離婚時の財産分与の対象となる退職金は早期退職した場合の金額(定年退職より高額)にすべきですか?

50代男性です。妻と離婚協議中ですが、財産分与に関する妻側の主張が正しいのか確認したいものです。50代半ば故、60歳定年退職時の退職金も財産分与の対象になると思いますが、退職金の予想金額が60歳定年退職の場合と早期退職した場合でかなり異なり、早期退職した場合の方が高額になります。早期退職しても再就職のあてはなく、また60歳まで勤めて定年退職すれば、65歳までの雇用延長制度もあり、早期退職するつもりはありません。ところが妻側は早期退職した場合の方が高額であれば、それをベースに財産分与の対象額を算定すべきと主張しています。これは正しいでしょうか?

ところが妻側は早期退職した場合の方が高額であれば、それをベースに財産分与の対象額を算定すべきと主張しています。これは正しいでしょうか?

退職金の財産分与の考え方はいろいろあるとは思いますが、一つの考え方としては、離婚時(別居が先行するなら別居時)を基準に退職金を考えていけばよいと思います。
例えば、離婚時(もしくは別居時)に退職したらいくらかです。
その額×(婚姻期間/勤続年数)×1/2(折半)です。

ただ、相談者の理由で別の主張があるのであれば、主張されてもよいとは思います。

なお、高額だからと言うのは理由にならないと思います。

原田先生

回答ありがとうございます。
私の質問が不明確であったかもしれませんが、会社のルールに従って下記2ケースを試算すると、(2)の現時点で退職した場合、すなわち早期退職した場合の方が、(1)の60歳定年まで勤めて定年退職した場合よりも金額が大きくなり、妻側は(2)をもとに財産分与を計算すべき、と主張しています。

なお、入社から婚姻までが5年、婚姻から現在が25年、60歳まで勤めた場合の勤続年数は35年(5年後退職)、程度です。

(1) 5年後の60歳定年定時の予想退職金を会社のルールに従って試算すると、約3000万円で、3000万円x25年/35年すると、2143万円。これは5年後の予想金額ベースの値になっているので、係数掛けして現在価値に割り戻すとさらに少額になります(現在価値に割り戻す手法も色々あるようですが)。

(2) 会社のルールに早期退職した場合には退職金が割り増しされるルールがあり、現時点で退職した場合の退職金を試算すると、3300万円となり、これを25年/30年すると、2750万円となり、(1)の2143万円(あるいは現在価値に割り戻してさらに小さくなった金額)よりも大幅に高額となります。

原田先生の回答では、「離婚時(または別居時)に退職したらいくらか」で考えればよい、とのことですので、(2)の金額を採用すればよい、すなわち妻側の主張が正しい、と読めます。私の場合は早期退職しても再就職のあてもなく、また60歳まで勤めて定年退職すれば、65歳までの雇用延長制度もあり、収入の総額は早期退職しない方が多くなると予想しているため、早期退職するつもりはありません。この場合も、(2)を採用しないといけないのでしょうか?

確かに相談者様のおっしゃることはよくわかります。

婚姻期間の勤務に対応する退職金を財産分与の対象にする理由は、退職金が賃金の後払いの性格を有するからだということは、通説的な理解だと思います。
早期退職により退職金が割り増しになることは、通常想定されていないと思います。
早期退職により退職金が割り増しになる理由は、会社が、将来の賃金負担をしないために従業員に退職してもらうことにあり、割増部分は「賃金の後払い」ではなく、「将来賃金の先払い」になると思います。
このため、離婚時に退職しないのに、離婚時に早期退職したと仮定して退職金の割増部分を計算しても、それは婚姻期間の賃金に対応した部分ではないため(離婚後の収入の先取りになる)、財産分与の対象にするべきではないと考えられます。
割増部分とそうでない部分が分離できるのであれば、割増部分を外して離婚時の退職金を計算した方がいいと思いますし、割増部分が分離できないのであれば、相談者様のご主張されるとおり、定年退職したときの金額をベースに計算するのが正しいように思います。

藤岡先生
分かりやすい回答ありがとうございます。
「賃金の後払い」、「将来賃金お先払い」の考え方がよくわかりました。
大変参考になりました。