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ながの けんじ
永野 賢二弁護士
弁護士法人松本・永野法律事務所 久留米事務所
福岡県久留米市通町10-4 TK久留米ビル6階
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交通事故の事例紹介 | 永野 賢二弁護士 弁護士法人松本・永野法律事務所 久留米事務所

取扱事例1
  • 慰謝料請求
【既払金(労災保険給付の損益相殺を含む)の他4000万円を支払うとの内容で和解が成立し大幅増額を実現】下肢の変形・短縮障害の事例

依頼者:40代男性

【相談前】
福岡県福岡市在住の40代会社員のHさん(男性)は,仕事を終え帰宅するに際し,原動機付自転車のライトを点灯させた状態で,交差点を青信号に従って直進していたところ,同交差点を右折した普通乗用自動車に衝突され,右大腿骨骨幹部骨折,腰部打撲,右膝打撲等の傷害を負いました。
Hさんは右大腿骨骨幹部骨折の治療のために,髄内釘骨接合術を受けリハビリを継続しましたが,その後骨癒合が遷延したために,横止めスクリュー抜釘(Dynamization)や横止めスクリューを挿入することとなり,骨癒合の促進及び改善のため,経皮的ドリリング(偽関節手術)を施行し,横止めスクリュー中枢・末梢共に抜釘の処置を受けましたが,右大腿骨の変形障害及び右下肢の短縮障害を残しました。

【相談後】
本件訴訟における主な争点は,①付添費,②後遺障害逸失利益でした。
付添費について,加害者側は,専門医の意見書を証拠として,「通院付添の必要性は否定されるべきである。」と主張しましたが,当事務所の立証活動により,裁判所は,当事務所の主張(入院・通院付添費全額)を採用しております。
後遺障害逸失利益について,加害者側は,医療記録を証拠として,「労働能力が21年間にも渡って45%も低下するものとは到底いえない。」「万が一,21年間の労働能力喪失が認められるとしても,逸失利益の計算を正確に行うためには,中間利息の起算点を事故日とする現価計算をしなければならない(事故時説)」と主張しましたが,当事務所の立証活動により,裁判所は,当事務所の主張(労働能力喪失率45%,労働能力喪失期間21年間)を採用しております。
なお,事故時説とは,事故時と症状固定時が異なる場合には,事故時から労働能力喪失期間の終期までの中間利息の控除の係数から,事故時から症状固定時までのそれを差し引いたものを用いる(加害者側に有利な計算方法)ということですが,中間利息控除の基準時については,同説のほか,症状固定時説(被害者側に有利な計算方法)があり,この点に関する最高裁判所の判決の考え方は明確ではありませんが,実務の趨勢は症状固定時説で固まっています。
以上より,加害者側が,Hさんに対し,既払金(労災保険給付の損益相殺を含む)のほか4000万円を支払うとの内容で和解が成立し,結果として,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
付添費は,原則として,医師による指示がある場合,被害者の受傷が重篤な場合(判例上,上位等級を指す場合が多い),被害者が高齢者,あるいは年少者(12歳以下)の場合,医学的観点から近親者の付添いの必要性が肯定される場合等に,被害者本人の損害として認められます。
そのため,医師の指示はなく,高齢者や年少者でもない場合,付添の必要性及び相当性は明らかとはいえませんので,被害者の受傷内容及び治療経過を具体的に主張立証する必要があります。
また,変形障害については,認定基準がある程度具体的にあるために,その適用が争われるというより,その障害が残存したことによりどの程度労働能力に影響が生じるのかが争われる例が多いと思われます。
しかし,被害者の治療経過等に加え,後遺障害の内容及び程度を具体的に主張立証し,労務にはもちろんのこと,日常生活にも支障を来していること等を明らかにする必要があります。
本件のように,示談交渉において,加害者側より,自賠責の等級より低い労働能力喪失率を提示されたとしても,訴訟により適正な認定を受けることは可能ですので,あきらめずに,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例2
  • 後遺障害認定
【既払金のほか1340万円を支払うとの内容で和解が成立し、大幅増額を実現】高次脳機能障害の事例

