相手が既婚だと知らなかった場合の不倫について

既婚か未婚かの話をせずに、もし肉体関係があった場合、それでも不倫になってしまって訴えられて有罪などになってしまうのでしょうか? 賠償金を請求されるのでしょうか?

あとまた、出会い系などのサイトで、相手がプロフィールを既婚にしていたのを気がつかなかった場合も、同様でしょうか?

犯罪ではないので有罪といったことはありませんが、少なくとも「過失がある」ということで不貞慰謝料を請求される可能性はあります。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53272
裁判年月日
 昭和54年3月30日

法廷名
 最高裁判所第二小法廷

夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持つた第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によつて生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被つた精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。

過失の認定についてはこの記述が参考になります。

家庭の法と裁判12号(2017年12月号)51頁

不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(3)
大塚正之
【婚姻関係の存在について故意過失が争われた事例15件中,婚姻関係の存在を知らなかったが,過失があるとした事例が2件(事例58, 80)であり,そのほかはすべて婚姻関係の存在を知らなかったとして,既婚者であると知らされる以前の行為については不法行為の成立を認めなかった事例である。一般に,誰かと交際する場合において,その相手方が独身であると述べているとき, どこまで疑って独身か否かを調査する義務があるのかという問題であり, この点に関して,多くの裁判例は,基本的に調査義務はないとして過失を認めていない。事例112のように独身を前提とする合コンで知り合い,本人も独身だと言い,周囲の知人たちからも彼は独身だと聞いているような場合においては,更に独身かどうか調査しないで性交渉を持っても過失があるとは言えないというのは当然であろう。
それでは, どのような場合に過失が認定されているのか。事例58は,平成20年頃から同25年10月まで被告は原告の夫と交際していたが,平成21年9月から同22年7月までの電子メールにより配偶者があることを容易に認識し得たとする。例えば,平成21年9月の原告の夫から被告へのメールには,前の彼女のことを妻に知られたという記載があり,それを閲読すれば通常妻がいると分かるもので,過失を認定したのは当然であり,むしろ,その時点で妻の存在を知らされたと言ってよいものである。】

不貞慰謝料請求については、すでに述べられているとおり、相手方が既婚でないと思っていたことに落ち度がなかったか、がポイントになります。
この点、具体的事案ごとに大きく判断変わりうるところですので、実際にそのような状況なのでしたら、急ぎお近くの弁護士事務所で相談されてみてください。

なお、既婚であることに気付かなかったことに落ち度がない場合、逆に既婚なのに肉体関係を持った相手方に、貞操権や人格権侵害などによる慰謝料請求ができる場合もあります。
この点も、あわせてご相談されてみてください。

大変ご丁寧にありがとうございました。逆に慰謝料請求できることがあるというのは初めて知りました。また何かありましたらよろしくお願いいたします。