管理会社の契約不履行の理由をもって、訴訟にて共益費の一部を返還請求できますでしょうか?

賃料減額請求と共益費返還の訴訟を考えています。
管理会社によると、私の居住しているアパートには管理会社の社員が月1回訪問して、ゴミを掃除しているということで、オーナーは別に清掃人は雇っていないそうです。
しかし、共用部分にはゴミが散乱しており、月1日の清掃すらされていません。毎月同じゴミが共用部分に落ちています。また駐輪場は許可制でして、管理会社から購入した許可シールを貼った自転車のみ駐輪できますが、私以外の自転車と原付合わせて7台が違反駐輪です。このように共用部分が管理されず、賃貸借契約の共益費の条項には、「賃借人は階段、廊下等の共用部分の維持管理に必要な光熱費等の維持管理に充てるため、共益費を賃貸人に支払うものとする」と書かれており、管理会社が毎月清掃すると主張している以上、清掃も共用部分の維持管理に必要なことであり、共益費も清掃に充てられべきものでありますか、清掃はされておりません。

賃借人と管理会社との間には契約関係はありません。

管理会社は,法律的には,賃貸人の手足(履行補助者)と考えられます。

従いまして,考えられるのは,賃貸人に対する責任追及ですが,共用部分にゴミが散乱している,違反駐輪がされているという理由で,賃料の減額まで認められるか,程度にもよりますが,なかなか難しいかと思います。

民法611条は,「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」に賃料減額を認めています。

また,共益費は契約に基づいて支払っているものであり,法律上の原因がありますから,返還の請求(不当利得返還請求)というのも難しいと思います。

共用部分の管理が不十分であることにより,ご相談者様が何か実損を被っているのであれば,その賠償請求は考えられるかと思います。

秋山先生、お忙しいなか、ご回答ありがとうございます。
賃料減額の件は別の原因がありまして、その訴訟と併せて、共益費の不当利得返還請求もできないかと、お伺いした次第です。
共益費は賃貸借契約の共益費の条項に記載があるように共用部分の維持管理として使用してるから払っているのであって、その維持管理がされていないなら、返還請求できるということにはならないんですね。
共用部分の維持管理の如何にかかわらず、契約上払うべきものだから、一部でも返還請求は難しいという理解でよろしいでしょうか?
お忙しいとは思いますが、ご回答よろしくお願いいたします。

「共益費は賃貸借契約の共益費の条項に記載があるように共用部分の維持管理として使用してるから払っているのであって、その維持管理がされていないなら、返還請求できるということにはならないんですね。」

→残念ながらそうはならないですね。

不当利得返還請求というのは「法律上の原因」がなく相手が利得し、請求者が損失を受けている場合に認められる権利です(民法703条)。

例えば、賃貸借契約に基づき、毎月翌月分の賃料と共益費を払っていたが、震災で建物が倒壊したという場合には、賃貸借契約が当然終了しますので、「法律上の原因」がなくなり、前払い済みの賃料や共益費の不当利得返還請求ができます。

しかし、賃貸借契約が存続している状態で、共益費を払っているのに賃貸人が共用部分の管理をしていないというのは、契約違反の問題にはなっても、契約が存続している以上、「法律上の原因」があるので、不当利得返還請求は通りません。

秋山先生、お忙しいなか、ご回答ありがとうございます。
共益費を払っているのに賃貸人が共用部分の管理をしていないというのは、契約違反の問題にはなっても、契約が存続している以上、「法律上の原因」があるので、不当利得返還請求は通らないということは、本賃貸借契約の共益費の条項は消費者の利益を一方的に害する条項であり、消費者契約法第10条でもって、無効もしくは一部の無効つまり、共益費の減額を請求することはできますでしょうか?
お忙しいとは思いますが、回答よろしくお願いします。

「本賃貸借契約の共益費の条項は消費者の利益を一方的に害する条項であり、消費者契約法第10条でもって、無効もしくは一部の無効つまり、共益費の減額を請求することはできますでしょうか?」

→無理だと思います。

賃貸人が共用部分の管理をしていないことが問題なのであって,共益費を支払うという条項自体は,消費者の利益を一方的に害する条項とは評価できません。

問題にするのであれば,賃貸人が共用部分の管理をしていないという債務不履行による損害賠償を問題とすべきでしょう。

秋山先生、お忙しいなか、ご回答ありがとうございます。
先生のおかげで、無謀な訴訟をせずにすみました。
法的な考え方に対して、素人の考え方では的外れになり、訴訟で負ける危険があると思い知りました。
お忙しいなか、真摯に回答して頂き、とても感謝しております。
ありがとうございました。