依頼者:20代男性

【相談前】
福岡県朝倉市在住の20代会社員のKさん(男性)は,原動機付自転車を運転し,信号機による交通整理の行われていない丁字路交差点を直進していたところ,同交差点を右折した普通乗用自動車に衝突され,左眼窩底骨折,鼻骨骨折,外傷性くも膜下出血,左鎖骨骨折,びまん性脳損傷,高次脳機能障害等の傷害を負いました。
Hさんは,鎖骨骨接合術,眼窩底骨折観血的整復手術,腸骨移植,鼻骨骨折整復固定術を受け,リハビリを継続しましたが,高次脳機能障害を残しました。

【相談後】
本件訴訟における主な争点は,後遺障害等級の認定でした。
後遺障害等級について,加害者側は,自賠責基準を前提として,「原告(Kさん)の軽傷意識障害は1週間以上持続していない」「身体面及び行動面ともに自立しており,能力低下はみられず,医師の診断によっても,時々,周囲の支え,理解が必要な程度の状態であるといえ,家族,介護者からみて,日常生活に何ら問題はない」「原告(Kさん)にはびまん性軸索損傷は発生していない」旨主張し,Kさんの高次脳機能障害を否定しました。高次脳機能障害とは,脳外傷後の急性期に始まり多少軽減しながら慢性期へと続く,典型的な症状として多彩な認知障害,行動障害および人格変化を示すものをいいます詳しくは,「高次脳機能障害」を参照してください。)。
これに対し,当事務所は,Mさんの意識障害は1週間以上持続していないなど到底考えられないこと,画像上明確な脳萎縮等が確認できない場合であっても,「頭部外傷」と「典型的な臨床症状」とがある場合には,「画像上の所見がないこと」のみをもって,脳外傷による高次脳機能障害の発生を否定することは妥当でないこと,事故態様,原告の精神症状や性格変化等を具体的に主張立証した上で,医学鑑定の申出を行ったため,裁判所は同鑑定の申出を採用し,高次脳機能障害にかかる専門医を鑑定人として指定しました。
その後,鑑定人が「原告(Kさん)には事故による高次脳機能障害が存在する可能性が高い。その症状と程度については意思疎通能力が多少失われているものと推定し,自賠責施行令別表第二第12級第13号に近い程度と考える。」との意見を述べたことにより,裁判所は「鑑定において,診療録の詳細検討,画像の詳細検討の上で12級相当の後遺障害との結果が出ており,鑑定の結果を採用するのが相当」として,後遺障害等級第12級と認定しました。
以上より,加害者側が,Kさんに対し,既払金のほか1340万円を支払うとの内容で和解が成立し,結果として,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
本件は,事故による脳損傷を示す画像はあっても,脳萎縮・脳室拡大像が確認できず,自賠責保険が高次脳機能障害を否定した事案でした。
確かに,脳外傷による高次脳機能障害の等級認定は,事故による脳損傷の有無が重要です。しかし,外傷性脳損傷において急性期の受傷を示す画像所見が慢性期には消失や陳旧化を表す所見へと変化する一方,それに比例して急性期に認めた症状が改善消失するとは限らず,何らかの後遺障害を残すことは多く,慢性期に画像所見を指摘できなくなっていたとしても高次脳機能障害がないとは断定できません。
そして,高次脳機能障害については,被害者の具体的な症状・障害の内容を正確に把握することが後遺障害の内容および程度を適切に評価した等級認定を行ううえで重要であり,被害者の就労,生活における具体的な状況を記憶や認知等に関する障害についてのみではなく,それが被害者の身体の状況,他の障害と相まって,具体的にどのような場面でどのような支障が生じているのかを主張立証することが必要です。
本件は,専門家である医師に意見を求めなければ,適切な判断をすることが困難な事案でしたので,医学鑑定を選択しました。
同鑑定は,裁判所が選任した鑑定人が,中立公正な立場から,これまでの証拠を詳細検討し,学識経験に基づいて鑑定評価したものでありますが,事件受任後,Kさんの主治医と面談し,後遺障害診断書等の医証獲得のために奔走した結果,自賠責の判断を覆すことができたものと自負しております。
このように,自賠責で等級を否定されたとしても,訴訟により認定結果が変わる可能性がありますので,あきらめずに,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例3
  • 慰謝料請求
【既払金のほか約2566万円を支払うとの内容で示談が成立し、大幅増額を実現】脊柱の障害の事例

