結婚相談所の成婚料返金と指輪代金の法的責任について相談

弊社は創業20年以上の結婚相談所を運営しております。
この度、名古屋サロンにて成婚が成立し、成婚料のお支払いおよび成婚パーティーまで完了しておりましたが、その後、男性会員より一方的に婚約破棄の申し出があり、成婚料および指輪代金の全額返金を強く求められている状況です。

現在は、男性側代理弁護士から内容証明郵便が届いたほか、民事案件にもかかわらず警察署から問い合わせが寄せられるなど、対応に苦慮しております。

■簡潔な経緯

● 12月6日
男性側代理弁護士より名古屋サロンへ配達証明が到着。
社長・担当マネージャーへ共有し、社長判断として「成婚料は返金、指輪代金は返金不可」と方針を確認。
同日、国際部を通じ女性側へ交際状況を確認したところ、女性側は交際継続中との認識であり、指輪も女性が所持。

● 12月7日
弊社担当より代理弁護士へ連絡し、成婚料返金の意向を伝達。
指輪の扱いについては男性側への確認が必要とのことで折り返し待ち。

● 12月8日
警察署より、「男性会員が相談に訪れている」とのことで弊社へ問い合わせ。
入会時説明、成婚料の扱い、女性側ビザの説明等について回答したうえで、成婚料返金の意思は既に伝えている旨を報告。

その後、男性側代理弁護士より以下の連絡:

男性は女性との交際終了を主張
指輪は「弊社が返却を求めるなら返す」と女性に伝えている
成婚料+指輪代金の全額返金を要求
成婚料+指輪代金の全額返金に応じない場合は「刑事訴訟を行う」との意向

現在、契約書類・指輪注文書・国際契約書等を整理し、男性側代理弁護士へ送付準備中です。

■ご相談したい点

弊社としては、円満な解決を優先し、成婚料については「全額返金」に応じる方針です。
しかしながら、男性が交際相手へ贈与した婚約指輪については、個人間の贈与と認識しており、弊社が返金義務を負うものではないと考えております。

一方で、

返金に応じない場合「刑事訴訟に進む」と代理弁護士が述べている点

民事案件にもかかわらず警察から度々連絡がある点
など、対応方針に不安がございます。

つきましては、
① 指輪代金に対する弊社の返金義務の有無
② 男性側の主張に対し、今後どのように対応することが適切か
③ 警察からの連絡が継続する場合の法的な扱い
について、専門的な視点からご助言いただければ幸いです。

■資料提供について

ご相談に応じていただける場合、

会員様の 活動記録
お見合い・マッチング履歴
成婚契約関連書類一式
男性側代理弁護士から届いた 内容証明データ

など、必要な資料はすべて共有させていただきます。

また、これまでの経緯につきましても、時系列で詳細にまとめた資料をご提出いたします。

お忙しいところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

1. 指輪代金に対する返金義務の有無について
結論として、貴社が男性会員に対して婚約指輪の代金を返金する法的な義務を負う可能性は低いと考えられます。

婚約指輪の授受は、あくまで婚約当事者である男性会員と女性会員との間の個人的な贈与契約です。結婚相談所である貴社は、その贈与契約の当事者ではありません。したがって、仮に女性が返金義務を負う場合であっても、貴社が返金義務を負う法的根拠は見当たりません。

また、国際結婚の仲介契約に関する裁判例では、会員の個人的な理由による破談で追加的に発生した費用は会員自身が負担すべきであり、仲介業者に責任がない限り、成婚料の支払いを拒絶することはできないと判断されています。この裁判例は、仲介業者の責任範囲が、会員間の個人的な問題とは切り離して考えられることを示唆しており、本件でも同様に、指輪の返還が貴社の責任範囲外の問題であると主張する上で参考になります。

2. 今後の対応について

相手方代理人に対し、内容証明郵便などで書面にて貴社の見解を明確に伝えることが重要です。その書面には、以下の内容を盛り込むことが考えられます。

成婚料について: 円満な解決を優先する観点から、経営判断として返金に応じる意向であることを伝える(ただし、法的には上記の裁判例のように、貴社に返金義務は無いと判断される可能性が高いと思われます。)。

指輪代金について: 前述の通り、男性会員と女性会員との間の個人間の贈与であり、貴社に法的な返金義務はないことを、法的根拠と共に冷静に主張する。

「刑事訴訟」との主張に対して: 本件は、契約の履行や返金を巡る民事上の紛争であり、貴社に当初から金銭を騙し取る意図(詐欺罪の構成要件である欺罔行為)があったとは考えにくく、刑事事件として立件される可能性は極めて低いと思われます。

3. 警察からの連絡について
警察は「民事不介入」を原則としており、契約トラブルなどの個人間の紛争に介入することはありません。しかし、事件性があるかどうかを判断するために、関係者から事情を聴くことがあります。その場合には誠実な事実説明を行ってください。

おそらく、貴社は婚約指輪の販売をした会社ではないのでしょうし、婚約指輪の授受は婚約当事者間でなされるため、婚約指輪の返金義務を貴社が負う法的根拠は存在しないものと思われます。
 ただし、指輪注文書をご投稿者さん側(結婚相談所側)が所持しているということからすると、結婚相談所を通じて提携しているジュエリーショップ等に結婚指輪の注文がなされている(提携関係等から指輪代の割引がなされている等)、成婚に向けたサービスの一環で結婚指輪の注文に向けた案内•相談等も実施している等の事情がおありなのではないかと推察致します。
 これらの提携事情等が仮にあったとしても、婚約指輪の売買当事者、婚約指輪の授受の当事者に変わりはなく、指輪代の返還義務等の民事上の責任が貴社に生じる法的根拠はないように思われますが、男性会員側が貴社に返金を求める戦略的な糸口にしている可能性が想定されます。
 そもそも、成婚料の発生する要件をみたした後に男性会員側から成婚の解消の申出がなされたのであれば、貴社が成婚料を返金する義務もないように思われますが、少なくとも、婚姻指輪に関しては、貴社として、刑事上の責任はもちろん、民事上の責任も負わないことを書面でしっかり主張する等して、毅然とした対応をとっておくことが考えられます。
 貴社自身でのご対応に限界を感じられているようであれば、相手方も弁護士を代理人に立てている以上、貴社としても、弁護士を代理人に選任して連絡•交渉窓口になってもらい、相手方に回答等して行く方法もあるかと思います(その前提として、より詳しい経緯や契約関係書類等の確認もしてもらうとよろしいかもしれません)。