デフォルメを前提とした場合の許容範囲についても
可能であればご教示いただけると助かります。

ご質問いただいた点を踏まえ、以下のとおり回答いたします。


→まず、最も注意すべき点は意匠権であると考えます。
不特定多数への販売は行わないとのことですが、受注生産であっても継続的に制作・販売を行う場合には、「業として」の実施に該当し、意匠権侵害の問題が生じ得ます。

もっとも、実際に侵害となるか否かは、対象となる自動車についてどのような意匠が登録されているかに左右されます。
例えば、ミニカーや玩具としての形状が意匠登録されている場合には、特に問題となる可能性があります。

著作権については、対象となる車両が極めて特殊な形状を有し、芸術性が認められるような場合は別として、一般的な自動車をモチーフとした作品であれば、著作権侵害が問題となる可能性は低いと考えられます。
不正競争防止法との関係では、あたかも特定の自動車メーカーが製作・販売した商品であるかのような表示や説明を行わない限り、違反となる可能性は低いものと考えられます。
商標権についても検討の余地はありますが、メーカー名やロゴ、車名等の使用を予定していないとのことですので、商標権侵害のリスクも低いといえるでしょう。


→最も問題となり得ると考えられる意匠権に絞って述べますと、意匠権侵害を回避するためには、登録済み意匠と「同一又は類似」と評価されないことが重要です。
もっとも、この判断は、
• どの部分が共通しているか
• 相違点がどの程度あるか
• 全体として消費者に与える印象
などを総合的に検討して行われるため、どこまでが許容範囲かを一律に示すことは困難です。
ただし、少なくとも、特定の車種が容易に識別できる程度の再現は避ける必要があるでしょう。例えば、ヘッドライト形状やボディラインを忠実に再現せず、汎用的・抽象的な表現にとどめることが考えられます。

販売方法については、意匠権者からの差止請求や損害賠償請求のリスクを低減する観点から、大量生産を行い一般的なグッズとして販売する形態は避けた方が無難です。


基本的な考え方は、上記②で述べた通りです。