依頼者:10代男性

【相談前】
加害者が運転する普通乗用自動車が道路脇の電柱等に衝突し,同乗中の福岡県朝倉市在住の10代のAさん(男性)が,第1腰椎椎体骨折,第2腰椎破裂骨折,顔面打撲・挫傷等の傷害を負いました。Aさんは,腰椎後方除圧固定術を受け,リハビリを継続しましたが,脊柱の障害を残しました。

【相談後】
本件事案における主な争点は,後遺障害逸失利益でした。
後遺障害逸失利益について,加害者側は,「(Aさんの残存症状より)労働能力喪失期間は就労可能年齢(67歳)までではなく,10年とするのが相当」と主張しました。
確かに,後遺障害診断書上,Aさんに可動域制限はなく,自覚症状は痛みであって(しかも,痛みは経年によって軽減していました。),同障害のために,特定の職業あるいは業種への就職を断念したとか,特定の作業を行うことができないなどの事情はありませんでした。
しかし,せき柱に中程度の変形を残すものが後遺障害として認定されているのは,せき柱の保持機能あるいは支持機能を害されることによることからすると,可動域制限などの運動障害がないことをもって,ただちに労働能力喪失が低いとまではいえません。
そのため,当事務所は,訴訟手続によって解決することを模索しましたが,本件事案では示談交渉よりも賠償金が下がり(示談交渉時,加害者側からの主張はありませんでしたが,好意同乗による減額も十分考えられました。),解決も長引く可能性があること,また,Aさんも示談による解決を希望したことから,適正な賠償を受けるため,加害者側と粘り強く交渉を継続しました。
以上より,加害者側が,Aさんに対し,既払金のほか約2566万円を支払うとの内容で示談が成立し,結果として,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
脊柱の障害は,認定基準がある程度具体的ではありますが,その前提となる脊柱の変形や運動障害の原因(器質的変化)の有無や,その障害が残存したことによりどの程度労働能力に影響が生じるのかが争われる例が多いと思われます。
そして,後遺障害による逸失利益を認定する上での前提となる労働能力喪失率は,自賠責保険の取扱いに拘束されるものではなく,後遺障害の内容と程度,被害者の年齢,性別,職種,転職の必要性,事故前後の稼働状況などを総合考慮し,当該後遺障害により労働能力がどの程度喪失されるのかを具体的に検討してなされるべきものです。
そのため,本件のように,被害者が若年者で後遺症による自覚症状は痛みであり,可動域制限がない事案においては,痛みが経年により軽減することから,労働能力喪失率については,期間を分けて,漸次逓減する形を採用されることも多く,訴訟手続きにより,かえって賠償金が下がることもあり得ます。
以上のとおり,紛争解決の手段として,必ずしも訴訟手続が最善であるとは限りませんので,事案に即した適切な解決ができるよう,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例4
  • 慰謝料請求
【既払金のほか約413万円を支払うとの内容で示談が成立】体幹骨の障害の事例

依頼者:40代男性

【相談前】
福岡県久留米市在住の40代会社員のFさん(男性)は,原動機付自転車を運転し,信号機による交通整理の行われている十字路交差点を青信号に従って直進していたところ,同交差点を右折した普通乗用自動車に衝突され,左肩鎖関節脱臼等の傷害を負い,治療を継続しましたが,左鎖骨の変形障害を残しました。

【相談後】
本件事案における主な争点は,後遺障害逸失利益でした。後遺障害逸失利益について,加害者側は,「(Fさんの残存症状より)労働能力喪失期間は8年とすべき」旨主張しました。
確かに,Fさんの後遺障害は左鎖骨の変形障害に留まり,左肩の関節可動域制限は認められず,派生的に生じるものである左肩の痛みについては,経年により緩和する可能性があり,労働能力に影響を与えるものといい難い側面もありました。
そのため,本件事案では訴訟手続によると示談交渉よりも賠償金が下がる可能性があり,また,Fさんも示談による解決を希望したことから,「Fさんの仕事が肉体的労働であることを考慮すれば,少なくとも,労働能力喪失率は14%,労働能力喪失期間は10年間と認めるのが相当である」として,加害者側と粘り強く交渉を継続しました。
以上より,加害者側が,当事務所の主張を認める形で,Fさんに対し,既払金のほか約413万円を支払うとの内容で示談が成立し,Fさんに満足いただける結果となりました。

