機密保持契約の記載内容について

取引先から機密保持契約の締結を求められています。「業務終了時に…乙のコンピューター等に記録された機密情報を消去して復元不可能な状態とする」(こちらが乙)との記載があります。現実的に『復元不可能』な状態にするためには、ハードディスク等の補助記憶装置を物理的に破壊、または専門業者にデータ消去を依頼しなければならないので(コンピューターのデスクトップ上のゴミ箱を空にしただけでは、専門業者に依頼すれば復元可能)、この契約書に署名することには不安があります。このような記載は機密保持契約書としては一般的なものでしょうか?

自社の営業秘密の保持を怠ることのできない甲として、このような条項を入れることは一般的にも不合理とは言えません。「復元不可能な状態」は、終了後、乙がそのPC等を第三者に譲渡・貸与又は廃棄したり、盗難被害に遭うなどしたことが原因で機密情報が流出した場合にも、甲との関係で、(悪用目的で復元した第三者ではなく、)乙にその全責任を負わせることを意図したものと言えます(流出したのは、復元可能にしていた乙が悪い、との論理)。
実務上、終了時に復元不可能なレベルで消去しているかどうかを甲は物理的に確認したりはせず、せいぜい消去したことの誓約書等の提出を乙に求める位が通常ですが、いずれにせよ、復元不可能なレベルで消去するコストや、違反を承知で復元可能な消去に止めていた場合に生じる上記のリスク・責任を、乙として負担することができない、ということであれば、甲との取引は断念するしかないのだろうと思います。

これほど丁寧にご回答いただけると思っていませんでしたので、感激しています。大変よく分かりました。この度は本当にありがとうございました。