社員の経歴詐称による解雇は法的に可能か?
【相談の背景】
現在、経歴調査中の弊社社員が経歴詐称で解雇が可能か、お教えいただきたく、投稿致しました。
昨年、弊社のある社員が不適切な発言をしたことを聞き、その社員が提出した履歴書と職務経歴書を見返しております。
不適切な発言とは、「10社以上転職している」「1番短い会社で3ヶ月もいなかった」「面接で騙される会社が悪い」という発言です。
その社員は総務部所属で、今年で2年目の転職者です。無遅刻無欠席で、仕事はよく出来るのですが、常日頃から問題発言が多く、辟易させられております。
例えば、
役員のことをハゲ呼びしたり、
社長のことを早く引退しろ!と言ったり。
オーナー企業なので、オーナーたちから、早くクビにしろと言われて、今回、私が担当となりました。
解雇のきっかけを探しておりましたが、経歴詐称で解雇にできますでしょうか?
【質問1】
経歴詐称で解雇可能ですか?
この度私が調査をすることとなりましたが、その調査中、
ひとまず前歴が、履歴書の経歴と年金手帳の第一号被保険者期間が合わない時期があることがわかりました。
前歴が有名企業だったので、
そこの年数が違うとなると、
解雇できますでしょうか?
年俸1500万円の営業マネージャーで採用にてしています。
【質問2】
さらに、
経歴詐称の具体的な内容は
過去10年で
5社も勤めていながら、
2社にまとめておりました。
いずれも営業職で
職種は一貫しておりますが、
解雇にできますでしょうか?
ご回答いたします。
まず、前提として、当該社員を解雇できるか否かについては、貴社の就業規則で経歴詐称を懲戒解雇事由(又は解雇事由)に定めているかが重要です。他方、そのような規定を定めているからといって、必ず懲戒解雇が認められるというわけではなく、経歴詐称がその会社にとって重要なものとは言えない場合は、懲戒解雇は重すぎるとして無効と判断される傾向にあります。また、経歴詐称の事実について証拠が不十分である場合も、懲戒解雇後に訴訟を起こされれば会社が敗訴することになります。
経歴詐称が会社にとって重要なものといえるか否かについては、使用者の労働者に対する信頼関係、企業秩序維持等に重大な影響を与えるものでなければならないとされています。
そして、信頼関係、企業秩序維持等に重大な影響を与える経歴の詐称に該当するのは、具体的には以下の2点を双方とも満たす場合です。
1.その経歴詐称が事前に発覚していれば、会社がその労働者を雇入れることはなかったといえる場合
2.その経歴詐称が事前に発覚していれば雇入れなかったということに、客観的な相当性がある場合
以上を前提にご質問者様の「履歴書の経歴と年金手帳の第一号被保険者期間が合わない時期がある」といった点や「過去10年で5社も勤めていながら、2社にまとめていた」という点については、その事実がなければ当該労働者を雇入れていなかった、とまでは判断できないように考えられ、上記の各事実のみをもって解雇することは現実的には難しいと思われます。