【弁護士からのコメント】
鎖骨の変形障害は,後遺障害該当性が争いとなることは殆どなく,その障害が残存したことによりどの程度労働能力に影響が生じるのかが争われる例が多いと思われます。
そして,後遺障害による逸失利益を認定する上での前提となる労働能力喪失率は,自賠責保険の取扱いに拘束されるものではなく,後遺障害の内容と程度,被害者の年齢,性別,職種,転職の必要性,事故前後の稼働状況などを総合考慮し,当該後遺障害により労働能力がどの程度喪失されるのかを具体的に検討してなされるべきものです。
そのため,本件のように,痛みが派生的に生じるもので,可動域制限がない事案においては,痛みが経年により軽減することから,労働能力喪失率については,10%程度とされる例もあり,訴訟手続きにより,かえって賠償金が下がることもあり得ます。
以上のとおり,紛争解決の手段として,必ずしも訴訟手続が最善であるとは限りませんので,事案に即した適切な解決ができるよう,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例5
  • 慰謝料請求
【既払金のほか1100万円を支払うとの内容で示談が成立】醜状障害の事例

依頼者:50代女性

【相談前】
福岡県福岡市在住の50代兼業主婦のAさん(女性)は,駐車場を歩行中,足留めを乗り越えて後退してきた普通乗用自動車と壁に挟まれ,左下肢挫滅傷,左ハムストリング腱断裂等の傷害を負いました。Aさんは,デブリードマン,半膜様筋腱縫合術,分層植皮術を受け,陰圧閉鎖療法及びリハビリを継続しましたが,左下肢の瘢痕及び右大腿の採皮痕,左下肢痛等の障害を残しました。

【相談後】
本件事案における主な争点は,後遺障害逸失利益でした。
Aさんの醜状障害は左下肢の植皮痕と右大腿部の採皮痕でしたが,いずれも着衣によって隠せるもので,Aさんの職業上(家事及び小売店等の接客業務)において支障があるとはいい難く,また,本件事故後に現に就労できており,神経症状も階段昇降など負荷がかかる動作をしたりする時に痛みを生ずる程度であったため,労働能力喪失率を5%とされ,労働能力喪失期間が制限される蓋然性が極めて高い事案でした。
しかし,当事務所の立証活動と粘り強い交渉により,加害者側は当事務所の主張を概ね認め(労働能力喪失率20%,労働能力喪失期間14年間),Aさんに対し,既払金のほか1100万円を支払うとの内容で示談が成立し,Aさんに満足いただける結果となりました。
なお,症状固定時期について,加害者側は,当事務所の主張に対し,特段争うことなく認めております。

【弁護士からのコメント】
醜状障害においては,その後遺障害の存在は明らかであることが多く,等級自体を争われることは少ないと思われますが,損害論においては,その障害が認定等級の予定する労働能力喪失率ほどは労働能力に影響を与えないのではないかが争われることが多いといえます。
そして,本件のように,下肢の醜状障害において,いずれも着衣によって隠せるもので,被害者の職業上,労働能力に影響しない事案においては,本来,逸失利益として評価されることはないと考えられます(この場合,後遺障害慰謝料の増額事由として斟酌される可能性はありますが,同慰謝料の増額は100万円から200万円くらいの幅でなされることが多いとされています。)。
そのため,訴訟手続きにより,かえって賠償金が下がることもあり得ます。
以上のとおり,紛争解決の手段として,必ずしも訴訟手続が最善であるとは限りませんので,事案に即した適切な解決ができるよう,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例6
  • 慰謝料請求
【既払金のほか350万円を支払うとの内容で和解が成立し,大幅増額を実現】耳の障害の事例

依頼者:70代男性

【相談前】
福岡県大刀洗町在住の70代主夫のTさん(男性)は,普通乗用自動車に同乗して渋滞停車中,後方から進行してきた普通乗用自動車に追突され,外傷性頚部症候群,脊柱管狭窄症,外傷性頚部症候群による内耳性耳鳴症,両)内耳性難聴,両)内耳性耳鳴症,両)内耳振盪症等の傷害を負い,治療を継続しましたが,両耳鳴及び右肘より遠位のしびれ等の障害を残しました。

