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ますだ あゆみ
益田 歩美弁護士
弁護士法人中田・島尾法律事務所 東京事務所
日本橋駅
東京都中央区日本橋2-2-8 東京風月堂日本橋ビル4階
対応体制
  • 法テラス利用可
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  • 電話相談可
  • メール相談可
  • WEB面談可
注意補足

【相談料5,500円(30分)】初回から丁寧にお話を伺った上でアドバイスをさせていただくため、相談料は有料としております。メールやZoomを利用できる方であれば、都道府県を問わずにご相談をお伺いすることができます。

インタビュー | 益田 歩美弁護士 弁護士法人中田・島尾法律事務所 東京事務所

証拠が乏しくても、証明する手立てはある。事実婚の遺族年金訴訟、国と闘う原点と苦悩

徳島県に本店を置く弁護士法人中田・島尾法律事務所。
東京事務所に所属する益田 歩美(ますだ あゆみ)弁護士は、一般民事のほかに国を相手にした行政事件、とくに力を入れているのが、遺族年金問題です。
事実婚に関する遺族年金訴訟では高裁で逆転勝訴を手にした実績も。
「証拠が乏しくても、証明する術はある」。
最後まで粘り強く闘い抜く執念と覚悟に迫ります。

01 現事務所と取扱分野

徳島の「町弁」が東京へ。一般民事のほか、行政事件も手がける

ーーまずは、これまでのキャリアの歩みを教えてください。

弁護士になって約13年(2022年5月現在)、一時期会社に入ったことがありますが、それ以外は、ずっと現事務所で活動しています。
当事務所は、弁護士歴40年ほどの叔父が開業し、本店は徳島県にあります。
私自身も、出身地である徳島の本店でキャリアをスタートさせました。
現在所属している東京オフィスは、開設から約10年の歴史を刻んできました。

都心では専門性を打ち出す法律事務所も目立ちますが、地方にある事務所にはどんな事件にも対応する「町医者」ならぬ「町弁」のような役割が求められます。
交通事故、離婚・男女問題、遺産相続、刑事事件、債権回収等々。
私自身も、新人時代から分野を問わずいろんな事件に携わってきました。

また、それ以外にも、男女問題や遺産相続に関連しますが、相手を国とする遺族年金の事件も経験してきました。
いわゆる行政事件です。

02 得意分野と強み

事実婚の遺族年金訴訟、高裁で逆転勝訴。決め手は「未完の婚姻届」

ーー具体的に、どんな行政事件を担当しているんですか?

私が重点的に取り組んでいるのは、遺族年金の問題です。

支給対象には法律上の配偶者だけでなく、籍を入れていない事実婚の配偶者も含まれます。
事実婚の場合に厄介なのは、二人の関係性を公的に証明しづらいことです。
夫婦なのか、愛人なのか、友人なのか・・
はたから見ると関係性がわかりにくく、国が求める資料やそれに代わる資料も乏しいケースが少なくありません。


ーー立証のハードルが非常に高そうに見えます。

そうですね。
このため、まずは年金事務所への請求から始まるのですが、その段階で認められることは少ないかもしれません。
認めてもらえない場合は、審査請求、再審査請求のステップを踏み、それでもダメだと裁判所で争う、という長丁場を覚悟しなければならない場合もあります。

私が過去に担当した案件の中にも、地裁まで認められず、ほぼ最終段階の高裁までもつれこんで、ようやく認められたものがありました。

その案件の依頼者の方は、亡くなった男性と同居していた事実上の奥さまでした。
遺族年金の請求は、一旦はご自身でされていましたが、亡くなった方の退職金の支給対象にもなるらしく、どうすればいいか、これからどうなるのか分からない、ということで相談に来られました。
会社によっては、事実婚の配偶者にも退職金を支払う制度があるということは、新しい発見でした。

それから間もなくして、「家に入れない!」と連絡があったときには驚きました。元妻との間に生まれたお子さんたちがよく思っていなかったようで、家から追い出されてしまったのです。
仮処分を申し立て、ひとまず自宅で過ごせるようになったときにはホッとしました。


ーー案件そのものは、高裁までもつれるほど手続きは難航したんですよね?

そうなんですよね。
二人で住んでいた家に行ったり、近所の人や亡くなった男性のきょうだいから話を聞いたりして集めた証拠のなかで、私が決め手のひとつに推したのが、書き方などを記した付箋が貼られた未完の婚姻届でした。
この付箋は、婚姻届を書こうとしていなければあり得ない、としか考えられなかったからです。
そう思いませんか?

