設備不良に伴う契約解除の可否

都内の高級賃貸に入居しています。
12月中旬に給湯設備が故障し、未だ復旧せず修理は3月になると言われています。
賃料減額の話し合いはしたものの、この時期に自宅でお湯を使えない生活には我慢ができず、民法611条第2項に従い契約の解除を申し入れています。
解約であれば2ヶ月前通告が必要であること、賃貸契約に記載がございますが、このケースでは契約の解除により2ヶ月待つことなく契約を終了できますか?
また上記の交渉に際し、どのように進めると効果的でしょうか。
私としては2月上旬には退去するため、2月分賃料は本日時点で支払いをしておらず、これまでの賃料減額分(12月、1月は満額支払い済み)、及び敷金より充当するよう申し入れていますが、あくまで2ヶ月先までの賃料を徴収する意向のようです。

民法611条2項は,「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。」と定めているわけですが,これはかなりハードルが高いと考えた方が良いです。給湯設備が使えないことをもっては,「残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができない」とは(裁判になった場合に裁判所に)評価されない可能性があると思います。
従いまして,611条2項を根拠に契約の解除を通知しても,当該解除は無効と評価され,通常の解約申し入れとして,申し入れ後2か月間の賃料が発生すると評価されるおそれがあります。
それよりも,賃貸人には設備の修繕義務があるわけですから,相当期間(1~2週間程度)を定めて給湯器の修繕を催告し,その期間内に修繕がされない場合には,債務不履行により賃貸借契約を解除する(民法541条)と主張した方が,解除の有効性が認められやすいと思います。今からでも,予備的にそのような通知をした方が良いのではないでしょうか。予備的にというのは,「当方は,民法611条2項に基づく解除を主張しているが,仮にそれが有効と認められない場合には,給湯器の修繕を●月●日までにすることを催告する。修繕がされない場合には,●月●日の経過をもって賃貸人の債務不履行により賃貸借契約を予備的に解除する。」と通知するという意味です。
2月上旬に退去することが決まっているなら,いずれにしても2月分賃料を支払う必要はなく,あとは退去後,敷金の精算をどうするかという問題になるように思います。先方は予告期間の賃料を敷金から充当すると主張し,こちらは,解除の有効性を主張して,予告期間の賃料は発生しないと主張するという形になるかと思います。

秋山先生
ご回答ありがとうございました。大変参考になります。
先方の主張は修理の手配はしているが、給湯器が受注生産であるため修理に3ヶ月を要する、ということなのです。。結果として修繕はされていないのですが、債務不履行を主張することは可能でしょうか?

「先方の主張は修理の手配はしているが、給湯器が受注生産であるため修理に3ヶ月を要する、ということなのです。。結果として修繕はされていないのですが、債務不履行を主張することは可能でしょうか?」

→給湯器の修理に3か月も要するというのが不自然な気がします。本当に3か月も必要なら,修理の手配はしているので,債務不履行とは言い切れないと判断されてしまう可能性もありますが・・・。