【相談後】
本件訴訟における主な争点は,①休業損害,②後遺障害逸失利益でした。
休業損害について,加害者側は,「保険会社担当者が無職者であることを確認しており家事従事者である旨の申告は受けていない」「家族の状況からもTさんが家事を負担する必要性はない」等と主張しましたが,当事務所の立証活動により,裁判所は,Tさんの家事労働を女性労働者の全年齢平均賃金の70%と認定しました。
後遺障害逸失利益について,加害者側は,Tさんの傷害と事故との因果関係を否定するほか,過去にTさんが追突事故に遭ったことから,素因減額(素因減額とは,交通事故のほかに,被害者が有する事由(素因)が損害の発生または拡大に寄与している場合に,損害賠償の額を決定するに当たり,それを考慮して減額することをいいます。)を主張しました。
そして,加害者側は,医療記録や工学鑑定書を証拠として,素因減額を主張するとともに「極めて軽微な接触事故であり,既に神経症状の後遺症があったことから,本件事故により外傷性頚部症候群を発症していない」とか,「耳鳴症等の原因たる外傷性頚部症候群を発症していないので,耳鳴症等を発症することはない。仮に,発症していても加齢性によるものであって,本件事故と因果関係はない」等と主張しましたが,当事務所の立証活動により,裁判所は,加害者側の主張を退け,当事務所の主張(労働能力喪失率14%,労働能力喪失期間平均余命の2分の1)を採用しました。
これに対し,加害者側は,Tさんに14級の既存障害が存していることから,これを控除しない以上,和解には応じられない旨主張しましたが,裁判所は主張立証が不十分であるとして,これを受け入れませんでした。以上の結果,加害者側が,Tさんに対し,既払金のほか350万円を支払うとの内容で和解が成立し,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
家事従事者が事故により家事ができなかった場合に,家事労働を金銭的に評価するというのが最高裁の立場であり,賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として,損害を算定するというのが,実務の扱いになっています。
女性の平均賃金を用いるのは,従来,家事労働は女性が担ってきたという背景によるものであり,男性の場合でも,女性の場合と同様に,家事に従事することによって報酬相当の利益を家族のために確保していることから,家事労働による財産的利益を得ていると評価できますので,休業損害が認められますが,算定の基礎としては,男性の場合でも女性労働者の平均賃金を参照して認定されることになります。
また,高齢者の場合には,全年齢ではなく年齢別平均賃金を参照することが多く,身体状況(私病の有無)や家族との生活状況(同居者の稼働状況,身体状況,家事の分担状況)などによっては,平均賃金から減額した額を基礎収入とすることが多いです。本件事案では,Tさんの妻が一部家事を行っていたこともあり,女性労働者の全年齢平均賃金の70%として算定されておりますが,同認定を得るには,上記生活状況等に加え,被害者の受傷内容及び治療経過を具体的に主張立証する必要があります。
耳鳴等の障害については,事故との因果関係や,その障害が残存したことによりどの程度労働能力に影響が生じるのかが争われる例が多いと思われます。
そのため,被害者の治療経過等に加え,後遺障害の内容及び程度を具体的に主張立証し,労務にはもちろんのこと,日常生活にも支障を来していること等を明らかにする必要があります。
また,被害者が高齢者の場合,既往症等があることも多いですが,このような体質的素因については,それが「疾患」であるか否かが問題となり,個体差の範囲に過ぎない身体的特徴等は特段の事情がない限り減額の理由とはならず,本件事案においても,素因減額は認められませんでした。
本件のように,加害者側より,高齢者や無職であることを理由として,休業損害や後遺障害逸失利益が否定され,素因減額を主張されたとしても,具体的に主張立証することにより適正な認定を受けることは可能ですので,あきらめずに,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例7
  • 慰謝料請求
【既払金のほか1200万円を支払うとの内容で和解が成立し、大幅増額を実現】上肢の機能障害の事例