亡くなった男性は、苦しい闘病生活の末に力尽きて完成させられなかったものの、「婚姻届を書く」という意思はあった、つまり、依頼者の方を妻として認めていたのです!
そんな主張を展開しました。

しかし、お子さんたちが激しく抵抗したこともあってか、なぜか地裁まで連敗。
さすがに心が挫けました。
それでも、事務所の先生に叱咤激励されて控訴した結果、ようやく「妻」だと認めてもらえました。

あきらめずに熱心に主張し続けることで、固い扉をなんとかこじ開けた事件でした。


ーー根気のいる作業が必要なんですね…

特に決定的な証拠がない場合は、遺族年金の案件に限りませんけれど。
ただ、そのような場合でも、依頼者の方が言うからには何かがあるはずです。

その何かを探し出すためには、できるだけ詳しく話をお聞きし、話を引き出すことが重要です。
話の中から「それならこんな証拠があるかもしれない」と絶えず想像を膨らませ、小さな証拠の芽を見つけていきます。

遺族年金という問題は、あまり馴染みのある話ではないと思いますが、事実婚の配偶者の方場合は、法律上の配偶者と違って相続権がないため、年金を受け取れるかどうかは重大な問題です。
また、事実婚の配偶者の話ばかりをしてきましたが、法律上の配偶者の方にも無関係な問題ではありません。
様々な意見があるとはいえ、年金は生活に関わることですから、お困りの方は、ぜひ一度ご相談いただきたいですね。

03 事件解決のスタンス

少年院送致のピンチを脱し保護観察へ

ーー粘り強く、最後までやり切る。これは、ご自身の持ち味といえそうですか?

うーん、心は折れやすいんですけどね。
ただ、私は、法律論より感情が先に動きがちなので、感情に押される面もあるかもしれません。

少年事件で、当初在宅だったのが、審判期日に少年鑑別所に連れて行かれた件もそうでした。

その少年は、鑑別所内でもさほど様子は変わらなく見えましたが、ぽろっと弱音を吐いたんですよね。突然拘束されたのだから当然かもしれませんが、私は、変わろうとしている?とハッとして、意見書を書く筆が走りました。
裁判官が真剣に悩んでくれたおかげもありますが、調査官が「少年院送致が望ましい」と意見するところを、試験観察の猶予を設けてもらうことができました。
最後は、保護観察処分の結果を手にすることができたのですが、ピリピリして近寄りがたい雰囲気だった少年に、はにかむような素振りが見えたときには、本当によかったと思いました。


ーー少年事件の子どもには複雑な背景があり、大人への不信感を募らせていることも多いように思います。

そうですね。
少年に限らず、せっかく関わったのだから、何か変わる、気づく一助になればと思っています。
こんな事件もありました。

「おまえに話すことはない」。
これは、少年時代から窃盗等を繰り返し、成年になりたてで窃盗等で逮捕された男性に、初めて会ったときに言われた言葉です。
次は「おまえを解任するわ」でした。
是非解任してください、と正直思いましたが、そう簡単に国選弁護人は解任できません。

案の定、解任されないまま、ある日、突然呼び出されました。
「ようやく話をする気になってくれたかな」と期待したのは浅はかで、全くいつもと変わりありませんでした。
それで、プチっと堪忍袋の緒が切れた私は、怒りに声を震わせて、「他の仕事もあるのにわざわざ来たのに。こんなんじゃ、ちゃんと弁護できんだろ」くらいは言ったと思いますが、そのまま扉をバタンと閉めて接見を終了しました。


ーーずいぶん大胆なアプローチですね。


計算した演技ではなく、素の自分でしたね。

とはいえ、弁護人でなくなるわけではありません。
やむを得ず、というのも変な言い方ですが、後日、接見に行くと、なんと、男性は、バツの悪そうな顔をして、少し反省した様子で、重い口を徐々に開いてくれるようになりました。
これまで弁護人になってくれた先生とは、信頼関係が築けなかったようなことも言っていました。

それから、調書の内容で、おかしいな、と思うところがあったので、争って被害者の尋問まで行って、判決期日を迎えました。
窃盗の常習犯だったこともあり、実刑は免れませんでしたが、争った部分で一部減刑されました。

終結後、男性に「私なりに精一杯やりましたよ」と告げると、返ってきたのは、「ありがとうございました」の一言でした。
初めて会ったときとは雲泥の差ですよね。
少しは心を通わせることができたと思うと、素直にうれしかったです。今でも忘れられません。

04 今後の展望

70歳で現役の恩師・叔父を追いかけて。「私の生きる道」をひた走る

ーー弁護士になって約13年。やはり、これからも長くキャリアを続けていく考えですか?

タフな仕事に見えるかもしれませんが、私にはこれしかないですからね。
決して投げやりな気持ちではありませんよ。

この世界に進む道をつくってくれた伯父は、70歳にして今も現役を続けています。
徳島では名の知れたベテラン弁護士です。
閃きや勘は、長年の経験で研ぎ澄まされていくようで、この仕事は、伯父にとって天職のようです。
私も、この仕事が「私の生きる道」と言えるように、邁進していきたいですね。
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