解雇予告手当の支払いが遅延した場合
解雇予告手当と合意書について質問があります。
採用後、1日も働く事なく解雇されるが、解雇予告手当が支払われる。
解雇予告手当の支払日が、解雇日から1カ月後になる。
解雇予告手当を支払う条件として、合意書に署名捺印をさせられ、清算条項で債権債務が無い事を確約する。
この内容であれば、使用者は合意書の内容を主張し、解雇予告手当の支払日までの期間、給与を支払わなくても良いのでしょうか?
使用者が14日以内に解雇した上で、解雇予告手当の支払いを主張している為、解雇は即時扱いになるのか等、争点が判然としない為、ご意見をお聞かせいただけますと幸いです。
まず、ご自身が試用期間中であったかどうかが問題になります。
ご相談の中でも触れられていますが、雇い入れから14日以内に解雇する場合で、試用期間中であれば、使用者に解雇予告義務は生じないとされています(労働基準法21条)。
よって、ご自身の雇用契約に試用期間が定められていれば、解雇予告手当の支払いの有無を問わず、即時解雇としての効力が生じます。
そして、解雇予告手当が即時に支払われない場合の解雇の効力について、判例は、即時解雇としての効力は生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇通知後30日の期間を経過するか、後日解雇予告手当の支払いをした場合はその時をもって解雇の効力が生じる、としています。
よって、この場合は、即時解雇の効力は生じないことになります。
そして、本来なら、違法に「即時解雇」を主張するという使用者側の責任で就労ができなくなっているため、30日間はその対価である賃金の支払い義務があることになります(民法536条2項)。
次に、ご相談の中にもあるように、使用者は、清算条項付きの合意書にへの署名によって賃金は放棄されている、と主張すると予想されます。
この賃金の放棄について、判例は、労働者の自由な意思によるものであることが明白である場合に限り、その効力が認められるとしています。
ご相談の事例では、特に使用者が解雇予告義務について正確に理解していないとみられ労働者に対する十分な説明が期待できないことなどから、特にそのような事情が見当たらないと考えられます。
よって、解雇予告手当が支払われるまでの期間の賃金を請求する余地があると考えられます。
このほか、解雇の効力自体を争う方法も考えられます。
この場合も、やはり清算条項付きの合意書の存在が障壁になると予想されますが、同じ理由で争う余地はあると考えられます。
詳細に回答して頂きありがとうございます。
本件は試用期間ありと説明されていましたが、労働条件通知書や、解雇理由証明書等の書面を求めても一切交付されていません。
この場合、使用者が解雇予告手当の支払いを条件に、合意書への署名捺印を求めた事を理由に、審判等で解雇の撤回やバックペイを求める事は可能でしょうか?
この場合、求人情報が参考になります。
その中に試用期間に関する記載があれば、それを元に解雇予告義務の適用外と判断される可能性が高いでしょう。
また、その場合、清算条項付きの合意書は、本来支払い義務のない解雇予告手当と引き換えになっているため、民法上の和解契約と解されます。
その効果として、従来あるべき権利は消滅することとされています(民法696条)。
すると、解雇の効力を争うことはできないと考えられます。