依頼者:40代男性

【相談前】
福岡県広川町在住の40代事業所得者のNさん(男性)は,普通貨物自動車を運転し,信号機による交通整理の行われていない丁字路交差点を直進していたところ,同交差点を右折した普通貨物自動車に衝突され,右肩関節捻挫,右肘打撲,頚椎捻挫,腰椎捻挫,右手舟状骨骨折等の傷害を負いました。
Nさんは,当初,右肩関節捻挫,右肘打撲,腰部打撲,頚椎・腰椎打撲捻挫と診断されましたが,事故から約2か月経過しても右手関節の症状が軽快しなかったため,MRI検査を受けた結果,右手舟状骨骨折が発覚しました。
それから,Nさんは右舟状骨偽関節と診断され,右手関節の可動域及び疼痛改善のために遊離体(関節に引っかかっている骨片)の除去を行うこととし,関節鏡視下遊離体切除術が施行されました。その後,Nさんはリハビリを継続しましたが,右手関節痛と右手関節の機能障害を残しました。

【相談後】
本件訴訟における主な争点は,①休業損害,②後遺障害逸失利益でした。
休業損害について,Nさんは,本件事故後,症状を押して業務を継続したことで,その収入は減収とならずむしろ増収となっていました。
そのため,加害者側は,Nさんには休業損害の発生は認められないとの主張がなされました。他方,当事務所は,Nさんが業務の継続を余儀なくされた理由や,Nさんの特別の努力を具体的に立証し,増収の事実があってもなお,Nさんの潜在的な労働能力の喪失を観念することはできることを主張しました。
これにより,裁判所は「結果的には減収になっていないが,労働能力喪失率も考慮し,3割の労働制限はあった」と認定しました。
また,後遺障害逸失利益について,加害者側は,「事業収入,事業所得ともに本件事故前よりも増加していることからすると,将来にわたっても,後遺障害による仕事への支障がなく,減収がない蓋然性が高い」として,Nさんの損害を否定しました。
これに対し,当事務所は,裁判例を引用した上で,後遺障害の残存による現実の収入の減少や欠勤が認められない場合でも,Nさんの特段の努力や周囲の者の配慮によって事故前の収入が維持されているに過ぎず,あるいは事故前よりも多額の収入を得る機会を失ったものと考えられるから,後遺障害逸失利益の発生を認めるべきと主張しました。
これにより,裁判所は「結果的には減収になっていないのは本人の特別の努力によるものと認め,逸失利益を認める」と判断しました。
以上より,加害者側が,Nさんに対し,既払金のほか1200万円を支払うとの内容で和解が成立し,結果として,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
本件では舟状骨骨折と事故との因果関係が問題となりました。
舟状骨骨折の原因は外的要因により,手関節を背屈強制されて受傷することが多いとされ,性質上,①疼痛・腫脹が軽い,②転位の少ない骨折が多い,③舟状骨結節と重なり骨折線が見えにくい等(レントゲン診断は比較的難しく,単なる2方向撮影では見逃される可能性が高い。)により診断が遅れることも多く,捻挫と自己判断し,偽関節となってから受診することもあるとされています。
そのため,本件のように因果関係が争いとなることが多いのですが,受傷態様や症状の経過等を具体的に立証することができれば,本件のように,事故から約2か月経過しての診断であっても,適正な認定を受けることができます。
また,損害について,事業所得者においては,原則として,現実の収入減少が発生していない場合には休業損害は認められませんが,被害者の努力や被害者家族の援助などによって減収が発生しなかった場合には休業損害が認められることもあります。
本件事案では,Nさんに本件事故による現実の減収は生じていませんでした。
しかし,通院等がなければ稼働時間外の私用時間であったものを,通院等のため稼働に充てた関係があるため,これをもって休業損害と評価する余地はありますし,本件事故による症状及び治療経過を考慮すると,治療期間中に一定の労働制限があったことは推認できますから,結果として現実の減収がなかったとしても,これをもって労働能力が回復していたとみるべきではないことは勿論,本人が職務に従事する際には,諸症状を我慢したりするなど相当の労苦があったことを考慮すべきといえます。
そして,本件のように,加害者側より,減収がないとして休業損害や後遺障害逸失利益が否定されたとしても,具体的に主張立証することにより適正な賠償を受けることは可能です。
以上より,傷害内容と事故との因果関係を否定されたり,加害者側から損害を否定された場合であっても,あきらめずに,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例8
  • 慰謝料請求
【既払金のほか約615万円を支払うとの内容で示談が成立し、大幅増額を実現】末梢神経障害の事例

依頼者:40代男性

【相談前】
福岡県朝倉市在住の40代家事従事者のNさん(女性)は,信号機により交通整理の行われている丁字路交差点において,対面信号機の青色表示に従って普通乗用自動車で同交差点に進入したところ,対面信号機の赤色表示を看過して同交差点に進入した普通乗用自動車と衝突し,外傷性頚部症候群,腰椎捻挫,外傷性左坐骨神経痛等の傷害を負い,治療を継続しましたが,左上肢痛・痺れ,腰痛等の障害を残しました。

【相談後】
本件事案における主な争点は,後遺障害逸失利益でした。後遺障害逸失利益について,加害者側は,示談交渉時と同様,「労働能力喪失期間は5年とすべき」旨主張しましたが,当事務所の立証活動により,嘱託弁護士は,「本件後遺障害の内容・程度に鑑み,労働能力喪失期間を10年とするのが相当」とする斡旋を行いました。以上の結果,加害者側が,Nさんに対し,既払金のほか約615万円を支払うとの内容で示談が成立し,結果として,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
被害者の既往疾患として頸椎椎間板・腰椎椎間板ヘルニア,胸郭出口症候群,手根管症候群,後縦靭帯骨化症(OPLL),脊柱管狭窄症などが存在している場合には,症状の事故起因性が争われることが多いです。
もっとも,事故以前にはそれらの既往疾患による症状はなく,事故により神経症状が出現したと認められる場合には後遺障害が認定されます。これらについては画像所見が得られていることが多く12級の認定がされやすいですが,既往症の存在を理由に素因減額がなされることも多いといえます。
そして,本件事案はまさにその典型で,訴訟手続きにより,かえって賠償金が下がることもあり得ましたので,減額なく解決できて安堵しました。
労働能力喪失期間については,外傷性頚部症候群の場合には一般的に制限され,12級で10年程度,14級で5年程度とされる例が多くみられます。
これは,外傷性頚部症候群などの神経障害は,この程度の時が経過すれば治癒していくことが医学的に一般的な知見であることに基づいているものであり,本件事案において,嘱託弁護士が労働能力喪失期間を10年としたことにはやむを得ないものでした(もっとも,当初の5年から10年に伸長することができました。)。
以上のとおり,紛争解決の手段として,必ずしも訴訟手続が最善であるとは限りませんので,事案に即した適切な解決ができるよう,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例9
  • 慰謝料請求
【既払金のほか5500万円を支払うとの内容で示談が成立し、大幅増額を実現】高次脳機能障害の事例

依頼者:30代男性

【相談前】
福岡県在住の30代会社員のSさん(男性)は,原動機付自転車を運転し,信号機による交通整理の行われていない十字路交差点を直進していたところ,非優先道路から優先道路に直進進入しようとした普通乗用自動車に衝突され,脳震盪,後頭部打撲症,右第3腰椎横突起骨折,左上眼瞼裂創,左眼球打撲等の傷害を負い,治療を継続しましたが,高次脳機能障害等の障害を残しました。

【相談後】
本件調停における主な争点は,将来介護費でした。
加害者側は,自賠法施行令別表を前提に,介護を必要とする後遺障害として明示されているのは1級及び2級のみであり,後遺障害等級第5級2号ではその必要性は認められない旨の主張を行い,また,本件事故後にSさんが自動車を運転した事実をもって,将来介護費を否定しました。
これに対し,当事務所は,医療記録等を詳細に検討し,Sさんの妻が日常生活に対して適宜その行動を看視,声掛けを行っており,また,Sさんの後遺障害(高次脳機能障害)は重篤であり,日常生活のほとんどの場面において,看視,声掛け,適宜の介入等の介護(付添)が必要となる旨の主張を行いました。
なお,当事務所は,訴訟手続によって解決することを模索しましたが,本件事案では,Sさんが示談による解決を希望したことから,適正な賠償を受けるため,加害者側と粘り強く交渉を継続しました。
以上より,加害者側が,Sさんに対し,既払金のほか5500万円を支払うとの内容で示談が成立し,結果として,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
後遺障害等級認定と介護の要否について,自賠責保険の基準では,1級は常時介護を要する,2級は随時介護を要する,3級以下は介護を要しないという判断となっております。
しかし,近時の裁判例では,高次脳機能障害について3級以下という認定の場合でも,損害として介護費用が認定されている場合があります。すなわち,高次脳機能障害は,身体的な問題ではなく,新しいことを覚えられない,気が散りやすい,行動を計画して実行できないといった認知障害,周囲の状況に合わせた適切な行動ができない,複数のことを同時に処理できない,職場や社会のマナーやルールを守れない,要点をうまく伝えることができない,行動を抑制できない,危険を予測・察知して回避的行動をとることができないといった行動障害,自発性低下,衝動性,易怒性,幼稚性,自己中心性,病的嫉妬・ねたみといった人格変化を特色としています。
そのため,ADLとしては自立と評価され,また監視者による適切な声掛けや監視(看視)が行われることによって生活・就労が可能という評価となる場合がある一方で,例えば火の始末ができないため1人で置いておいては火災の危険がある,1人のままでは自殺してしまう危険性がある,他人による指示がなければ定期的な薬の服用ができない,感情的な起伏が大きく突然他人に怒りを向けることがあるため適宜他人が声掛けをしたりなだめたりする必要がある等の場合があり,本人や他人に危険が及ばないようにするために,監視者による適切な声掛けや監視(看視)が必要と認められる場合が多くあり,このような場合には,たとえ後遺障害等級としては3級以下の認定の場合であったとしても,介護の必要性が認められ,損害として介護費用が認められることになります。
本件のように,加害者側より,後遺障害等級が3級以下であることを理由として,将来介護費が否定されたとしても,具体的に主張立証することにより適正な賠償を受けることは可能ですので,あきらめずに,弁護士に相談して頂きたいと思います。
取扱事例10
  • 慰謝料請求
【既払金のほか約766万円を支払えとの内容で判決が確定し、大幅増額を実現】末梢神経障害の事例

依頼者:40代男性

【相談前】
福岡県朝倉市在住の40代会社員のWさん(男性)は,道路を歩行横断中,進行してきた普通乗用自動車に衝突され,左脛骨近位端骨折等の傷害を負いました。
Wさんは,左脛骨近位端骨折に対し,骨接合術及び骨移植術を受け,リハビリを継続しましたが,左膝痛及び左下肢筋力低下等の障害を残しました。

【相談後】
本件訴訟における主な争点は,①傷害慰謝料,②後遺障害逸失利益でした。
傷害慰謝料について,加害者側は,入院中も歯科治療は可能であったとして,同治療期間を控除した額(127万円)を限度とすべき旨主張しましたが,当事務所の立証活動により,裁判所は,同治療期間を含めた額(220万円)を認定しました。
後遺障害逸失利益について,本件は後遺障害等級12級の事案でしたが,当事務所の立証活動により,裁判所は,当事務所の主張(労働能力喪失率14%,労働能力喪失期間・症状固定時から稼働可能期間の終期年齢までの全期間)を採用しました。
以上より,加害者側が,Wさんに対し,(既払金のほか)約766万円を支払えとの内容で判決が確定し,大幅増額を実現することができました。

【弁護士からのコメント】
逸失利益とは,後遺障害が残存してしまったために将来得られなくなった収入のことをいいます。
後遺障害はそれ以上治療を継続しても治療効果が認められなくなった症状固定の時を基準に判断するため,逸失利益が認められる期間(労働能力喪失期間)は,症状固定時から稼働可能期間の終期年齢までの全期間となることが原則になります。
しかし,本件のように後遺障害が神経症状の場合には,12級で10年程度,14級で5年程度に制限する裁判例が多くみられます。
これは,相当程度の期間が経過すれば症状が改善して治ゆしてくることや,実際に症状が改善してきたことなどがその理由に挙げられています。
ただし,器質的な損傷があり,これに基づいて神経症状が発症する場合については,安易に喪失期間を限定すべきではありません。
そして,本件事案においても,労働能力喪失期間は10年程度ではなく,症状固定時から稼働可能期間の終期年齢までの全期間が認定されております。
本件のように,訴訟により適正な認定を受けることは可能ですので,あきらめずに,弁護士に相談して頂きたいと思います。
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